「今度は死ぬんだなと睡眠を優先した」 熊本地震「ひとり被災」を振り返る(前編)

前震後の我が家。まさに足の踏み場もない状態に

いまから3年前。2016年4月14日と16日に最大震度7を計測し、250人以上が犠牲となり、約20万人が避難生活を送った熊本地震。わたしは4月14日の地震、いわゆる前震の時、ひとりで被災しました。

あれから3度目の春を迎えるにあたり「ひとりで被災すること」について改めて考えてみようと、今回「ひとり被災」した男女12人に話を聞いてみました。そのレポートの前編です。

くつろぎの時間帯に突如訪れた「激震」

前震が発生したのは、21時26分。多くの人が仕事を終え、自宅でくつろいでいる時に起きました。わたしは外出先から自宅に戻り、キッチン横の洗濯機前で着替えている最中に被災しました。

家の中は爆撃にでも遭ったかのように本棚やテレビが倒壊。地震発生と同時に停電したため、足元はまったく見えない状態でした。スマホを探すために、悲鳴をあげ何度もつまずきながら部屋を移動したのを覚えています。キッチンには割れた食器やガラスが散らばっていたため、裸に近い状態だった体は傷だらけになりました。

自分の身の安全よりも「家族の安否確認」を優先

今回取材に協力してくれた12人はいずれも、熊本地震が起きたとき「ひとり」でいた人です。そのほとんどが被災後、最初に行ったことは「スマホによる身内の安否確認」でした。ただ、電話回線がパンクし不通になったため、安否確認の手段はメールかSNSに限られていました。

わたしも一人暮らしの母の無事をメールで確認したあと、やっとこれからすべきことに頭を回すことができました。逆に言えば「身内の無事を確認しないことには、自分の身の安全まで頭がまわらない」とも言えます。

その後、自宅などを離れ、別の場所に避難したのでしょうか。質問してみると、「避難所に行った」人がいる一方で、自宅にとどまった人も多かったようです。

「最寄りの避難先がわからず、そのまま家にいた」
「自分より大変な状態の人が身を寄せていると思い、避難所には行かなかった」
「いくつか避難所を巡ったが、どこもいっぱいで居場所がなく、しかたなく自宅に戻った」

そんな声がありました。

続いて16日の本震は、深夜の1時25分に起こりました。14日から15日にかけて恐怖と不安で一睡もできなかった人も多く、16日はほとんどの人が疲労困憊のなかで就寝していました。

予期しなかった2度目の地震に、さすがに心が折れました。避難せずに部屋のベッドで寝ていたわたしは「今度こそ死ぬんだな。もういいや、それより眠い」と、逃げることよりも寝ることを選びました。

「仕事も熊本での生活も終わりかなと思った」と語ったのは、自営業の男性(58才)です。自宅マンションは貯水槽が破壊され、部屋は足の踏み場もない状態になったため、本震直後から「車中泊」をしたと言います。

「ハイブリッド車だったので、発電しながらテレビで情報を拾ったり、スマホの充電を行うことができました。車のなかで電気を拾えるのは助かりました」

配給の水を「ひとり」で運ぶのは至難の技

停電はすぐに復旧した地域がかなりありましたが、問題は水とガスです。ほとんどの地域でこのふたつのライフラインの回復が遅れました。わたしの住む地域では、水道の復旧に3週間ほどかかり、コンビニやスーパーから一斉に「水」が消えたので、配給に頼るしかありません。ここで「ひとり被災」の不便が待ち受けていました。

ある会社員の女性(48才)は当時を振り返って、こう語ります。
「配給車の給水があっても、ひとりで一度に運べる水の量はごくわずか。本震の翌日、3時間並んで、水5リットルの配給を受けましたが、『これを毎日繰り返すのか』と思うと、疲労感と先の見えない不安でいっぱいになりました」
食料に関しては、「みんなで手持ちの食材を持ち寄って、物々交換したり、ガスコンロで調理した」「避難所で配給を食べた」という報告がありました。

その一方で、自治体に勤める男性(44才)は「地域の人にひとりでも多く食料がまわるように、配給には手を出さなかった」と語ります。「荷物が散乱した職場で、誰かのおやつであろう『カントリーマアム』を見つけて、飢えをしのぎました」

前震の翌朝になって、自分が傷だらけになっていることに気づく

一番恐怖なのは「脱出困難」になることです。

自宅兼事務所でひとり暮らしをしていた女性(49才)は、玄関へ通じる扉の脇に設置していた食器棚が倒れ、出入り口を塞がれ、逃げ場がなくなったと言います。「食器棚が壁に食い込んでどうにも動かなかったので、隙間になんとか体をねじ込み、扉を破って脱出しました」。

同じく自宅兼事務所で被災した男性(55才)は、「マンションの出入り口が塞がれ、玄関から脱出できなかったので、ベランダから階下へ降りた」そうです。

自称・靴道楽の女性(44才)は、自作のシューズラックが仇となりました。「天井まで金属製のシューズラックを重ねていたので、それが倒れて脱出するのに時間がかかった。それ以来、玄関には倒れるものは置かないと決めました」

ひとり暮らしだと、自力で脱出しなければなりません。そのために、出入り口を塞ぐものは極力置かないようにしておきたいものです。

※後編につづく : サバイバルに役立つ「笛」「簡易トイレ」「ハンマー」

 

TAGS

この記事をシェア