「出がらしフリーランス」と「年収1000万フリーランス」の違いは? うつ病を克服して見つけた「仕事の肝」

「出がらしフリーランス」と「年収1000万フリーランス」の違いは? うつ病を克服して見つけた「仕事の肝」

ひとりでウェブマーケティングなどの仕事を請け負っているフリーランスのコンサルタント・山田竜也さん(39)は、ここ数年、年収1000万円以上をキープしているといいます。

「フリーランスは、適正価格で仕事をしたら、負けだ」くらいに私は思っている――。昨年出版された著書『フリーランスがずっと安定して稼ぎ続ける47の方法』(日本実業出版社)のなかで、山田さんはそう書いています。「『適正価格=普通』なので、誰に頼んでもいいから」というのが理由です。

ライター、カメラマン、デザイナー、エンジニア、マーケターなど、ウェブ業界だけでもさまざまな「フリーランス」がいます。フリーランスとして生きていくために、やるべきこととは? 年収をアップさせるための心がまえとは? 山田さんが日ごろ利用しているという東京・丸の内のコワーキングスペース「WeWork」のミーティングスペースで話を聞きました。

900万円を借り入れるも、うつ病で倒れて動けるのは1日2時間に

ーーフリーランスに向いている人、向いてない人の違いは、どこにあるのでしょうか?

山田:ひとつは「学習欲」だと思っています。会社って、学習の機会を与えてくれますよね。研修があったり、仕事ができる人の末端に加えてもらえたり。フリーランスにはそれがないので、「自分がどういう知識を身につけたらいいのか」っていうことを意識できるかどうかはすごく大切で。それが続けられるか続けられないかが、勝負の分かれ目だと思っています。

ーーフリーランスになってみたはいいものの続けられない、という人もいますね。

山田:フリーになって最初は稼げるんだけど、だんだんダメになっていく人を、自分のなかで「出がらしフリーランス」って命名しているんです。独立したときは、会社で教わったり身につけたことで仕事をもらえるんです。

ところが、技術やスキルがアップデートされないと、時代遅れになっていく。たとえばイラストレーターだったら、イラストの画風がずっと古いままになってしまうだとか。続けられる人は、学習できる仕事を選んでいたり独学していたりと、主体的にか無意識にか「学ぶ」っていうのをやっています。

ーー山田さん自身は、どのようにしてフリーランスになったのでしょうか。

山田:大学を卒業して1年、無職の期間がありまして。その後、就職して3年半プログラマをしていました。そこで知人から、「自分の会社を役員のような立場で手伝わないか」という話があって、会社を辞めたというのが、もともとのきっかけです。

ところが、それが全然うまくいかなかったり、仲間内で揉めたりっていうトラブルが何度かあって。どうしようもなくなって、27、8歳のとき、結果的に自分が頭(代表)になったというのが実態です。消極的な起業というか、独立なんですよ。

当時、バーチャル仮想空間「セカンドライフ」が流行っていたので、その進出支援やプロモーションという事業を受託していました。こちらもまったくうまくいかず、追い詰められていくのですが……。

ーー現在は、どのような仕事をしているのですか?

山田:いくつかあるんですけど、ひとつはウェブマーケティングのコンサルタント業です。ウェブマーケティングって何やるのって思われるでしょうけど、結構いろいろやるんです。たとえば検索エンジンで上位表示されるための「SEO」と呼ばれるものですとか、オウンドメディアの成長のアドバイスとか。あとはインターネット広告まわり。これは運用もやっています。広告代理店みたいな感じで何社かから請け負っています。

ーーひとりでやるようになったのは、なぜですか?

山田:起業したときに借り入れた900万円がどんどん減っていき、人を使うのもうまくいかないので、辞めてもらって。とにかくコネも縁もないところから始めた事業だったので、精神的に病んでしまったんです。うつ病になって倒れたってのが、起業して1年後くらいだと思います。いつ搬送されたのか記憶にないんですけども。

フリーランスのコンサルタント山田竜也さんに聞く

ーーそのとき「会社員に戻ろう」と考えなかったんですか?

山田:うつは「いつ治った」って定義したらいいかわからないんですけど、2、3年はうつ状態でした。それでも実家で事業を続けたんですけど、動けるのは頑張っても1日2時間くらい。2時間の労働で、毎月20数万円を返済しなくちゃならない、生活費も捻出しなければならないという状況だったんです。

それが、病気が治っていくにつれて稼げるようになっていったんです。1日2時間で20数万円稼げたということは、8時間働けたら80万稼げる。結果的にフリーランスで食べられる状態になっていた。年収1000万円になっていた。うつ病と付き合いながら、なんとか返済をしていたら、そんな状況になっていたんです。そうなると、もう会社員に戻る道理はないですよね。

ーー病を抱えながら働くのは難しくなかったのでしょうか。

山田:大きかったのが、同じ時期に世の中が変わっていったことです。フェイスブックとかツイッターとか、SNSでの人付き合いやコミュニケーションが一般的になっていった。コワーキングスペースみたいなのができたり、フリーランスで食べていく人が増えてきたりして、会社もそういう人に発注することに違和感がなくなっていた。仕事をとってくるのも「昔より楽じゃん」っていうのがありましたね。

ーー「楽」というのは?

