大食い番組に出て大食いの凄さを知った~元たま・石川浩司の「初めての体験」

(イラスト・古本有美)

先日、テレビの大食いチャレンジ番組のオファーが舞い込んだ。「有吉ゼミ」という有吉弘行さんの番組だ。有吉さんとは以前、別の番組で「さよなら人類」を一緒に歌ったこともあり、オファーを快諾した。

実は大食いではない

しかし、僕はこんな”おふとりさま”だけど、決して大食いではない。若い頃は、定食屋の注文で「大盛りで」の四文字も付け加えたが、今はそんなこともない。年齢的にはごく普通の食事量だろう。

なので「決して大食いじゃないけどいいんですか?」と、マネージャーを通して聞いてもらったところ、「問題ない」との返事。飯を食ってギャラをもらえるなら、こんな楽なことはない。棚からぼたもちやってきた~。

もっとも僕はタレントではなく、肩書きは一応ミュージシャン。そうした矜持から、「本当にこういう仕事をしてもいーのだろーか?」と、ちょっとだけ躊躇したのも事実。しかし、「ええい、これも初体験よ。コラムのネタよ!」と受けてしまった。

想像以上の大きさ

大食いチャレンジの会場となったタイ料理のレストランに行くと、そこには大食い女王として有名なギャル曽根さんがいた。同じくゲストにカブキロックスの氏神一番さんと、芸人のワタリ119さん。ギャル曽根さんとワタリ119さんとは「はじめまして」だった。

氏神さんとは時々会うが、彼はもう還暦。この時点で「ははあん、僕と氏神さんは賑やかしだな」と理解した。

店内に入り運ばれてきたのは巨大なガパオライス。大きなフライパンが皿代わりだった。具はガパオの挽き肉炒めに加え、大きなガイヤーン(鶏肉)、目玉焼き6つ、野菜、そして大量の麺などなど。

総重量は生まれたての赤ん坊を凌駕する4.5キログラム。カロリーに至っては、成人男性3日分の1万キロカロリー超えという凄まじさだ。

酒の力を借りて食べる

「いっただきま~す!」の合図とともにガッツク。おっ、うまいうまい。

以前も書いたが、僕は毎年、1カ月間タイで暮らしているので、お馴染みの味だ。いつもは現地のローカルなフードコートで、ご飯の上にふたつみっつのおかずをのせたぶっかけ飯を100円くらいで食べている。それを少し上品にしたような感じだ。

馴染みの味だし「いけるかな」と思ったが、やっぱり無理だ。量が多すぎる。しかし、あまりにも食べられないと、「なんで大食い番組に出たんだ!」と視聴者から非難を浴びせられそうで怖い。最近はネットですぐ叩かれるからね。

そこで、姑息にもせめて見た目だけでも減っているようにするため、コメは後回しにして具材からワッセワッセと食べていく。さらに僕なりに、より食べられる方法も考えていた。それはズバリ酒だ。

酒を飲んだ時の方が食欲が増して、普段よりたくさん食べてしまうことは経験上知っていた。

そこで「酒はないのかな~?」と聞いたら、「ある」と。レモンサワーを頼んだら、これまた巨大なジョッキで運ばれて来た。

ゴキュッゴキュッ。レモンサワーを口に流し込む。隣のギャル曽根さんが真剣な眼差しでスプーンを動かしているのを横目に、こちらはただの居酒屋オヤジだ。プハーッ。

でもあんまりノンキにしていてもまずい。とにかく目の前の物を次々に口に運ぶ。ガシガシッ、ガシガシッ。

うー、コメに染みた油分が腹にたまる。それがどんどん山のように積み重なっていく感じだ。

ガシガシッ、ガシガシッ、うぅ...。

妄想しながら食べ進める

かなり満腹になったお腹。この満腹感をごまかすために、僕は妄想を始めた。

「もしもし。石川ですが・・・」
「もしもし、こちらハラです」
「えっ、ジャイアンツの原さんですか? 僕、高校野球の東海大相模の頃から見てましたよっ!」
「違うわっ! おのれの体の中の腹じゃい!」
「あぁ、腹か・・・」
「おめー、いくつだ?」
「もうすぐ58だよ。知ってるだろ、おめーだって」
「こーゆー馬鹿なことはな、10代20代にやることなんだよっ! 30代でもすでにおかしいわっ!」
「そっ、それは・・・」
「おめーの学生時代の同級生には、もう孫のいるやつだっているだろ」
「あぁ・・・」
「つまり、おめーはジジイだっ!」
「うっ・・・」
「死に損ない一歩手前の人間が、こんなこといつまでもしてんじゃねーよ」

そんな妄想にかられているうちに、本当にどーにもこーにも入らなくなってしまった。

結局はギブアップ

結果は、ギャル曽根さんが完食。そして「この番組をキッカケに売れたい!」と、ものすごく気合の入っていたワタリ119さんも死に物狂いになって完食した。

僕は結局3分の1ほどで「おなかいっぱい」とかわいらしく言ってギブアップした。大食いがいかにものすごい偉業であるかは、身をもって感じた。あんな量を食べきれるのは、化け物だ。

もし僕ががんばって完食しようとしたら、たぶん途中でヘソの穴からガパオがニュルル~とソーセージ状に飛び出たであろう。

そういえば、ギャル曽根さんはかわいいお子さんを連れて来ていて、時々お母さんの顔を見せていた。お子さんがグズっていたら、「静かにしなさい」と優しく叱っていたのは、ほのぼのしたなあ。

そして僕も、ギブアップした後に、ガパオやミニトマトなどの具材を使ってキャラ弁よろしく顔を作っていたら、ギャル曽根さんに「食べ物で遊んじゃいけません!」と叱られた。

子供とおんなじだ~。

 

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