女ひとり、和装で両国国技館。「相撲中継に映る席」から見えた世界

砂かぶり席観戦の日、和装にしてより気持ちを高めた

玉鷲関が幕内初優勝を果たした平成最後の大相撲初場所。稀勢の里関引退に始まり、ベテラン豪風関引退、2横綱の途中休場、その他関取数人が負傷・途中休場、幕下では元人気幕内力士の宇良さんが再び膝に大怪我を負うなど、あまりにもいろいろありすぎた15日間でした。

その間、私は2日、両国国技館に足を運びました。1日は4人分の座布団が敷かれた「4人マス席」、もう1日は最も土俵から近い「砂かぶり席(溜席)」での観戦です。異なる席種での観戦はそれぞれに魅力がある一方、制約もあります。今回は、ふたつの席から楽しんだ大相撲、両国国技館での観戦の魅力について綴らせてください。

声が響く! マス席で若手力士に声援

4人マス席での観戦日、知人3人と行くことにしました。「大相撲を初めて生で見る」という3人は15時台に国技館到着とのこと。11時半に会場入りしていた私は3時間半ほど、ひとり時間を堪能することになりました。

マス席から。お客さんはまだ少ない

三段目の取り組みが行われる時間帯、会場はとても空いています。まずは席まで行って荷物を置き、取り組みを10番ほど観戦しました。目視でも十分楽しめますが、力士の表情や肌の質感などを細かく見たい場合、双眼鏡が重宝する距離感です。

応援している若手力士がこの日出番だったので、しっかり声援します。人が少ない分、私の声は会場内に響き、「声、届いたかなあ」と自己満足。

マス席とは違い、砂かぶり席では特定力士への声援はできません。撮影も禁止です。好きな力士の名前を叫ぶ、取り組み中の写真を撮る、という楽しみはマス席だからできることなのですね。

2階にあるお食事処。単品も定食メニューも豊富

見事勝利した彼に拍手を送り、ホッとしたところで、食事をとることにしました。国技館での大相撲観戦は2018年5月以来2回目で、お食事処「雷電」を訪れるのは初めてです。

国技館グルメを堪能

鍋には焼き餅やうどんも入っていてボリュームたっぷり

場所中限定メニューである「ちゃんこ鍋と国技館名物 やきとり定食」をオーダーしました。国技館の地下で焼いているやきとりは絶対に食べるつもりでいました。想像した通り美味しい……。ただ、食事に集中しようとするものの、席を外している間の取り組みがどうしても気になってしまいます。

雷電内にはテレビがある

大相撲の生中継をしているAbema TVをスマホで見ようとしたところ、横にテレビがあるのを発見! NHK BSでは幕下以下の取り組みもリアルタイムで放送しています。目はテレビに釘付けです。食事をしながら顔は完全に横を向いて、取り組み表と画面を交互に見ながら、いつの間にか「テレビ観戦」状態になっていました。

視線がテレビと取り組み表、ちゃんこ鍋とを行き来する落ち着きのなさが目立ったのか、しばらくすると、ひとりの老紳士に声をかけられます。

「ほんとに相撲がお好きなんですね。この時間帯にひとりでいらっしゃって、さっきからお食事そっちのけで、テレビを真剣に見てるから(笑)」(老紳士)

「大好きです。食事も美味しいけど、どうしても幕下の取り組みが熱くて面白くて、目が離せないんです(笑)。それで……」(私)

国技館限定のお土産もチェック

そんな話で盛り上がり、紳士と名刺交換をすることに。ひとりで来ている人は、同じくひとりでいる人に声をかけやすいせいか、こんな出会いもあるのですね。

国技館スイーツも美味しい

食後は甘味を食べたくて、館内(2階)をぶらぶらします。初場所限定のいちごを使ったソフトクリームをいただきました。

ついでに1階へ降りてお土産コーナーもチェックします。十両、幕内と上位の取り組みになればなるほど、お客さんもどっと増えるため、できるだけ空いているうちに見ておきたいのです。

力士のポストカード

今回は力士写真と力士ポストカードを数枚ゲット。ちなみに、力士写真はベースボール・マガジン社の『相撲』編集部が販売しているもので、両国での本場所開催時(1月、5月、9月)のみの取り扱いです。

この赤い「写真販売所」が目印

地方場所では売られていないため、毎回欠かさず立ち寄り、推し力士のとっておきの1枚を買い求めています。

さて、15時台に全員が揃いました。知人は全員「今の大相撲」をほとんど見ていない超・相撲ビギナーのため、観戦中は私がAbemaTVや相撲雑誌、相撲関連本、相撲ブログなどから集めた情報の中から、皆が興味を持ってくれそうなものを紹介しました。

つい興奮して饒舌になりすぎたかもしれませんが、迫力のある大相撲を前に、皆とても楽しんでいたと思います。お弁当ややきとりを食べたり、お酒を飲んだりして、わいわい賑やかに観戦していました。

ひとり観戦もいいけれど、ときどきこうして誰かと喋りながら、飲食しながら観戦するのも違った面白さがありますね。これもマス席の素晴らしい魅力だと感じます。

今回購入した写真の一部。カッコいい

和装で両国を歩くと、粋な気分になる

さて、日付は変わり、この日は砂かぶり席での観戦です。今回は「向正面(むこうじょうめん)」という大相撲中継でテレビ画面にバッチリ映る席。初めて座る向正面、しかも土俵下からはどんな景色が見えるのか…。初体験だけにとてもワクワクしていました。

