40歳すぎても歯医者が怖い!「歯科恐怖症」の男がたどりついた意外な解決策

40歳すぎても歯医者が怖い!「歯科恐怖症」の男がたどりついた意外な解決策
(Photo by Getty Images)

「歯医者」という字を書くのもイヤなくらい、歯医者(歯科医院)が苦手です。筆者は、歯科医院の前を通ることはおろか、いわゆる虫歯菌が擬人化されたイラストですら怖いのです。それは、40歳を過ぎても変わりませんでした。

原因は、小学校に入る前、歯科治療で痛い思いをしたことでしょう。当時(30数年前)は「治療の痛みを和らげるための麻酔が痛い」という、幼心にも矛盾を感じる時代でした。いま思えば失礼な話ですが、通っていた歯科医院の先生が「鬼」に見えました。その先生がジョギングで自宅の前を駆け抜ける時間帯に、家を出ないようにしていたほどです。

それから小・中・高・大学時代と、全力で歯医者通いを避ける人生を送ってきました。

成人してから出会った新しい治療法

20代なかばごろ、親知らずが原因で強烈な頭痛に見舞われました。このときはさすがに耐えきれず、歯科医院に飛び込みました。そこで、とにかく歯医者が怖いこと、歯のレントゲン写真を見ることすらできないこと、なんならいますぐ走って逃げたいことを訴えました。

すると先生は、こう言ったのです。「あなたは、歯科恐怖症でしょう」。そして、大学病院での治療を勧めてくれました。

紹介された大学病院では、診断の結果、点滴のように手の甲から心身を落ち着ける薬を注入してもらい、歯を治療することになりました。筆者の場合、この方法は効果的でした。眠っているあいだに治療が終わるという、まさに夢のような体験だったのです。

ただ、1回の治療に時間がかかりました。目が覚めたあと、数十分間の休憩をとる必要があるからです。会社を半休にする必要がありました。

また、先生が「少しずつ普通の治療ができるようがんばりましょうね」という雰囲気を漂わせてくることもあって、「今度はよほど派手な虫歯にならないと、お世話になれないな」と考えるようになり、定期検診をサボるようになってしまいました。

そして見つけた「キッズ向け」歯科医院

それから10年以上が過ぎ、筆者は41歳になっていました。図書館からの帰り道、ある建物で、内装工事が進められていることに気づきました。大きな窓に板張りの床、壁には黒板がかかっています。

「カフェでもできるのかな?」と貼り紙を読んでみると、「○○キッズデンタルクリニック」とあります。子供向けの歯科医院だったのです。貼り紙には、麻酔や沈痛のための「笑気ガス」が使えることが書いてあり、小さく「大人もどうぞ」と添えてありました。

数カ月後、歯が痛みだしたのを機に、思い切ってその歯科医院を予約しました。

筆者の持論として「歯医者に行く前、人は世界で一番優しくなれる」というものがあります。筆者自身も、予約の前日までに、率先して面倒な仕事を引き受けたり、後輩に声をかけたりして、歯科医院で「天罰」が当たらないよう努力しました。

そして当日。恐怖でよく眠れず、寝不足のままクリニックを訪れました。待合室には風船やクッションがあり、黒板にはかわいらしいキャラクターが描かれています。おもちゃが並んだ子供部屋のようなスペースまでありました。

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(Photo by Getty Images)

ふと気づくと、順番を待っているのは、お子様連れのママばかりです。しかし筆者にとって、どれだけファンシーであろうと歯科医院は怖い場所。「恥ずかしい」とか「場違いだったかな」といった感情は生まれませんでした。

待っているあいだ、何度か逃げ出したくなりましたが、周りには3、4歳の「戦友」が多数いたこともあって、踏みとどまることができました。

名前を呼ばれ椅子に座ると、自分より10歳は若いであろう爽やかな男性の先生に、とにかく歯医者が怖いので、おっさんだけど診てもらいたい旨を伝えました。このとき先生が筆者の訴えに、笑うことなく話に耳を傾けてくれたことで、少し安心感をおぼえました。

「はーい。お口開けてくださーい」

やがて鼻にゴムマスクを付け、笑気ガスを吸引します。ガチガチに緊張していたことや、筆者の体質もあって、眠くなるようなことはなく、正直、効いている感じはありません。ただ、他のブースや待合室にいる「戦友」たちの手前、泣き叫ぶわけにいきません。両手足のひらに汗を握りながら、治療を受けました。

先生や歯科衛生士は、ふだん子供を相手にしているせいでしょう、筆者に対しても「はーい。お口開けてくださーい」と優しい口調で接してくれました。そのおかげで、最後まで頑張ることができました(ただし、過剰な恐怖のため何度か顔を歪めました)。

また、長いあいだ歯科医院に通っていなかったので知らなかったのですが、いまは「麻酔のための麻酔」が塗り薬になっており、痛みはまったくありません。その後の麻酔も「これならギリ耐えられる」といった程度の痛みで乗り切れたこともあって、数回に及ぶ治療のために通い続けることができました。

以来、このキッズデンタルには、歯の検査とクリーニングのために1カ月に1回のペースで通っています。もうすぐ1年が経とうとしています。

「そこまで頻繁に通わなくても……」という友人もいるのですが、一度通うのを止めると、もう二度と行きたくなりそうな気がするのです。ゆえに、なかば強引に自分で自分を歯科医院へと駆り立てているわけです。

今年になって、毎回歯のクリーニングを担当してくれる歯科衛生士の方の名字を、初めて知りました。これまでは恐怖のあまり、その方が胸につけている名札を見る精神的余裕さえなかったのです。

名札に書かれた名字を読むことができたとき、初めて、「歯科恐怖症も少しは治りかけているのかな」と実感することができました。

 

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