1本15万円「幻の日本酒」限定発売 阪神大震災を生き延びた24年の熟成酒を飲んでみた

1本15万円の日本酒「現外」(撮影・吉野太一郎)

ボトル1本のお値段、なんと15万円(税込)。24年前の阪神大震災を生き延びた「幻の日本酒」が、5月23日から限定発売されています。前日の報道関係者向けイベントで試飲したその味は、ビンテージ(長期熟成酒)なのにフレッシュ。事前の想像を大きく超えた世界でした。

「現外」と名付けられたこの商品は、500ml入りボトル100本の限定発売。熟成を経た琥珀色の液体をグラスに入れると、ブランデーやシングルモルトに似た濃厚な甘い香りが広がります。

ビンテージなのにフレッシュ

グラスに注いだ「現外」(撮影・吉野太一郎)

口に含むと、リンゴのようなさわやかな酸味。ダークチョコレートやカラメルを思わせるビンテージ特有のコクと混じり合いますが、後に残らずスッと抜けていくのが特徴。

アルコール度数こそ14.5度ですが、日本酒度-30、酸度5.1という日本酒として突き抜けた数値は、「濃醇甘口」というカテゴリーには収まりきれない味わいがあります。いや、もはや日本酒という枠には収まらないかもしれません。

発表会で提供された料理。フォアグラのテリーヌ⻄京味噌と「現外」で漬け込んだフォアグラのテリーヌ(左)と、「仔⽺の現外煮込み」(撮影・吉野太一郎)

食事とのマリアージで違いは歴然。ワインやウイスキーのずっしりとした重み、日本酒の後を引く甘みとうまみ…どれも当てはまらず、洋食の後味を軽やかに洗い流していきます。「こんな酒は飲んだことがない」と、同席者と感想を述べ合いました。

1本15万円という破格の値段について、発売元のベンチャー企業「Clear」CEOの生駒龍史さんは「大震災を奇跡的に乗り越えたストーリーに加え、24年の歳月を経て熟成された味わいは、同じレベルのワインやウイスキーと比べても決して遜色ない。国際的に見ても一級品」と胸を張ります。

酒母タンクは残ったが…

阪神大震災で倒壊した沢の鶴の木造蔵「河原蔵」(沢の鶴提供)

1995年1月17日午前5時46分、震度7の地震が兵庫県を襲います。死者6434人に上った早朝の大地震で、兵庫県の酒所「灘五郷」の酒蔵の一つ、「沢の鶴」(神戸市灘区)も、守衛や宿直職員ら3人が命を落とし、多数の木造の蔵が倒壊、酒造タンクが壊れました。

その中で「酒母」と呼ばれる、酒になる前段階のタンクが1本、倒れずに残っていました。酒母とは、日本酒の醸造に欠かせない麴(こうじ)を、蒸し米と水に混ぜて培養させたもので、さらに蒸し米と水を加えて発酵させ、絞った液体が日本酒になります。

しかし震災で壊滅的な打撃を被った沢の鶴は、原料の酒米も入荷できず、工場も稼働できない状態。本来はここから米を加えて寝かせなければならない酒母タンクも、未完成の状態のまま、絞らざるを得ませんでした。

「酒は育てるもの。いつか世に」

沢の鶴マーケティング室次長の宮崎紘二さん(左)と「Clear」CEOの生駒龍史さん(撮影・吉野太一郎)

「当初は、酸味が強すぎて飲めたものではなかった。しかし酒蔵にとって、酒は育てるもの。簡単に廃棄できるわけでもない。今は売り物にならなくても、タンクに貯蔵して、いつか世に出る日を待っていました」(沢の鶴酒造マーケティング室次長の宮崎紘二さん)

しかし熟成を経て「この5年ほどで、酸味が取れて、飲みやすい味に変わってきた」(宮崎さん)。広報活動を通じて面識のあった生駒さんに持ちかけ、商品化されました。「正直、自社で商品化の見通しはまったく立っていなかった。世に出せなかったものに価値を見いだして頂いた」(同)

Clearはこれまでも、酒蔵と連携して企画した限定商品を販売しており、「現外」は第4弾になります。「酒蔵の廃業が相次ぐ中で、輸出量は増えており、世界が日本酒のポテンシャルに気付き始めている。上質なものを味わっていくというスタイルを提案していきたい」と話しています。

 

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