男ひとり「カルメラ焼き」を作ってみた…漫画「じゃりン子チエ」の世界に憧れて

3月末、花見客でにぎわう東京・上野公園を訪れると、露店が並んでいました。わたがし、とうもろこし、団子、ドネルサンド・・・。何を買おうと考えながら歩いていて、ふと頭に浮かんだのは、砂糖のお菓子。マンガ『じゃりン子チエ』(はるき悦巳/双葉社)に登場する「カルメラ焼き」でした。

『じゃりン子チエ』は、大阪の下町を舞台にした作品で、1970年代後半から20年近く連載されました。主人公チエちゃんの父親テツは、ばくちとケンカが好きな男。そのテツに、子分のように扱われているキャラクターが「カルメラ兄弟」の2人です。作中では、彼らがカルメラ焼きを作ったり、露店で売ったりする様子が何度か描かれます。

カルメラ焼きは、円盤が大きくふくらんだようなかたちのお菓子で、「カルメ焼き」と呼ばれることもあります。ザラメ糖を熱して溶かせたところへ重曹を加えることで、ぷくーっとふくらませます。世代や地域によっては、学生時代に理科の授業で化学反応の実験として作った人もいるようですが、筆者は経験しませんでした。

この目で一度、カルメラ焼きがふくらむところを見てみたい。『じゃりン子チエ』を読んで以来、そう思っていたのですが、実際にカルメラ焼きの露店を見たことはありませんでした。上野公園を歩いたとき、そのことを思い出し、店をひとつひとつのぞいていくと、1軒だけカルメラ焼きを売っている店がありました(ここの店の表示は「カルメ焼き」でしたが…)。

袋にこぶし大のカルメラ焼きが2つ入って、500円。正直、「強気な価格設定だな」と思いました。「買うので、作るところを見せてもらえますか?」とたずねると、「今日は作っていない」とのことでした。漫画でも「カルメラ焼きをふくらませるのには技術がいる」という描写があるので、作れる人が限られているのかもしれません。

だったら、自分で作ってみよう。そう考え、チャレンジすることにしました。ほとんど料理ができないライター41歳、もうすぐ42歳。男の決断です。

熱したザラメに重曹のタネを入れ、一気にかき混ぜると……

ネットで大まかな手順を調べたのち、近所のスーパーへ。ザラメ(作中では「キザラ」と呼ばれています)と重曹を購入しました。合わせて400円弱でした。

買い物カゴにこの2つだけを入れて会計に向かったので、レジのおばちゃんに「あら、これからカルメラ焼き?」などと話しかけられるかなと思ったのですが、そんなことはありませんでした。ほかに玉子と砂糖が必要ですが、自宅にあるものを使うことにしました。

カルメラ焼きの材料

その足で100円均一ショップに寄り、おたまを購入しました。ザラメを溶かすために使うものです。できれば、カツ丼屋さんで使っているような、玉子でとじたカツをご飯にのせるときに使うタイプのものが欲しかったのですが、売っていませんでした。

また、ネットの情報によれば、溶かしたザラメの温度を測る「温度計」があると便利だと書かれていましたが、「カルメラ兄弟」は使っていなかったので、筆者もそれにならうことにしました。

家に戻ると、カセットコンロを用意。重曹に少量の卵白と砂糖を、混ぜました。これが、カルメラ焼きをカルメラ焼きたらしめるための「タネ」となります。次に、おたまにザラメと水を入れ、火にかけます。ぐつぐつと煮え立ってきたら、火を止め、先ほどの「タネ」をほんの少し投入。一気に混ぜると、カルメラ焼きがふくらむ……はずでした。

しかし、見事に失敗しました。カルメラ兄弟の「弟」のように、うまくふくらますことができないのではなく、「タネ」を入れるとおたまのなかがブクブクと泡立ち、コンロに吹きこぼれてしまったのです。

水の量が多いと考え、分量を減らしてもう一度試しましたが、結果は変わらず。コンロのうえは、吹きこぼれたザラメと焦げたザラメで、ベトベトカチカチの大惨事となりました。部屋には匂いが充満し、驚いた愛猫がこたつから飛び出てきました。

「カルメラ兄弟」の技術の高さを思い知る

ここで、いったん心を落ち着けます。ネット上にある「カルメラ焼き動画」をいくつか見直すと、あることに気づきました。どの動画でも、ザラメが煮立ってからも、その泡の勢いがある程度収まるまで、かき混ぜ続けているのです。

そこで3回目は、それまでよりも長い時間ザラメを熱しました。水気がほとんどなくなり、かき混ぜる割りばしが粘り気で重く感じ始めたあたりで、ようやく火を止め「タネ」を投入。一気にかけ混ぜます。すると、「ぷくーっ」というよりは「じわーっ」という感じで、カルメラ焼きがふくらみだしました。ようやく成功です。

3度目の正直

3回目でうまくいくなんて、センスがあるな……とほくそ笑みながら、できたカルメラ焼きをおたまからはずそうとすると、グシャッ! と壊れて飛び散りました。今度は、テーブルの上が大惨事です。

カルメラ焼きを取りはずすときは、おたまをもう一度火であぶり、カルメラ焼きの底を溶かすのが正しいやり方だったのです。急いで拾いあつめ、食べてみると、メロンパンの「皮」をさらにきめ細かにしたような、あるいはマカロンのような、上品な舌ざわりと甘い香り。大満足の出来でした。

マンガのなかのチエちゃんのように、できたてのカルメラ焼きを堪能することができました。

調子にのって、続けて作りましたが、以降はうまくふくらみませんでした。5つめともなると、ふくらまないカルメラ、つまりは焦げた砂糖のかたまりで、お腹がいっぱいになったので、挑戦はここまでにしました。マンガでは「ドッチボールくらい」大きなカルメラ焼きも登場するのですが、そこに至るまでには、時間が要りそうです。

カルメラ焼きがふくらむ楽しさと軽やかな味わいとともに、これを生業(なりわい)とする「カルメラ兄弟」の技術の高さを思い知った昼下がりでした。

 

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