キメが細かくてやわらかい「ヒレカツ」と天然車海老の「海老フライ」を盛り合わせた贅沢すぎる定食

すゞ家 大須赤門店のヒレカツ・海老フライ盛合せ定食

私事で恐縮だが、3月は次男の大学合格と私たち夫婦の銀婚式、女房の誕生日と、わが家はおめでたいことばかり。もちろん、家族でお祝いもするのだが、ちょっと贅沢な食事をしながら一人でその喜びを噛み締めたい。

値段は「時価」!?

そこでパッと思い浮かんだのが、名古屋市の大須にある創業昭和23年(1948年)の老舗「すゞ家 大須赤門店」。いろんな店を食べ歩いた中でも、ここのとんかつは間違いなく名古屋で最高峰。とくにヒレカツは、ほかの店で食べられなくなるほど旨い。

名古屋市中区大須にある「すゞ家 大須赤門店」

それともう一つ、ここでどうしても食べたいものがあるのだ。それは、メニューでも異彩を放っていた。「ヒレカツ・海老フライ盛合せ定食」。値段は「時価」とある。

さまざまな定食が並ぶメニュー。「時価」の文字が目立つ

ヒレカツ定食は1730円と値段が決まっているので、海老フライが時価なのだろう。注文時に値段を確認することもできるだろうが、それではスマートさに欠ける。会計時までのお楽しみにしておこう。

で、目の前に運ばれた「ヒレカツ・海老フライ盛合せ定食」がこれ。

ヒレカツ・海老フライ盛合せ定食

ヒレカツが2個と尾頭付きの海老フライが1本。サラダとご飯、味噌汁、漬物も付く。

名古屋の店だけに、味噌ダレも用意している。しかし、肉そのものの味を堪能するには、やはりソースの方がベターだ。

ヒレカツはカットしてあり、これがその断面。肉のキメが細かいのがよくわかるだろう。ソースを少しだけつけて食してみる。

ヒレカツにソースをつける

あれ? 前に食べたときよりも肉が分厚くカットされている上にメチャクチャやわらかい。ヒレだから当たり前だと思うだろうが、巷のヒレカツとはまったく違う。例えるならば、絹ごし豆腐のようなキメの細かさなのだ。

それでいて、肉の味もしっかり。もう、あまりの美味しさに言葉を失ってしまうほど。その喜びは舌から全身に伝わり、幸福感に包まれる。こんな旨いものを食べられるのは、次男が大学に無事合格したのと私たち夫婦が銀婚式という節目を迎えたこと、女房が?歳の誕生日を迎えたおかげだ。

続いて、海老フライ。絶妙な火加減で仕上げてあり、身の外側はプリプリながらも、内側は中心部へ向かうにつれてしっとりとした食感に変化していく。同時にじんわりと海老の甘みが広がる。これがもう、悶絶するほどの美味しさ!

海老フライにタルタルソースをのせる

自家製のタルタルソースも海老の旨みを見事なまでに引き出している。タルタルソースというよりは、サンドイッチに使うたまごフィリング。いや、パセリやピクルス、玉ネギ、セロリも入っているので、それよりも複雑で上品な味わいだ。

メインであるヒレカツと海老フライ以外の「脇役」たちも決して手を抜いていない。サラダのドレッシングが自家製なのはもちろん、ご飯の炊き加減や味噌汁や漬物の味付けも完璧である。定食として、これ以上完成された形はないだろう。

満腹とともに心が豊かに

食べ終えたところで、店主の森弘隆さんが席まで来てくれた。実はこれまで何度も取材で訪れているので顔馴染みなのだ。

「ヒレカツ、以前と変えたのですが、わかりました?」と、森さん。

ええ、気がつきましたとも。前よりも分厚くカットされているにもかかわらず、やわらかいのは、使用する豚肉を見直したからだという。以前は岐阜産のけんとんや鹿児島産のSPF(無菌)豚などを厳選していたそうだが、現在は山形産の豚がメインだとか。

すゞ家 大須赤門店の森弘隆さん

「創業当時は、今のようなコロッとした形のヒレカツを出していたようです。肉は分厚くカットした方が絶対に美味しいですからね。キメが細かくて味も濃厚な山形産の豚肉に出会ってから、変えてみようかと。今回はヒレカツでしたが、ロースカツだとより違いがわかると思いますよ」と、森さん。

また、海老フライには天然の車海老を使っている。しかし、10年ほど前から車海老の仕入れ値が高騰したため、「時価」で出さざるを得なくなったという。仕入れた車海老の大きさで値段は変動するが「ヒレカツ・海老フライ盛合せ定食」は、だいたい3000円前後。今回は、2700円とのこと。

食べ終わって、お腹が満たされるとともに心も豊かになった。50歳を目前に、カメラマン、ライターとして自分はこれからどのように生きるべきか悩んでいたこともあって、今回の体験から大きなヒントを得た。

私が言うとウソっぽく聞こえるかもしれないが、ここの「ヒレカツ・海老フライ盛合せ定食」のように、人の心を豊かにする写真と文章を提供していきたいと思った。

 

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