経験なし、道具なし。男39歳「初めてのソロキャンプ」で味わった6つの試練

ひとりで楽しむアウトドアの新機軸として「DANRO」でもたびたび特集している「ソロキャンプ」。キャンプ経験ゼロのインドア派編集部員(39)が、勇気を出して初チャレンジしてみました。そこには、数々の思わぬ「試練」が待ち受けていて……。

試練その1 道具の調達

キャンプ経験ゼロの私にとって、最初に越えなければならない壁は道具をそろえること。なかでも悩んだのは、キャンプの必須アイテムであるテントです。

アウトドア用品店に行くと1人用や2人用のテントも普通に売られていました。どれも高機能かつ軽量なのですが、価格は3万円以上するものばかりで腰が引けます。他の道具も買いそろえると総額は大変なことに……。この「初期費用」の高さが、キャンプを趣味にすることの最初のハードルだと感じました。

ここで私がひらめいたのは、「中古品」です。アウトドアブームの現在、最初に道具だけそろえて1、2回キャンプしたところで飽きてしまい、売りに出す人も一定数いるはずだと考えたわけです。

早速、スマホのフリマアプリ「メルカリ」で検索すると……「2人用テント 8500円」。あっさりあった! 「数回使用しただけ」と書いてあった通り、届いたものは新品同様でした。中国製で見た目はやや頼りなさそうですが、冬山に行くわけでもないのでこれで十分です。

この中古作戦に味をしめ、「メルカリ」とアウトドアショップやホームセンターでの新品購入を併用して、以下の道具をそろえました。

  • テント
  • 寝袋
  • テントマット(エア式)
  • 焚き火台
  • ガスバーナー
  • クッカー(小型の鍋とフライパンのセット)
  • LEDランプ
  • 折りたたみ式チェア

最低限これだけは必要かな、という装備で総額は約3万3000円程度。これでもう、後戻りはできません。

試練その2 キャンプ場探し

次なる課題は、「ソロキャンプ」デビューの地となるキャンプ場探しです。が、これもなかなか苦労しました。

東京都内在住・車なし・平日仕事の私だけに、土日に電車とバスだけで行けることがキャンプ場選びの条件。そこで、自宅から1時間程度で簡単に行ける「江東区立若洲公園キャンプ場」を3月初旬に予約していたのですが、当日はあいにくの雨で泣く泣くキャンセルに。

次なるチャンスをうかがってキャンプ場のホームページを見ると……なんと、6月までの土日は全部空きなしで予約不能。この混雑ぶり、アウトドアブームの影響なのでしょうか。東京都西部の三多摩地域にあるいくつかのキャンプ場にも電話してみましたが、どこも数カ月先まで空きなし。誤算でした。

こうなったら東京を離れよう、と神奈川県西部・秦野市にある「滝沢園キャンプ場」に電話したところ、「当日直接来てくれれば、予約はいりません」とのこと! キャンプスペース内で自由に場所とりをしてテントを張る「フリーサイト方式」なので予約は不要なのだそうです。当日、うまく場所が確保できるか不安は残るものの、行ってみなけりゃわからない。

初キャンプの場所はここに決まりました。

試練その3 テントの設営

さて、いよいよキャンプ当日。東京都江東区の自宅から長期旅行用のバックパックを背負って出発しました。「滝沢園キャンプ場」までは、小田急線とバスを乗り継いで約2時間。昼過ぎに出発したため、現地に着いた時は午後3時になっていました。

管理棟で管理人さんに来訪を告げ、申込用紙に記入して利用料の700円を支払います。「1人です」と言うときには少し緊張しましたが、特に驚かれることもありませんでした。「もしや、ソロキャンプに来る人って多いんですか?」と聞くと、こんな答えが。

「多いですよ。タレントのヒロシさんの影響なのか、特に去年くらいから増えましたね。ソロキャンプの人は一人でゆっくり静かに過ごしたいからなのか、混んでいない平日に来る人が多い。お互いに距離を離してポツン、ポツンとテントを張っているのですぐわかります」

どうやらブームは本物のようです。ちなみにこの滝沢園、ヒロシさん本人もたびたび訪れるそうで、ヒロシさんのYouTube動画にもこれまで何度か登場しています。

さて、管理棟を後にしていよいよキャンプ場へ。テントを張るフリーサイトには間隔を空けて10張弱のテントが張られていたものの、まだまだ空きスペースだらけ。場所が確保できるのか、という当初の心配は杞憂だったようです。

ちなみにこの日、自分以外のソロキャンパーは見当たりませんでしたが、2、3人のグループで来て各人が自分のテントに泊まる「ソロキャンパー集団」を何組か見かけました。事前に読んだ「キャンプ入門」的な記事に「隣の人にはあいさつしておこう」と書いてあったことを思い出しましたが、そもそもテント同士がかなり離れているので「隣」がいない。管理人さんの話を考えても「相互不干渉」が良いのではと思い、あいさつはパスしました。

