迫力抜群!相撲部屋の「朝稽古」 何度も起き上がる力士に勇気をもらう

力士たちの朝稽古に胸が躍る(イラスト・和田靜香)

大相撲は「本場所」と呼ばれる技能審査興行が1年に6回、奇数月に行われ、来たる3月10日からは大阪場所が行われる。

などと書く私は、まごうことなき「スー女(すーじょ)」、つまり「相撲を愛する相撲女子」である。女子は永遠に女子。53才の今も、スー女と自認している。

そんなスー女の私が皆さまに「是非、一度!」とおススメしたいのが、相撲の朝稽古見学だ。

力士たちの激しいぶつかり合いに目を見張る

朝7時や8時頃から相撲部屋にお邪魔し、力士たちが稽古するのを見せてもらう。目の前に土俵。親方が座って指導する、その後ろの方の板の間に座布団をもらって座り、じっとひたすら稽古を見る。私語は禁止。

そんなの面白いの?って。これが最高に面白い。いや、面白いという言い方は違うな。10代のまだまだ華奢な力士から、20代、30代の人気力士までが全力でぶつかり合ってする稽古。日頃座る国技館の2階席から遠く見下ろすのに比べたら、間近で見るのはすごい迫力で目を見張る。

ガチーン、バチーンと音をたてて頭からぶつかり、おっ!うおっ!と声ともつかない声が出て、シュッシュッと身体が音を放ち、バ~ンと飛ばされ、そのまま壁に激突!も度々。それでも怪我などしない鍛え方に驚愕し、そうした動きの一々で腕やふくらはぎや肩や背中の筋肉がモリッ、ビキッと動くのが見えると、なんか、もー、ドキドキする。

おすもうさん=太ってる人=ぼよ~んぼよ~ん、なんていう誤ったイメージはここで一新される。いやもう、激しい!速い!運動神経抜群!これぞアスリート!なにこれ、めちゃカッコいいじゃん!になるのである。

力士たちは何度も何度でも、転がされても倒れても、また起き上がり、土俵の土をあちこちつけたままにぶつかっていく。息が上がり、えずくほどになっても、立ち上がる。限界の向こうまで行くその様子は、見ていると時にはこちらも息が苦しくなるほどだが、必死な姿には元気がもらえる。勇気が沸く。

高田川部屋の朝稽古の様子(日本相撲協会公式チャンネル)

転んでも転んでも立ち上がる力士たち

そもそも私が相撲を好きになったのも、答えの出ないことに思い悩み身動きが取れなくなって布団インしていたとき、相撲好きの友達に勧められて見たTV中継で、ほんの数秒で勝負がついて、白黒答えを出すところに引かれたのだ。それは爽快なほど快感で、勝敗に一喜一憂興奮し、いつしか自分の悩みは薄らいだ。

それからずっと、私は相撲に自分の人生を重ねて見たりしがちだが、いや、見てもらえば分かるって。転んでも転んでも立ち上がる力士の姿には感動する。そうだ、私も、また立ち上がろう。失敗しても転んでもいいんじゃん、とカッと胸熱くなるのだ。

相撲の稽古は、土俵は狭いから、実践で稽古が出来るのは常に2人だけ。自分が土俵に入る時以外は、みんなそれぞれ自分が出来る稽古をするのが特徴だ。そこで力士たちは「自分が今何をすべきか?」をそれぞれが考え自分でやるしかない。

それぞれ相撲の基礎、四股を踏み、すり足をし、てっぽうをする。いかにも重そうなダンベルを頭の上まで持ち上げる。自分より重い力士をおんぶして屈伸する。「はっきよーい」と最初に立ち上がるときのイメージトレーニングをする、などなど。

自分がやるべきことが分からない若い衆には、親方が「ほら、ゴムベルト使ってストレッチやれよ」とか指示したり、逆に「自分でやることを考えないとダメだよ。ボオっとしてるだけじゃ稽古にならないよ」と言ったりする。

