東京の「おでんだね」専門店を訪ね歩く男「子供のころ好きだったものに会いたくなる」

東京で売られている「おでん種」(提供:源太さん)

おでんの具材、おでん種(だね)の専門店めぐりが大好きで、専門サイトまで作ってしまった人がいます。東京のWebデザイナー・源太さん(44歳)。休日、東京にあるおでん種屋を訪ね歩き、その情報を「東京おでんだね」としてまとめています。

おでん種の専門店の多くは、かまぼこの専門店として商店街の一画に店を構えています。東京の下町で生まれ育った源太さんにとって、おでん種屋さんはごく身近な存在だったといいます。一見、特徴がないように思える東京のおでんにも、特徴はあるのでしょうか? また、源太さんがいま、おでん種に注目しているのはなぜでしょうか?

「魚のすじ」と「カレーボール」 東京おでんの独特さ

ーー東京のおでんには、どんな特徴があるのでしょうか?

源太:よくいわれるところでは出汁(だし)の濃さが関西と違うというのがありますが、「たね」でいうと、ちくわぶ、あとは「魚のすじ」っていうのがありますね。はんぺんにサメの肉が使われるんですけど、その残りの部分、軟骨とか余ったところを砕いて練ったものです。

ーー「牛すじ」は知っていますが、「魚のすじ」は知りませんでした。

源太:これは、おでん種屋さんが自分たちで作っている場合も多いんですけど、製品として売っているところでは千葉県の銚子が有名です。関東でも魚のすじを知らない人がいますね。それはコンビニおでんの影響なのか、なんなのかわからないですけど、最近はあまり食べられなくなってきたようです。

あと、変わりだねでいうと「カレーボール」があります。僕にとってはなじみ深いものなんですけど。これは練り物にカレー粉を混ぜ、ボール状にして、揚げたものです。東京の各地にありますけど、串に刺さったものがあったり、色や大きさが違うんです。タマネギを混ぜるところとか、オリジナルのカレー粉を使っているお店もありますね。

ーー東京には、そうしたおでん種屋さんが多くあるのですか?

源太:いまは50軒あるかないかくらいでしょうか。東京でも23区内がほとんどで、(西側の)市のほうになると、すごく少ないですね。区のなかでも、新宿区のように、おでん種屋さんがもう一軒もないところもあります。

これまでに20数店をまわったんですが、とりあえず本格的な夏がくる前に1周まわりたいなと思っていまして。お店がどんどん少なくなっていくので。

東京おでんを訪ね歩く源太さん

ーー源太さんがおでんに魅せられたのは、なぜでしょうか。

源太:子供のころ、東京の北区に住んでたんです。荒川区とか足立区も近くて、おでんをよく食べてたんですね。親が買ってきてくれたりとか、家の近くまで売りに来てたりして。だから、おでんは、おでんだねとして買ってきて作るもんだっていうのがあったんです。

ーー当時は「おそ松くん」のチビ太のように「おやつ」としておでんを食べたのですか?

源太:いえ、完全に「ご飯」としてです。おでんの歴史を調べると、戦後は駄菓子屋でおでんが売られていて、そのころに注目されたんです。その後、高度成長期が成熟してからバブルがはじけるくらいまでの間にも「おでんの時代」があったんです。それは家庭で食べる、家庭の味として普及したものです。その世代に僕がどハマりしているんで、おやつというよりは、食卓にならぶものというイメージがありますね。

ーーそんなおでんに、いま再び注目しているのはなぜですか?

源太:大人になってひとり暮らしをするようになって、親の料理から離れていって。仕事の関係で中国で生活していたとき、日本のちょっとした風景が妙に懐かしくなりまして。日本のドラマを観ていて住宅街が映ると、無性にそこを歩きたくなるんですよ。

帰ってきてから、地元のあたりを歩いてみました。東京の荒川区に尾久(おぐ)って地域があるんですけど、そこは昔、花街だったんです。うちの祖母は若いころ、そこで芸者をしていたというんで、子供のころに少しは見たはずなんですが、もう当時の面影はない。

祖母が芸者をした場所だからっていうのもあるんでしょうけど、歴史というか人生を感じるものをアーカイブしておきたいなと。そう思ったときに、パーソナルな思い出として、おでん種屋さんと結びついたんです。

ーーーそれをサイトにまとめ始めたということですね。

源太:まずはそういったものを残しておきたいなというのと、おでん種屋さんをまた広めたいなという気持ちがありまして。僕みたいに引っ越したりしたあとで、「そういえばあそこのおでん種屋さん、いまはどうなってるのかな?」と検索する人っていると思うんですけど、そういうときにちゃんとした情報がひと通り載っていると、うれしいじゃないですか。そういう人のためになったらいいなと。

尾久で芸者をしていたころの源太さんの祖母(提供:源太さん)

ーーーお店ごとの違いは、どういったところに表れてくるのでしょうか。

源太:店構えは面白いと思いますね。どの商店街もそうなんでしょうけど、後継者の問題があって、70歳、80歳近くになってもやられているお店とかあるわけです。それを昔の建物のままでやっているとか。

同じ種でも、レシピが違っていたり具材が変わっていたり。買うだけではわからないんですけど、お店の方に話を聞くと、どういう魚を使っているのか聞けて。あとはなんといっても店主とおかみさんの違いっていうか、みなさんそろって気さくな方が多いんですけど、お話をうかがうとそれぞれの人生があって、それぞれのこだわりがあって。それを聞けるのがいいですよね。

ーーー「この種を食べると店の味がわかる」というのはありますか?

源太:揚げかまぼこの味が全体を左右するかなと思うので、何も入っていない「さつま揚げ」、カレー粉の入っていない「ボール」、そのあたりを食べるとわかるかなあと。飲み屋さんとしてのおでん屋さんだと、大根とかしらたきになってくると思うんですけど、おでん種屋さんは揚げかまぼこが中心なので、プレーンに楽しめるものを食べるといいかなと思います。

ーーー源太さんは、一度の訪問で何種類くらいおでん種を買っているのですか?

源太:だいたい10種類から12、13種類を買っています。1000円から1500円分くらいです。基本的には取材したいっていうのがあるんですけど、買ったおでんを「家庭で楽しむ」っていうことを重視しているので。ちゃんとご飯のためにおでんを買っているんです。そこは大事にしたいですね。

おでん論争っていうのがあって、「おでんは主食か? おかずか?」みたいなのがあるんです。僕はご飯をつけてもいいので「おかず派」なんですけど、茶飯を作るとご飯とおでんを両方おいしくいただけます。茶飯ってお酒を飲むほうのおでん屋さんでも出てくるんですけど、要はおでんの出汁で炊いたご飯です。なかに油揚げをちょっと入れたりして。昔から「おでんには茶飯」みたいな感じになっていて、お酒にもよく合うと思います。

ーーー源太さんが、特に好きなおでん種は?

源太:ちくわぶが好きですね。東京ローカルだからっていうわけではなくて、子供のころから当たり前のようにあったので。あとは、いまは「大人の口」になっているので、ごぼう巻きとか、渋い味のものも好きですね。

歳をとると、素直になって自分が好きだったものに戻ってくるんです。「もう1回、会いたいな」、「あのときの気持ちに戻りたいな」って。子供のころはネットがなかったので、いまあらためて昔住んでいた場所のことを調べると、興味がでてきたりまた歩いてみたいなと思ったり。40歳をすぎると(人生を)1回振り返るというのはありますね(笑)

 

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