ひとりラーメン「一蘭」はなぜ外国人観光客に人気なのか?

ひとりラーメン「一蘭」はなぜ外国人観光客に人気なのか?
福岡発のラーメンチェーン店「一蘭」

福岡市に拠点を置くラーメンのチェーン店「一蘭」をご存知だろうか? 博多特有の極細ストレート麺に絡む、雑味の無い白濁スープ。メニューは潔く「とんこつラーメン」一本に絞っている。

自習室のような仕切りのあるカウンター(正式名は“味集中カウンター”)に着席し、注文用紙に麺の固さやスープの濃さを記入して提出すると、目の前の壁がすっと開き、丼を持った店員の腕が伸びてくる。それを、ひとりで黙々と啜る。

個々の客がラーメンと一途に向き合えるこの環境こそが、ラーメン屋「一蘭」最大の特徴である。

他人の目を気にせず、ラーメンに集中

元々「味集中カウンター」は「ラーメンに集中してもらうため」という理由で作られたらしいが、裏を返すと「他人の目を気にせずにラーメンが食べられる」ということになる。だから女性ひとりでも入りやすい。本来の目的からは逸れるものの、なんてストレスフリーなのだろう、と思う。

では、その環境の良さと味は本物なのか。僕は新宿にある一蘭に行ってみた。

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一蘭の席は「味に集中」するため一人ずつ区切られている

一つ一つの席の両側に仕切りがあるテーブルに着くと、紙に自分の好みのあれこれを書かされることになる。そして、5分ほど待つと、待望のラーメンが正面の窓から届けられる。

たしかに、仕切りのおかげで味に集中できる! 隣に人がいると、調味料の取り合いや水の陣地争いで気を使わねばならない。そうなると、味に完全に集中することができない。

自分のテリトリーで食べられる幸せ……。それを噛み締めながら、僕はスープまで飲み干していた。

「一蘭に来る観光客は4種類に分けられる」

先日、ある面白い話を中国人の女性から聞いた。最近、一蘭が中華圏の旅行客に人気なのだそうだが、彼女によると、一蘭を求める中国人は大きく4つのタイプに分かれるというのだ。

1 普通に味が美味しいと思う人
2 カウンター席やオーダー用紙などの店内の仕組みが面白いと思う人
3 なにも考えずに、みんな行ってるから自分も行ってみたいという人
4 上記の考えになんとなく同感を持つ人
(まあまあ美味しい、まあまあ面白い、なんとなく人気だからってやつ)

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店内のボードには注文や食事の仕方が書かれている

中華圏の観光客の多くは、単純に「美味しいから」「面白いから」というよりも、アトラクション的なエンタメを求めて一蘭を訪れるのではないか。中国人の彼女はそう推察する。日本人の一蘭ファンのように「ひとりで食べたい」という目的ではなさそうだ。

一方、台湾人の女性にも聞いてみると、「日本のラーメンは台湾人にも人気だけど、個人でやってるラーメン屋は敷居が高い。チェーン店で一番入りやすいのが一蘭」という答えが返ってきた。こちらも、ひとりで食べられるということとは、特に関係がないようだ。

ここ数年、日本のラーメン店に外国人観光客が長蛇の列をなす光景が定番と化している。しかし、一蘭の店舗が近くにないせいもあって、正直「一蘭が外国人に人気」というのがあまりピンとこない。

彼女たちの言う通り、本当に一蘭は中華圏の観光客にウケているのか。

「中華圏に人気」現象を一蘭はどう考えるか

真相を確かめるため、一蘭の広報室に問い合わせてみた。

一蘭の広報担当者によればは、「たしかに台湾・香港・中国本土の方が、外国から訪れるお客様の中でも大半を占めています」ということだ。中華圏から支持を受けている、というのは事実のようだ。

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一蘭のラーメン。半熟塩ゆでたまごときくらげをトッピング

では、彼らは一蘭のどういったポイントに魅力を感じているのだろうか。担当者曰く、中華圏からは特に「味」の評価が高いという。

「ラーメンの“味”そのものだけではなく、スープの濃さや麺の固さを選ぶことができ、自分好みのラーメンを味わえるということが、特にご好評いただいていますね。実際に『いろんな味を楽しみたい』『カスタムが楽しい』というお声はよくいただいています」

店のシステムについてはどうだろうか。担当者は「中華圏のお客様に限った話ではないのですが」と前置きした上でこう語る。

「海外のお客様からは『ストレスフリー』という評価をよくいただきます。例えばラーメンをすする文化の無い国のお客様の場合、“味集中カウンター”があることで、すする姿を隠せるから集中できるそうです。お箸をうまく使えなくても、周りを気にせず食べられるというご意見もありますね」

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一蘭の店内の様子(画像の一部を加工しています)

ラーメン好きをストレスから解放する

一人ずつ区切られたカウンター席は、第一印象では「若干窮屈かな」と感じるのに、実際に座ってみると予想外に落ち着いてしまう。

一蘭は環境をひとつの調味料として提供する、稀有なラーメン屋だ。その居心地の良さは、海外から訪れた人々にも十分に伝わっているようだ。なお、一蘭では多言語対応の注文用紙も用意しているという。

ソロ食活動家・女性客・外国人観光客と、老若男女あらゆる客をストレスから解放し、ラーメンと真摯に対峙する環境を作り出す。一蘭のストイックな精神に敬意を払いつつ、また「味集中カウンター」に腰をかけてみることにする。

 

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