関取が等身大になったフォトスポット。館内にはこういう写真を撮りたくなる仕掛けがたくさんある

気合いも十分でした。地元の母に「大相撲中継で、おそらくテレビに映る」と連絡すると、大喜びしてくれたこともあり、着物を着て見に行くことに。当日は着付けをしてもらいました。本場所中、会場で着付けをしてくれる「和装day」が2日間ありますが、それとは関係なく自ら進んで和装にしたのです。

お弁当選びも楽しい

「着物で両国なんて粋な感じ……ウフフ」と、楽しい気持ちで会場入りしたのは11時半頃。砂かぶり席での飲食はできないため、先に食事を済ませようと2階へ向かいます。食事処がどこも混んでいたので、売店で人気力士がプロデュースするお弁当を買うことにしました。

もう二度と食べられない稀勢の里弁当

選んだのは「稀勢の里弁当」。残念ながら引退してしまったので、食べられるのは今場所限りという、超レア弁当です。揚げ物類はなく、とてもヘルシーな内容になっていました。

たんぱく質豊富で健康的

他にも「白鵬弁当」「鶴竜弁当」はもちろん、「栃ノ心弁当」「豪栄道弁当」などもあります。各力士の地元の名産品や好みなどを反映し、すべてまったく違う内容になっているので、場所中何度か来場する機会があれば、日替わりで食べてみたいくらいです。

砂かぶり席で飲食ができない人には、2階の「雷電」付近にあるこのコーナーが、お弁当などを食べたいときにぴったり。中継も見られる

向正面の砂かぶり席から見えた景色

幕下の取り組み途中から砂かぶり席に座ります。砂かぶり席というと、昨年の九州場所で初めて座りました。その時は、西の5列目でした。でも、今回は向正面の3列目。同じ砂かぶり席でも、見え方がびっくりするくらい違いました。

初めて座る席ゆえに、発見がたくさんありました。たとえば、行司の存在感がとても大きいこと。私の位置からは、行司の後ろ姿を見上げる形になるからです。

もちろん、力士の姿もとてもよく見えます。東方、西方に関係なく、仕切り中の力士は近距離からまじまじと見られますし、土俵下で控える西方力士の表情や仕草も観察しやすいです。

懸賞のかかった取り組みが終わると、勝ち名乗りを受けた力士が、懸賞金の入ったのし袋の束を行司から受け取ります。あののし袋があらかじめ、土俵下のコーナーに置かれた棚か箱のようなものの中に積み上げられているのも発見でした。

さらに、細かい話だとは思いますが、最後の仕切り時に関取が顔や体をタオルで拭うシーンがありますよね。あのタオルが、いつ、どのタイミングでやってくるのかも、今回ようやくわかりました。

幕内力士には「控え時に座る自分専用の座布団」が用意されています。それを運んでくるのは付き人です。花道奥から座布団を持ってきた付き人の手元を見ると、手には硬く絞ったタオルが握られていました。それを「呼び出し」に渡していたのです。

土俵上で起きていることだけでなく、審判部の親方や呼び出し、行司、付き人、控え力士などの土俵周辺での動きも知りたい私にとって、大相撲に関わるいろいろなヒト・モノ・コトを見ることができる「砂かぶり席」はやっぱり最高でした。

座布団の頭直撃も初体験

この日も、隣り合った老紳士と時折相撲話を楽しみ、名刺交換をしました。五月場所以降、紳士が後援会に入っているという、某部屋の千秋楽祝賀会にお誘いしてくれるそうです。こうやって自然と、相撲のつながりができるのは嬉しいです。

結びの一番では、座布団が舞いました。平幕力士が横綱に勝利すると、お客さんが土俵に向かって座布団を投げる、大相撲ならではの文化があります。最近では、三役力士が横綱に勝った場合でも、投げる人は目立ちますが……。

座布団は私の後頭部にも直撃しました。ボンッと音がして、意外なほど大きな衝撃を受けました。「まだ数枚ぶつかってきそう」と危険を感じ、頭を手で覆い隠しました。館内では物を投げないようにというアナウンスが流れ、取組表にも注意書がありますが、守られてはいないようです。

ふんわりと柔らかそうに見える座布団も、意外と硬いもので、土俵まで本気で投げようとすると凶器になり得ます。お客さんには、座布団を投げずに、心からの盛大な拍手を送ってほしいと願います。

早くも「五月場所」はお茶屋さん経由でチケットを取りました

観戦も終わり国技館を後にすると、心はもう三月場所。そしてその先へと向き始めました。東京、名古屋、博多と3会場での生観戦を叶えてきた者としては、大阪場所も行かないわけにはいきません。

そして、いろいろな席種を体験したい。方角や土俵との近さ、位置によって見える世界はさまざまです。「そこに座らないと見えないもの」が、どの席にもある。そう思っているからこそ、いろいろな席でこれからも大相撲を見たいのです。

三月場所は「椅子席」のチケットを確保することができました。これまで「マス席」と「砂かぶり席」でしか観戦したことがないので、新しい世界が見えるのが楽しみです。3月もひとり観戦に行って、『DANRO』にレポートを書きたいと思っています。

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【追記】弁当の記述に誤りがありましたので、修正しました。

 

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