6000円の特別席で観る映画「ボヘミアン・ラプソディ」 1000円の一般席で観るのとどれだけ違う?

ゴージャスな「おひとり用ソファ」で映画を鑑賞する贅沢

都内の映画館には、プレミアシートを購入した者だけが入ることができるラウンジを備えている施設があります。ずっと憧れていたのですが、私が知っているところはペアシート購入者しか入れません。一緒に映画を観てくれる男性がいない独り者の私には縁がない、とあきらめ気味でした。けれどこのたび、おひとりさまでも入場可能なラウンジを備えている別の映画館を見つけたので、勇んで行ってきました。

満員の映画館での「ボヘミアン・ラプソディ」

今回観た作品は『ボヘミアン・ラプソディ』。私は2ヶ月前に、良く行く映画館の会員割引を利用して1000円で観ています。

人気作品なので場内は満員、そして運の悪いことに、左斜め後ろの20代らしき女性が持ち込んだお菓子の袋をカサカサいじる伴奏付きでした。30分以上もその音が続くのでどういうことかと振り向くと、彼女は画面に集中しながら、お菓子を食べるわけでもなくただ手いたずらとしてずっと袋をいじっていたのです。

音が気になり、素晴らしいライブシーンに集中できなかったのは残念でした(ちなみにその映画館は館内で販売されている飲食物以外の持ち込みは禁止のはず……)。

私は背が低く、映画館で目の前の席に大きな男性が座ったがためにスクリーンが半分以上見えなくなったこともあるし、誰かに椅子の背を蹴られ続けたこともあります。人が大勢集まる場所では何かしら落ち着かない出来事が起きやすいし、時にはガマンも必要かもしれません。

特別扱いされるおひとりさまシート

さて、専用ラウンジ付きの映画館のシート料金は、6000円と普段行く映画館の6倍でした。映画館後方の一段高くなった場所のシート料金とドリンク込みのお値段です。最初は呆れるほど高いと感じたのですが、いざ入ってみると余りの素晴らしい体験に、むしろ心からありがとうと言いたくなったほどでした。

平日午後の上映だというのに14席のみのそのシートは半分以上埋まっていました。映画鑑賞に数千円を投じていたのは、50代前後の男女3人ずつといったところ。憧れのラウンジには上映1時間前から入ることができ、そこには1人がけソファがいくつも並んでいました。

特別シートはすべて孤立した「おひとりさま席」なので、ラウンジもおひとりさま仕様なのです。そしてラウンジ奥の専用入り口から映画館へしずしずと入場するというVIP気分も味わえました。

カップでお紅茶飲みながら映画鑑賞!

お席はテーブル付きの電動リクライニングシートで、クッションまで付いています。隣の人との間は3席分くらいあいていました。ブランケットもスリッパも貸してもらえます。

VIP仕様のラウンジでゆったりした気分にひたる

席についてしばらくすると、注文してあった温かいローズティーをしずしずとサイドテーブルに届けてくれました。まさかのお紅茶でくつろぎながらの映画鑑賞となり、カップを置く時のカチャ、という静かな音があまりにも耳に新鮮です。

シートは一段高いところから大スクリーンを観るかたちなので、人の頭は目に入ってきません。私の眼前にはただ一面に映画の世界が広がっていて、迫力あるライブを今度こそ目一杯楽しむことができました。途中ノリノリになって頭を振ってしまいましたが、孤立シートなので恥ずかしくありません。

誰も私の視界を遮らず、椅子の背も蹴らず、袋もカサカサさせない、天国のような環境のおかげで、クライマックスでは思い切り泣けて、かなり気持ち良かったです。

世界を見下ろす感覚

バルコニー席のようなところからスクリーンを眺めた感覚は、以前行った競馬場で見た景色に近いものがありました。ご招待いただき、馬主さんがいるフロアからレースを見下ろしたことがあるのです。競馬はできるだけ馬を近くで見て臨場感を味わうのがいい、という今までの考えが一変した瞬間でした。

走る馬たちの背を上から見下ろした時、まるで人間界を眺める神になったかのような感覚を味わったのです。運を天に任せ、レースの成り行きを静かに見守る、そんな穏やかでどこか超越し、落ち着いた感覚には、なんともいえない心地よさがありました。

やがて映画が終わり、場内が明るくなると、一般の席にいた人たちが帰り際にチラチラとこちら側を見てきます。高い席に座る人はどんな人なのだろうと気になるのでしょう。いつもの私ならソワソワしてしまいますが、世界を見下ろしていた感覚が抜けず、なんとも思いません。これは、単なるセレブごっこを超えたすごい体験でした。

立花隆さんが書かれた『宇宙からの帰還』という本のことを思い出しました。遠く離れた宇宙から青い地球を目にする経験は、宇宙飛行士に精神的衝撃を与え、なかには宗教家に身を転じた人までいたのだとか。大げさかもしれませんが特別な席から映画を見下ろすという経験も、ただそのソファが高級だというだけでは到底片付けられないなんともいえない神聖な味わいがありました。

孤立した席で周囲に人の気配を感じずに大画面に没入できた素晴らしさは、当分忘れられそうにありません。ものすごく高かったのに、私はまたあの席で映画が観たくてしかたありません。月に1度くらいなら、自分へのご褒美としていいかもしれませんね。

 

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