見ていると、強い人、意欲のある人は自分でどんどん動いていく。相撲界に入門してグングン伸びている豊昇龍(ほうしょうりゅう)という力士がいるが、去年彼の稽古を見たとき、稽古中ずっと動き続けていることに驚いた。

一瞬たりとも休まない。まるでゴムまりが跳ね続けるように土俵脇で何かしら動き続けている彼を見て、この人はとんでもないことになりそうだ、と感じたのを覚えている。ちなみに彼は朝青龍の甥っ子として、相撲ファンには有名だ。

自分が今何を一番やるべきなのか? それを分かって実践できる人が、やはり強くなるんだよね。もちろん、それだけじゃないけど。

そこで、ふと思う。「私は今、何をすべきなんだろう?」

雨が降って寒い中、泥着のまま四股を踏む力士たち

稽古場に飛ぶ「声」に刺激を受ける

さて、朝稽古の見学で、私が大好きなのが、稽古場に飛ぶ親方や他の力士たちからの声。

「怖くないから、まっすぐまっすぐ行くんだよ!」
「ほら、足を前に出せ!」
「前に行け! 脇が甘いぞ!」
「お互い休まないで!」
「自分から行くんだよ!」
「引かない引かない!」
「前に出て行けば大丈夫、何でも出来る!」

「そのとおりそのとおり、いいんだよ、負けても!」
「キツイけど、だから稽古になるんだよ!」
「夢中で当たらないと!」
「土俵際まで誰でも行けるんだ。そこからだよ」
「相手の倍、力を出せ!」
「慌てない慌てない!」
「もう一丁!」

具体的なアドバイスとは別に飛ぶこうした言葉が、まるで自分に言われているかのように聞こえて、思わずメモにとってしまう。ここに書いた声は、今までのメモからだ。

相撲は前へ前へと攻めていくもの。後ろへ引いてしまうと、負けてしまうことが多い。ところが、引いても引いても、土俵際でひらりかわして逆転勝ちもある。勝負は土俵際まで分からない。

そうだ、私も前へ行こう。たとえ失敗して土俵際まで追い詰められても、そこからがまた勝負だ。ひらりかわしていけばいい。怖がらないで、自分の力を出し切ろう。でも、慌てない。じっくり行こう。さぁ、もう一丁!

稽古の終盤、力士みんなが揃って整理体操をして、足を180度横に開いてペタ~と胸を床につけるバレリーナみたいな「股割り」を見る頃には、私はいつも気持ちが前向きになる。ありがとー、ありがとー。

稽古の最後に力士たちはみんな股割りをして股関節を柔らかくする(イラスト・和田靜香)

横綱の意外な素顔が見えることも

さて、朝稽古見学、以前は相撲部屋に電話をすれば誰でも簡単に行けたけど、最近は相撲人気が高まりすぎて、東京では後援会に入会してないと難しかったりする(後援会も年会費1~2万円で、普通のファンクラブ感覚で入れるんですけどね)。

でも、大阪場所前などの地方興行では宿舎に泊りこんでいる相撲部屋の朝稽古を比較的簡単に見ることができる。多くの部屋が神社や寺のような開放的な場所に土俵を作り、一般に公開していることが多いからだ。相撲部屋がどこにキャンプインしてるかはネットに情報が落ちているし、『大相撲中継』(NHK-Gメディア)のような相撲雑誌には一覧表が載っている。

テレビでも報じられているように、元横綱稀勢の里の荒磯親方や大関高安関らが所属する田子ノ浦部屋が兵庫県尼崎市の園田競馬場内に宿舎を設け、朝稽古を公開している。子どもの相撲教室や、ちゃんこ会などお楽しみも開かれ、公開は3月7日まで。

時には人気力士の思わぬ素顔が見えたりもする朝稽古。私がよく覚えているのは、急に雨が降ってきた屋外の土俵で、ブルーシートをせっせと土俵上の屋根にかける横綱白鵬の姿。高いところに手を伸ばし、若い力士達と一緒になって雨除けをする横綱の姿に、ああ、偉ぶらない、いい人だなぁと思った。

突然の雨に、率先してブルーシートをかける横綱白鵬

 

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