早速、平らな地形を選んでテントを設営します。張り方は一度、同タイプのテントを使っている人のYouTube動画を見ながら近所の公園で練習したので、10分程度で難なく完成しました。

試練その4 焚き火への着火

テントが準備できたので、次はいよいよキャンプの醍醐味である「焚き火」に挑戦。私の場合、焚き火がしてみたくてここまで来たと言っても過言ではありません。

早速、管理棟で600円で薪の束を購入。キャンプ場によっては地面で直接焚き火する「直火」が禁止な場合もありますが、ここ滝沢園は「直火OK」。ということで、周囲のキャンパーたちを参考に見よう見まねで転がっている石を円形に集め、かまどをつくります。

燃えやすそうな小枝や葉っぱを拾い集め、ガスライターでいざ着火!……あれ、つかない。かすかに火で赤くなった葉っぱに「フー! フー!」と息を吹きかけて風を送りますが、いっこうに燃え上がりません。誰も見ていないはずなのに、無様に息を切らす自分が恥ずかしくなってきました。

観念した私は、ホームセンターで購入したジェル状の着火剤を取り出しました。メタノールが主成分のこの着火剤。小枝に振りかけてからライターの火を向けると、ボワァァッと、一瞬で炎があがって薪にも燃え移り、点火完了。あまりのあっけなさに一抹のむなしさを感じましたが、着火剤に頼らない「かっこいい点火」は今後の課題ということで、自分を納得させました。

試練その5 突然の雨

まだ夕方。「ソロキャンプ」は特にやることがありません。焚き火の前に座り、管理棟で買ってきた缶ビールを片手にひたすらぼーっとします。

焚き火を見るのは中学校のキャンプファイヤー以来。しかも、一人きりで目的もなく焚き火と向き合うのは人生初です。刻々と変化する火を見つめていると、不思議と退屈さは感じません。焚き火のゆらめきに「癒やし効果」があるという説もうなずける、幸福な時間でした。

日も暮れそうなので、そろそろ食事の準備。金網を設置できる焚き火台に薪を移してお湯を沸かし、家から持ってきた袋のチキンラーメンとソーセージを調理します。おしゃれなアウトドア料理が流行っている昨今ですが、あえてジャンクフードを食べる自由があるのも「ソロキャンプ」の良さ。俺はいま、誰からも自由なんだっ……!

と、心で叫んだその時。ポツ、ポツと、雨粒が落ちてきました。まさか……。実は、この日の天気予報は「曇り時々雨」。昼間は晴れていたので安心していましたが、キャンプ場がすいていたのも天気予報のせいだったのかもしれません。

雨で焚き火は弱まり、沸騰しかけていたお湯がみるみる冷めていきます。小雨のうちに食事を終えてしまおう、とあわてて麺を投入しましたが、これが判断ミス。雨はみるみる本降りになり、焚き火は鎮火寸前。服はびしょびしょになり、生煮えのラーメンを持ってテントにかけこむのがやっとでした。

午後7時、周囲は真っ暗。大雨で外に出られないので、ランプの薄明かりの中で本を読んで過ごしました。外の気配に耳を澄ますと、天幕を雨が間断なく叩き、近くの小川が雨水を集めて「ザーッ」と勢いよく流れる音も聞こえてきます。天幕の内側はじっとりと濡れて、今にも雨が浸水してきそうに感じました。

迫り来る雨はストレスフルでしたが、都会にいるとたいして意識しない雨という現象が、テントの薄皮一枚を隔てただけでここまでリアルに感じられる。これもソロキャンプならではの体験でした。

試練その6 後始末

深夜、寒さに何度か目を覚ましましたが、インナーを重ね着するなどして何とかしのぎ、朝を迎えました。テントを出ると濡れた木々に朝日が差し込み、キラキラとした美しい景色が広がっています。小鳥たちがせわしなく鳴く声にも、心がほころびました。

チェックアウト期限の10時まで、あと3時間ほど。テントに避難させていた未使用の薪を使ってお湯を沸かし、レトルトのカレーとインスタントコーヒーを朝食にしました。小枝などは雨に濡れて火がつかないので、今回は薪に直接、着火剤を塗り込みます。ライターも湿って点火しなかったので、持参したガスバーナーで薪をあぶって点火。お腹も減って余裕がなくなり、もはやなりふり構わず文明の利器に頼ります。

最後の試練は、雨水と泥で汚れたテントの片付けでした。タオルで水分を拭き取ったものの泥は取り切れず、結局、家に帰ってもう一度干した後、時間をかけて拭き取る必要がありました。やはり、初心者はなるべくなら雨は避けたほうが良さそうです。

試練も多かった初の「ソロキャンプ」。くたくたのはずの帰り道、不思議と「生きる力」がみなぎってくるように思えました。都会の便利さや人間関係の煩わしさから離れ、ひとり自然と向き合い、生きるための作業をする。そんな経験が、心を元気にしてくれたのかもしれません。

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