「入場料1500円」の本屋「文喫」で半日くつろいでみた 「また遊びにきたい」と思ったワケ 

「入場料1500円」の本屋「文喫」で半日くつろいでみた 「また遊びにきたい」と思ったワケ 
文喫の店内

「入場料」として1500円を支払う本屋さんがあります。東京・六本木にある「文喫(ぶんきつ)」です。昨年12月11日、青山ブックセンター六本木店の跡地にオープンしました。一部を除き、本が売られているエリアに立ち入るには入場料が必要です。

本屋さんに立ち寄る回数が減ったのは、いつごろからだろうーー。そんなことを考えながら、オープンして1カ月が経った同店を訪れてみました。

「意識の高い人ばかりなんじゃないの?」というイメージは……

筆者の読書量は、仕事で読むものをのぞくと、月に1、2冊。ジャンルやカテゴリはバラバラです。紙の本も好きですが、この数年は電子書籍を購入することが多くなっています。

最近読んだ本を挙げると、小説『見えないX』(Amazon)、ノンフィクション『「無限」に魅入られた天才数学者たち』(早川書房)、ケンドー・カシンさんの『フツーのプロレスラーだった僕がKOで大学非常勤講師になるまで』(徳間書店)です。現在は、「大そうじで出てきた」と知人がくれた40数年前の本『怪物 王貞治』(学習研究社)を読んでいます。

平日の午後1時すぎ。入場料を支払ってバッジを受け取ります。これが支払い済みであることの証です。店内にはすでに、20名ほどのお客さんの姿がありました。多くは女性です。

六本木という土地柄と、入場料をとるシステムのイメージからか、意識高い系、言い換えれば「気高い」雰囲気の漂うお客さんが多いのかなと思っていましたが、意外にも、そんな印象は受けません。普通の本屋では本が「平積み」されているようなスペースに、ここでは雑然と多種多様な本が置かれています。そのためか、堅苦しさは感じませんでした。

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この卓上ライトを映画で何度観たかわからない

机が並ぶスペースは、12のうち10が埋まっていました。ノートパソコンに向き合っている人もいれば、店内の本を持ってきて、読みふけっている人もいます。

机の上には、緑のカサの卓上ライトが並んでいます。映画『セブン』をはじめ、アメリカ映画で図書館の場面になると、必ずといっていいほど登場するタイプのライトです。銀行で使われることから、「バンカーズ・ランプ」と呼ぶそうです。このライトの下で本を広げるだけで、なにか重要な調べ物をしている気になれます。

単行本と文庫本が混在するカオスな本棚

本棚のあいだを歩くうち、本屋さんから足が遠のいた理由を思い出しました。大きめの本屋さんに行くとよく遭遇した、英会話教室などを薦めてくるお姉さんの存在です。ぼーっと本棚を眺めたいときに話しかけてくるのがイヤで、自然と本屋さんに行かなくなったのです。「文喫」にはもちろん、そんなお姉さんはいません。なにしろ入場料を支払っているのです。堂々と本を選ぶことができます。

店内には約3万冊の本があるとのことですが、新刊ばかりでなく、学生時代に読んだ懐かしい本もありました。また、一般的な本屋さんと違い、週刊誌が置かれていませんでした。図書館のような雰囲気があるのはそのせいでしょう。

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雑然とした本棚。だが、それがいい

本棚は「日本文学」「歴史」「社会」など、ジャンルごとに分かれていますが、単行本と文庫本の区別はありません。個人的には、この並べ方が「正解」だと考えています。

単行本と文庫本の棚を分けていたり、文庫本を出版社別に分けたりするスタイルは、「欲しい本を探す」お客さんには向いていますが、「なにか読むものがほしくて本屋に行く」スタイルには向かないからです。しかも、前者のお客さんはネットで注文するほうが確実です。

午後3時ごろ。お客さんの数が増えてきました。コーヒーと緑茶は無料ですが、「本当にタダでいいの?」と気がひけてしまい、カフェで注文するのに少し緊張しました。カフェスペースを覗くと、ここでもノートパソコンを広げている人が数名いました。店内はとても静かなので、平日はコワーキングスペースのように使っている人が多いのかもしれません。

せっかくなので、「ふだんあまり読まなそうな本を見つけられれば」と踏み入れたのが、「文化」の棚です。ここで『文化戦争』(春秋社)を手に取り、机で読み始めました。

自分の目的を達成するためになんらかの「文化」を利用する人や集団を論じる本なのですが、筆者には難しすぎました。

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読み終えた本は、ワゴンに入れておくと、店員さんが棚に戻してくれます。今度は、そのワゴンで見つけた『世界を変えた100人の女の子の物語』(河出書房新社)を持って、机に戻ります。ふだんならまず手に取らない大きな本です。使い古された表現ですが、こうした思いがけない本との出会いは、ネットでの購入だとなかなか味わえません。

「入場料1500円」は高いか、安いか

仕事のメールを書いたりツイッターを眺めたりする合間に本を読んでいたら、いつのまにか外が暗くなっています。時刻は6時をすぎ、店内のお客さんの数が減ってきました。筆者もノートパソコンを閉じて帰り支度をします。

「1500円」と聞くと、高いように感じる人もいるでしょうが、実際に半日過ごしてみると「また遊びに来たいな」という思いが強くなっていました。コワーキングスペースのように作業をしながら本を読めるという利点が大きいです。

ちなみに今回は、入場料を「自腹」で支払っていたのですが、さらに勢いで『神田松之丞 講談入門』(河出書房新社)を買って帰りました。こちらの価格は1890円でした。

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今回、手に取った本。ふだんは読まないタイプの本を選んだ

「文喫」がオープンしたとき、ネットでは「何人もの人が読んだ本を買うのに抵抗がある」というコメントを読んで、「なるほどそんな風に感じる人もいるのだな」と気づかされました。

たしかに、破れていたり汚れていたりしたらイヤでしょう。でも、手に取ったもののなかにそんな本はありませんでした。ただ、本を開いて下に向けた状態で机に置くお客さんがいて、それはちょっとマナー違反かな……と感じました。

そんなことがありつつも、他の人の手から「こぼれた」本が自分のところにやってくると思うと、なかなか楽しいものです。

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