就職が決まったら、彼女にフラれた~青春発墓場行き(第14回)

(イラスト・戸梶 文)

新卒の会社を辞めてぷらぷら国内旅行をしていたことは以前のコラムに書いた。そして僕は、週刊誌記者の募集に応募し、無事に記者になるのだが、じつは、書いていなかった別の経緯があった。

ユースホステルで恋に落ちた

新卒の会社を辞めてすぐ、僕は、友人のいた熊本に青春18きっぷを使って旅行に行った。一週間くらいその友人宅に居候し、その帰りに大分の由布院に寄って、ユースホステルに宿泊した。

そのユースホステルにいたヘルパーさん(バイト)を、なぜか僕は猛烈に好きなってしまったのだ。

彼女はとても落ち着いた、大人な印象だった。僕が自他ともに認める子どもだったので、よりその印象が際立って見えた。そんな彼女の一挙手一投足に僕は見惚れるようになってしまった。

深夜まで僕らは居間のテーブルで話し込んだ。話すことなんて、僕のあてのない将来の夢しかない。それを彼女は、笑って聞いてくれた。それで、僕はやられてしまった。

もう、こうなったら告白するしかない。しかし、僕は無職である。成功する確率は、非常に低いことが予想される。この負け戦に僕は挑むべきなのか。しかし、恋は盲目とはよくいったもので、突撃してしまったのである。そして、これが奇跡的に成功したのだ。

ずっと無職でいればよかった

めでたく(?)僕らは付き合うことになった。僕は25歳。彼女は年上で、27歳だった。彼女は、短期で手伝いに来ていて、地元は奈良。付き合い始めてから、僕は無職にも関わらす、お金を捻出し、東京から奈良に通うことになる。

彼女は、奈良の国立女子大出身で、よくそのキャンパスを散歩した(大丈夫だったのかどうかはよくわからない)。猿沢池や、各種お寺にもよく行った。おかげで奈良については詳しくなった。

僕は焦った。早く就職しなくては。いつまでも無職では捨てられてしまう。そして初めて受けた週刊誌記者の試験に無事パスし、僕は意気揚々と彼女に報告したところ、ふられたのである。

理由はわからない。当時は、混乱した。いったい僕の何がいけないんだ。せっかく就職まで決めてきたのに。捨てられないようにと思って就職したら捨てられたというパラドックス。こんなことならずっと無職でいればよかった。

でも、今ならわかる。たぶん、理由はそれだけじゃないんだろう。週刊誌っていうのが、よくなかったのかもしれない。いろいろ思い当たるふしはある。

彼女は、今どうしているのだろうか。もう名前すら思い出せない。でも、印象的なふるまいや姿は、僕の思い出のなかで、当時のまま残っている。そして、彼女がいなかったら、僕は、記者になることができなかった。だからめっちゃ感謝してる。

 

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