「ひとりの活動」もっと尊重される時代に…「ソロ活!」漫画家に聞く

漫画家・なつみ理奈さん

結婚せずに、ひとりで生きていくーー。ソロで生きる人々を描いたウェブ漫画が、なつみ理奈さんの『ソロ活!です。主人公の32歳の女性が、会社から単身者向けのプロジェクトを任され、調査のために様々な「ソロ」の人々と出会っていきます。

ソロ活!はマンガアプリ「マンガZERO」の青年誌レーベル「ジヘン」で10月に連載がスタート。2018年12月末の時点で、最新回の第3話まで無料で公開されています。なぜ「ソロ」をテーマとした漫画を描いているのでしょうか? 作品のヒントになった30代半ばの男性の言葉やなつみさん自身の結婚観について、話を聞きました。

主人公の結婚観が変化していく

『ソロ活!』第1話より

『ソロ活!』の主人公・田中紫陽花(たなか・あじさい)は、キャリアウーマンの32歳です。結婚することに抵抗はないものの、周囲からそれを促されることにどこか息苦しさを感じている面もあります。

ある日突然、彼女は会社で「ソロ活」プロジェクトの責任者に抜擢されます。「2040年、人口の4割が独身になる」との説明を受け、単身世帯の増加に関する調査と分析を命じられました。

『ソロ活!』第1話より

彼女はプロジェクト推進のために、「ソロ活」についての調査を開始します。取材のために「ソロ」の男性だけの「シェアハウス」に住むことになります。さまざまなタイプの「ソロ」の人々と出会うなかで、彼女の価値観が変化していくさまが描かれていくと、なつみ理奈さんは言います。

「ソロ活」をテーマにした理由

漫画家・なつみ理奈さん

ーーなぜ、結婚せずに生きる「ソロ活」をテーマに漫画を描いたのでしょう?

なつみ:実際にそういう生き方をする人と出会ったのがきっかけです。仕事で知り合った30代半ばの男性編集者の方でした。一緒に飲んでいるときに「結婚しないで、ひとりで生きる覚悟をしている」とポツリと言ったんです。彼が歩んできた人生の結論のように聞こえて、とても気になりました。

ーーその方はなぜそんな考えだったのでしょう?

なつみ:「自分が好きじゃないと付き合わない」という、強いこだわりがある方でした。婚活をしたらモテそうな人なんですが、当時33歳で一度も付き合ったことがないと言っていました。

ただ、ひとりでも、趣味の世界に没頭していて、今の生活に満足していると言っていました。ひとりで遊ぶのが上手な方で、読書したり、遠くまで旅行に行ったりしている。「休みの日もひとりだけれど暇は全然ない」と話していました。「そういう生き方もあるんだ」とすごく興味が湧きました。

ーーひとりで充実した生活を送っている人だったんですね。そこから漫画のアイデアが出てきたと。

なつみ:去年の12月にジヘンの編集さんと打ち合わせがあって、そんな「ソロで生きる人」が気になったことを話しました。編集さんも「面白いんじゃないの?」と。一緒に「おひとりさま」や「ソロ活」について、調べはじめました。

その中で「ソロ男」について研究している荒川和久さんの本を読んだりしましたね。今後単身者が増えていくという統計データがあることも分かりました。編集さんとも「単身者の人口が増えるということは、社会的ニーズがありそうだよね」と話しました。

漫画家・なつみ理奈さん

ーーソロで生きることについてはどう思いますか?

なつみ:ソロでいることも、結婚することも、いくつかある選択肢の中のひとつかなと思います。単身者の増加とともに「ひとりの活動」は、社会的にこれからもっとサポートされて、尊重される世の中になると思いますね。

私は子どものころからなんとなく「結婚はいつかするものなんだろうな」と思っていました。「それが当たり前」というイメージがありました。主人公の紫陽花ちゃんに近いかもしれません。

ーーひとりでいることは好きですか?

なつみ:人といるのは好きですが、ひとりで自分の好きなことを思い切りするタイプですね。高校から大学までオーストラリアに留学に行ったり、道で出会ったパキスタン人の会社に就職してみたり、突然会社をやめて漫画家を目指したり...。思い立つと、すぐに行動してしまうんです。

『ソロ活!』第1話より

いろいろなタイプの「ソロ」がいる

ーー主人公の田中紫陽花は、30歳を少し過ぎた年齢です。なぜこのようなキャラクター設定にしたんですか?

なつみ:30代前半の働く女性は、複数の選択肢を前にして、悩みに直面する時期だと思います。キャリアを優先するのか、結婚をするのか。もしくは、その両方なのか。いろいろな価値観の間を揺れ動いているのではないでしょうか。

紫陽花は最初は結婚について固定観念があります。「何としても結婚したい!」という強い思いはないのですが、漠然と「結婚したほうがいいだろうな」と考えている。そういう人は多いのではないかと感じます。

ーー彼女はこれから、どんなソロの人と出会うのでしょう?

なつみ:紫陽花は、実際に取材したいという思いから、ソロの男性4人の「シェアハウス」に住むようになります。そこには、いろいろなタイプの人がいる。夢があって結婚を考えていない人、数回離婚をしていて結婚は向いていないと気づいた人、趣味があってひとりの時間が大切だと考える人などが登場します。

ーーそんな多様な価値観を受け入れる社会になってきているのかもしれないですね。

なつみ:知り合いの20代前半の方と話しているときに「試しに結婚してみて、うまくいかなければ離婚すればいいと思う」と言っていて、とても印象に残りました。今の20代の人は、結婚は必ず通るイベントではなく、人生のひとつの選択肢だとフラットに考えているのかもしれません。

かつては結婚したら、女性が家事を担当し、男性が仕事を担当する家庭が多かったと思います。しかし、今はそんな風に依存しあう関係ではなく、それぞれが自立しながら家族になることもできます。「結婚をすること」の意味自体が問われている時代になっていると感じます。

ーー「ソロ活!」はどんな人に読んでほしいでしょうか?

なつみ:結婚をするかしないか迷っている人だけではなく、すべての人に読んでほしいです。「ソロで生きるべきだ」という価値観を主張しているわけではありません。これから確実に増える単身者への理解を促し、新しい生き方の選択肢を見せられる作品になればいいなと思っています。

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