NHKでオッサンふたりが「腹太鼓」を披露したときの話~元たま・石川浩司の「初めての体験」

NHKの番組で腹太鼓を披露(イラスト・古本有美)

NHKでは素人の「のど自慢」などを除き、生歌を流すには独自のオーディションがある。たとえメジャーデビューして曲がヒットしていても、NHKのオーディションに受からないと放送には流せない。しかも、その審査は意外に厳しいと言われている。

ところが当時、僕らがやっていたバンド「たま」は、そのオーディションを受ける前に生演奏で歌うことができた。それは当時、TBSの人気テレビ番組「三宅裕司のいかすバンド天国(イカ天)」への出演をきっかけに、僕らは「たま現象」と呼ばれるほどの話題となっていて、NHKの報道番組の中で取り上げられたからである。

僕らはメジャーデビュー前だったにもかかわらず、CMに出たり雑誌の表紙を飾ったりと、異質な存在であった。社会現象としてのニュース扱いだったのである。売れなくてヤケクソになり、「アマチュアバンドが路上で、全裸で演奏して逮捕」というニュースじゃなくて本当に良かった。

「おかあさんといっしょ」に出演

その後オーディションにも受かり、紅白歌合戦にも出た(そのときの話は以前このコラムでも書いている)。そして、それ以降も音楽番組などに何度か出させてもらった。

そんな中でも思い出深いものの一つが、子ども向けの番組「おかあさんといっしょ」。「ハオハオ」という曲で出演することになった。

リハーサルをするため、歌のおにいさんとおねえさんに僕らのスタジオまで来てもらうことになったのだが、おにいさんが少し遅れていた。そこでおねえさんが携帯に電話をかけた。

「おにいさん、今どこにいますか?」

番組じゃないところでも「おにいさん」と呼んでいることが妙におかしかった。

空き缶コレクターとして出演

その後、「たま」が解散しても、僕ひとりでNHKの番組に出る機会が何度かあった。「熱中時間」という番組では、空き缶コレクターとして出演した。

最初はアメリカでロケをするという話で受けたのだが、「缶ジュースを探しに海外に行くとなったら、受信料の無駄遣いと視聴者からクレームが来るかもしれない」ということで、急遽沖縄に変更になった。

4日間、朝から晩までいろんなところでロケをしたが、VTRは10分足らずだった。まぁそれはいいとして、困ったのはスタジオ収録だ。NHKなので空き缶のメーカー名が一切言えない。

民放なら「このポッカのコーヒーのデザインが、沖縄ではシーサーなんです」と言うところを、「この揉み上げのある男の人のイラストで有名なデザインのコーヒーが、沖縄ではシーサーなんです」などと言い換えなくてはならなかった。

そのほかにも、歌人の東直子さんからの推薦で「NHK短歌」という番組にも出た。僕は短歌なんて詠んだことがないにもかかわらず、視聴者が応募した短歌に対して知ったかぶりで寸評っぽいコメントをしなくてはならず、ちょいと冷や汗だった。ちなみにその時に僕が詠んだ歌はこれだ。

「上げられる ことなくなった 青便座 君が逝ったよ 君が逝ったよ」

一緒に暮らしていた男性が亡くなったことを妄想して作ったもので、「短歌で便座が詠まれたの、初めてかも」と言われた。

おっさん二人が腹太鼓で出演!?

ここ最近でよく出演しているのはEテレの「シャキーン!」という番組だ。僕がいまやっているバンド「パスカルズ」がアニメに音楽をつけて、僕は演奏とともに犬の鳴き声をやったり、腹踊りの人にパーカッションや即興歌を付けたりしている。

中でも「これでNHKに出ていいの?」と思ったものが、僕が同い年の男性とふたりでやっている「ホルモン鉄道」というユニットでの出演。映像の秒数を当てる「ジャストタイム」というコーナーに出たのだが、オッサンふたりが着ている服を脱ぎ出し、腹をペシペシ叩きながら歌うものだった。こんなくだらないものを天下のNHKが流してくれるなんて、と嬉しかったなあ。

なお、歌は一番までしか流れなかったので腹を叩いただけだったが、最後はパンツを半分ずらして尻太鼓を叩くといったもの。もし次の機会があったら、最後までこの歌を歌わせてほしい。

ちなみに別の番組で、NHKの地方局が「ホルモン鉄道」のライブを撮影しに来たことがあったが、オンエアー前に「すみません、曲のタイトルすら流せず、放送が見合わせになりました...」と、放送がオジャンになったこともある。

その曲名とは、「包茎ジョナサン」「せんずり数え歌」といったものだ。悪代官が町娘の乳をチュウチュウ吸う歌や、男がブランコこぎながら「尺八してくれー」とむせび泣く歌など、いろいろとNHKでは問題があったのかもしれない。

どれも男の哀愁を歌った、切ない、いい歌なのにな...。

 

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