「しみじみといい町だ」 東京の下町・根岸をぶらり「ひとり旅」

「しみじみといい町だ」 東京の下町・根岸をぶらり「ひとり旅」
根岸にある和風のゲストハウス

ひとりで旅に出たいと思っても、準備が面倒だったり時間がとれなかったりで、意外にふらりと出かけられない。そういうときは都内にあるゲストハウスに泊まるといい。場所は根岸(東京都台東区)だ。最近、入谷近辺の根岸地区には、下町らしい和風ゲストハウスが増えている。

ゲストハウスのいいところは、他の観光客と交流できるところだ。交流スペースや併設されているバーに出向いて、うまく話がはずめば宿泊している旅行客と友達になれたりする。特に和風ゲストハウスは外国人観光客が多いので、ちょっとした非日常空間を味わうこともできる。

そんなバックパッカー気分は、都内でもじゅうぶん味わえる。この日は、根岸のゲストハウスで仲良くなった人と、ひとりでは入れない近所の居酒屋に出かけることになった。

創業160年の居酒屋に

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向かったのは「鍵屋」。安政3年(1856年)開業、創業160年という老舗中の老舗である。開店直後だと掃除したばかりのたたき(土間)が気持ちいいというアドバイスをもらい、夕方5時の開店を待って店に入る。

入ったとたん、言葉で言いつくせないほどのたたずまいが広がっていた。昭和初期のものと思われる葡萄酒の木製看板に、美人画が描かれているポスター、そして店主のご夫婦のなごやかな雰囲気にひたる。

時間とともに歩んできた店ならではの厨房を眺めながら、まずはぬる燗を1本。周りにある何もかもがしっとりとして、なんともいえない肌ざわりのいい店だ。

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年季の入った酒燗器

スマホのシャッター音などどこからも聞こえない。落ち着いたお客さんたちもまたいい。時代ものの酒燗器に見惚れながら、つまみは煮こごりと湯豆腐。燗酒をもう1本頼んだら、本数限定といううなぎの「くりからやき」を堪能する

下町だけあって、隣の席のおじさまも、気軽に話しかけてくれて、初対面でも場が盛り上がった。気持ちよく飲んだあとはゲストハウスに戻り、ぐっすり眠りにつく。

江戸時代に栄えた富士塚へ

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小野照崎神社

翌朝は小さな「富士山」を眺めにご近所へ。入谷にある小野照崎神社には富士塚がある。富士塚とは人工的な富士山だ。富士山信仰が極まった江戸時代に、東京各地に建てられた。外から眺めただけだが、十分に富士山の雄大さを感じることができた。

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富士塚

初冬の銀杏を眺めながら、ゆっくりと小野照崎神社の境内を歩く。芸事にご利益のある神社で、国民的な映画俳優も参拝したという。私は「文章がうまくなりますように!」とこっそり祈ってみた。

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西宮邸

神社を出て道を歩いていると、趣のある建物にでくわした。立て看板によると、これは西宮邸(旧陸奥宗光邸)だという。さまざまな路地を曲がるのも楽しいが、こういった建物が散見されるのが根岸のいいところ。根岸は、明治時代には、正岡子規も移り住んだ土地だ。上野山を背にした田園と清流の流れる静寂の地ともいわれ、別荘地として栄えた「呉竹の里」であったという。角を曲がると老舗の湯豆腐屋や蕎麦屋などが現れる。ただの街歩きではない面白さがこの街にはある。

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人気銭湯で癒やされる

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せっかくなので、この地で話題の銭湯・萩の湯に立ち寄ることにした。外から眺めているとひっきりなしに客が入っていく。人気の理由は風呂の種類の多さと480円という銭湯価格。さっそく風呂に入って旅の疲れをほぐす。いろいろと楽しめるので長風呂派なら軽く1時間以上、湯を楽しめる。

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やっと家路につく。家路といってもすぐに帰れてしまうが、そこは旅である。見かけた煎餅屋でおみやげを買った。おしゃべり好きなおばちゃんとの会話もこの街で過ごした後だと、ぐっと楽しい。大通りからはスカイツリーと青空が見えて気分も爽快。それにしても、しみじみといい街である。

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