山田:ネットワークを作りやすくなったっていうのかな。会社や組織に属さなくても、人間関係に接続しやすくなったんです。「緩やかなコミュニティ」みたいなもののつながりが、以前より濃密になったといいますか。これは時代の流れですよね。

ーー「セカンドライフ」からウェブマーケターへと、仕事の内容が変わることに問題はなかったのでしょうか。

山田:流行り物はよくないなと。苦労するわりにはうまくいかないっていう経験をしまして。ちゃんとお客さんの役に立つ、堅実な仕事をやったほうがいいなっていうのは考えました。マーケティングの仕事はもともとやりたかったので、今はそのなかでも、なるべくクライアントのパフォーマンスにつながりやすいものを意識して、仕事を選ぶようにしています。

フリーランスのコンサルタント山田竜也さんに聞く
仕事の打ち合わせ回数と、成約率などをグラフ化しているという

打ち合わせ回数から「妻に感謝を伝える」まで、すべてをリスト化

ーーフリーランスで年収1000万円を超えるかどうかという「分かれ目」は、どういう点にあると思いますか?

山田:それは難しいですね。やっぱり、自分の仕事を自分で定義できるか、自分自身のものとして「パッケージ化」できるかどうかっていうのは、重要かなと思います。言われたことをただやるだけだと、平均価格でしか仕事がとれないし、稼げない気がするんです。もちろん言われたことだけをやっていても、作業スピードがめちゃくちゃ速かったり、効率的だったりで、年収1000万を超えるっていう人もいて、一概には言えないんですけどね。

ーー著書のなかでは「見える化」ということに、こだわっていますよね。

山田:それは重要です。実際に書いてみないと、自分を客観視することができないんじゃないかと思っていまして。僕はすごい「リスト魔」で、毎月、毎日、どんなことでもリストにしたり、書いたりしています。

ーーそれは日記のようなものと考えればいいのでしょうか?

山田:毎日つけているものでいうと、日々のタスクリストです。毎朝「今日、何をやるか」を書きだすんです。メモ帳の見開きに書いて、あとで反省を書く。予定通りできなかったこと自体は問題じゃなくて、それについての所感を書きます。「予定よりこうだった」とか、「やってみたけどこうだった」とか。

そのほか、その日の「ウォント」と「マスト」を書いています。たとえば今日のウォントは「温泉行きたい」。マストは「取材をきっちりうける」です(笑) このどちらかをこなしたら、自分をほめてあげる。あとは何もできなくてもかまわないっていう風に考えながら、毎日リストを切っています。

ーー「達成できなかった」からといって、ダメというわけではないんですね。

山田:タスク化しても、すべてできることって、ないじゃないですか。全部終わることなんてないから、自分を責めることになる。それをなくすためにどうしたらいいのかっていうと、「ウォント」と「マスト」だけを考えるんです。自分が心からやりたいと思っていることを、1日1つやると、人生の幸福感が変わるんじゃないかと思って試しにやってみたら、変わりましたね。ここは、将来のために「ふだんやっていない仕事」でもいいでしょうし、単純に「疲れてるんで温泉につかりたい」でもいいんです。

フリーランスのコンサルタント山田竜也さんに聞く
山田さんの手帳。見開きで2Pが1日分。右端は振り返るためのスペース(※画像処理をしています)

ーーなるほど。

山田:あとは、今日の心と体のバロメーターを、朝・昼・晩と◯△×でつけています。これはうつ病のとき、自分を客観視するために始めたことなんですけど、見返して△とか×が多かったら、「ちょっと疲れてるな」となる。すると、絶対に仕事の能率が下がるので、そういうときは休みを入れたほうがいいなとか考えるんです。

あとは「自分の人生を取り戻すためのリスト」っていうのも作っていまして。毎月、やるべきことはできたか、やりたいと思うことはできたかっていうのを、10点満点で書いていくんです。「12時に寝る」とか「妻に感謝を伝える」とか「子供に絵本を読む」とか。内容は月ごとに入れ替えてるんですけど。こういう風にやらないと改善しないし、何ができていないか客観視できない。だから、なるべく書くようにしています。仕事の打ち合わせの回数や質も月次ごとにグラフ化したり。いろいろやっていますね。

ーータスクリストには、仕事以外のものも結構入っていますね。

山田:それは全部一緒くたです。プライベートと一緒にしています。プライベートと仕事が等価であるってことは意識すべきだと思うんです。仕事もプライベートもタスクのうちで、そのなかでどっちを優先するかを考える。じゃないと、結局すべて仕事が優先になってしまうと思うんで。

ーー感覚だけに頼らないということでしょうか。

山田:数値にしないと客観視できないと考えています。人間てすごく主観的だし、認知ってあいまいなものだと思っているので。「認知が歪む」というのをうつ病で経験しているっていうのもあるし、大学のとき哲学を専攻していたので、認知のいい加減さっていうのを意識しているのがありますね。

ーーつまり、自分の自分に対する評価を信用していない?

山田:まったくしていないですね(笑) たとえば、打ち合わせの回数をグラフ化して、企業・個人という相手のカテゴリをわけて、その回数と商談とかの成約の数を出しています。打ち合わせがけっこう多いと思ったら、実際はそうじゃないことがあったりとか。逆に、振り返ってみたらすごく多いときがあったりとか。

僕が仕事を続けられていたり収入があったりすることの「肝」は、たぶんこれだと思うんですよ。「なんでもリスト化する」。一般的にどうすれば稼げるかはわからないですけど、僕自身はこれが肝です。

 

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