「千と千尋の神隠し」のような異世界への入口? 「トンネル」の魅力を味わうバスツアー

旧賤ヶ岳トンネルの入口。この先で待っている景色は?(提供・花田欣也さん)

ジブリアニメの名作「千と千尋の神隠し」の冒頭シーン。主人公の少女・千尋が両親と一緒に山奥のトンネルを抜けると、そこには不思議な町が広がっていました。あるいは、文豪・川端康成の代表作「雪国」は、「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった」という印象的な描写で始まります。

山の中腹を貫くトンネルには「ここを抜けるとどんな世界が広がっているんだろう」というロマンをかき立てる力があります。そんなワクワク感を味わってもらおうというバスツアーが5月11日、滋賀県の琵琶湖周辺の山間地域で催されます。

ガイド役を務めるのは、トンネル探求家の花田欣也さん。明治から昭和にかけての産業遺産としても注目されるトンネルの魅力を案内します。ひとりで参加する人もいるという「トンネル探検ツアー」。その面白さはどこにあるのでしょうか。

※花田さんのインタビュー記事:
トンネルに近づくと「さあくるぞ!」とドキドキする――マニアが語る「トンネル歩き」の魅力

トンネルを抜けると「絶景」が広がる

この日帰りツアーは、山間部にある古いトンネルを実際に歩き、その歴史や造形美を肌で感じようというユニークな企画です。訪ねるのは、滋賀県長浜市と福井県敦賀市にある旧賤ヶ岳(しずがたけ)トンネル、小刀根(ことね)トンネル、谷坂トンネルという3つのトンネルです。

「今回の目玉は、なんといっても旧賤ヶ岳トンネルですね」。これまで全国約150カ所のトンネルを訪ね歩いてきた花田さんは語ります。

「大正時代に作られたレンガ造りのトンネルで、その美しさもさる事ながら、トンネルを抜けた瞬間に目の前にどーんと広がる琵琶湖の絶景が素晴らしいんです。トンネルを抜けると湖が見渡せるという光景は、ありそうでなかなかないんですね」

小刀根トンネルの入口。明治時代のレンガが美しい(提供・花田欣也さん)

一方、全長56メートルと短い小刀根トンネルの魅力は、その歴史にあります。いまから約140年前の明治14年(1881年)に作られたトンネルで、もともとは鉄道を通すために掘られたものでした。現在は道路用のトンネルとして使われていますが、建造当時の状態でそのまま残されています。

「道路転用されて現在も利用されている旧鉄道トンネルとしては最も古い」(花田さん)とのことで、産業遺産としての価値が大きいトンネルです。「小刀根トンネルは、関西と北陸を結ぶ貴重な物資輸送ルートとして、国策で作られました。トンネルのレンガに触ったりしながら、明治時代の名残りを味わえます」と花田さんは話します。

産業遺産としてのトンネルの「歴史」を肌で感じる

もう一つの谷坂トンネルは、大正から昭和にかけて作られました。滋賀県の名技師・村田鶴さんの設計で「入口部分の美しい造形もみどころの一つです」(花田さん)。建造年代が異なる3つのトンネルを比較してみると、産業遺産として歴史を深く感じられるかもしれません。

歴史的意義の大きい3つのトンネルを訪ねる今回のバスツアー。JR新大阪駅を出発し、米原駅を経由して、琵琶湖の北東部、いわゆる湖北地域の山間部を巡ります。ツアーを主催する朝日旅行の高坂健彦さんは「古い建造物に興味がある人にオススメできます。ふだん何気なく利用しているトンネルに対する新しい見方が広がるでしょう」と話しています。

ガイド役を務める花田さんも「千と千尋の神隠し」の冒頭シーンを例にあげながら、トンネル歩きの魅力を語っています。

「アニメの中では、トンネルが異なる世界を結ぶ建造物として描かれています。今回の旧賤ヶ岳トンネルのように、入口から想像できない世界が出口の向こうに広がっているのが、トンネルの魅力の一つです。この先にどんな風景があるんだろう。そんな想像をしながら、みなさんと一緒にトンネルを歩いてみたいですね」

 

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