フリーライターが「同人誌」を売るコツは? 聖地巡礼プロデューサーが秘策を公開

フリーランスの編集者やライターにとって悩みの種は、収入が不安定になりがちなこと。それを補う手段のひとつとして、同人誌を作って即売会などで販売するという方法があるのでは? 聖地巡礼プロデューサーの柿崎俊道(しゅんどう)さん(43歳)は、そんな風に考え、自ら実践してきました。

柿崎さんが作る同人誌は「聖地会議」。マンガやアニメにゆかりのある土地を訪ねる「聖地巡礼」を題材にしたものです。柿崎さんはこの同人誌で、取材、撮影、執筆、編集などほぼすべての製作工程をひとりでこなしています。

フリーランスの編集者でライターでもある柿崎さんは3月25日、東京・秋葉原で行われたイベントに登壇しました。ゲームメディアなどに執筆するライターたちが集まる「ゲームライターコミュニティ」でのもので、「情報系同人誌(文系)を商材に即売会で10万円の売上を出す方法」をテーマに語りました。

出版不況の中で生き残っていくために

ここでいう「情報系同人誌」とは、自分で集めた情報を本にしたものです。たとえば、グルメ、旅行、乗り物などをあつかった情報系同人誌があります。柿崎さんが「聖地会議」を作ろうと考えたのは、編集者、ライターとして「自分の権利物を増やせないかと考えた」からでした。

「これまで自分の書籍を出してきましたが、(出版不況で)企画を通すのが大変になってきた。企画を通そうと思ったら『原稿を出して』という話になる。『原稿を全部見てから判断したい』と、あと出しジャンケンみたいなことを言われる。どうせ書くんだったら、自分で出しちゃおうと。そこでたどり着いたのが、情報系同人誌だったんです」

ライター陣を前に講演する柿崎さん

柿崎さんによると、同人誌「聖地会議」の特徴のひとつは「薄くて高いこと」。1冊28ページで、1000円です。しかし、その価格に見合うだけの「情報の担保と希少性」を持たせていると柿崎さんはいいます。具体的には、聖地巡礼の専門家である柿崎さんが、雑誌やWebメディアであまりとりあげられない人に話を聞くという形式を取っているのです。

「毎号、表紙がビジネスマンです。ビジネスマンをアニメ誌の表紙では扱わないでしょう? 可愛い声優さんや、カッコいいキャラクターを扱う。あえて違う方向を打ち出しているんです。だから即売会でも(販売を委託した)本屋さんでも目立つ」と柿崎さん。委託先の書店では、価格が高い分、書店の取り分(料率)も増えるため、書店が販売に力を入れるという側面もあるそうです。

統一フォーマットで複数冊作ることで「一気に読者を獲得する」

一方で柿崎さんは「聖地会議」を毎号同じフォーマットで作ることで、制作費を抑えるという工夫もしています。「聖地会議」は2015年からこれまでに25号発行されていますが、レイアウトや台割(本の設計図)はすべて同じです。

表紙にキャッチコピー、対談相手、著者の名前を載せる。表4(背表紙)には対談の概要。「はじめに」のページは600字以内、タイトルは40字以内……等々。写真は、三脚とセルフタイマーを使って、撮る側と撮られる側をひとりでこなしています。

柿崎さんが特に気を使っているのが本文ページの下部にある脚注。読者の多くは、脚注やキャプション(写真の説明)など「小さい文章」から読み始めるというのです。

また同一のフォーマットを使った背景には、「一気に知名度をあげて、読者を獲得するために、短期間で物量をもって攻めなければならない」という考えもあったといいます。

「(『聖地会議』は)2015年に作り始めました。なぜ作ったかというと、アニメツーリズムの声が聞こえていたからです。しかも、大企業が参入することがわかっていた。だったら、競争するのではなく、彼らが読みたくなるような本を作ろう、と」

即売会に出展する際のブースの工夫について解説する柿崎さん

「アニメ聖地」を選定するアニメツーリズム協会の白書で、「聖地会議」は紹介されたそうです。

柿崎さんは言います。

「『聖地会議』は1000円でも安いと思ってもらえる人、本当に読んでほしい人に読んでもらいたい。部数が少ないので、必要と思ってくれる人に届いてほしい」

商業的な出版では、初版の発行部数が少なく、配本(どの書店にどの本を置くか)を著者や編集者ではなく「取次」と呼ばれる流通業者が決めるため、対象が「どんどんぼやけていく」と柿崎さんは指摘します。

そうした状況の中、編集者・ライターとして、読者とじかに接することができる「即売会」の重要性を語っていました。

 

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