同性愛専門誌「薔薇族」初代編集長「寺山修司くんが記念号に書いてくれた詩は宝物」

同性愛専門誌「薔薇族」初代編集長「寺山修司くんが記念号に書いてくれた詩は宝物」
『薔薇族』の初代編集長・伊藤文学さん

男性同性愛者のための雑誌『薔薇族』の初代編集長・伊藤文学さん(86歳)が12月16日、東京・赤坂で講演し、かつて作家の寺山修司さんから贈られたという詩を朗読しました。

伊藤さんは、『薔薇族』の記念号のために書かれたこの詩に、寺山さんのサイン(署名)が入っていなかったことから、「(署名を)書いちゃったら、自分はゲイだということを証明してしまうと彼は思ったんじゃないか」との考えを示しました。

『薔薇族』は、日本初の男性同性愛者向け専門誌で、1971年に創刊されました。伊藤さんはその初代編集長です。この日の講演は「『ひとりぼっち』の人たちをつないで」と題したもので、約60人の男女が参加しました。2、30代の若者もいれば、古くから『薔薇族』を知る50代以上とみられる男性の姿もありました。

講演は、娼婦として働く女性の解放運動に従事した祖父の話から始まり、『薔薇族』創刊当時を振り返ったあたりで、時間切れとなりました。

質疑応答の後、伊藤さんは、「寺山(修司)くんが『薔薇族』の50号か100号の記念号を出したときに贈ってくれた」という詩「世界はおとうとのために」を朗読しました。

書かなくとも/それはたしかに存在している

たとえば/少年航空兵の片目をかくした/眼帯のうらがわに

たとえば/刑務所で知りあったSの腕の/薔薇色の傷口に

(「世界のおとうとのために」より一部を引用)

サインを書いたら「自分がゲイである」と証明してしまうと思った?

伊藤さんは以前から、作家・寺山修司さんは同性愛者であったと考えています。講演でも「寺山修司くんと僕が、京都大学の学園祭に呼ばれたことがあるんだけど、壇上にあがって一番最初に(寺山さんは)『僕は女好きだ』と言った。それを聞いたとき、『あ、この人はゲイだな』と僕はすぐに思った」と、振り返りました。

朗読後、伊藤さんは、詩に寺山さんの署名がなかったことに触れ、「ふつうだったら『寺山修司』って書きますよね。原稿用紙には『寺山修司製』と書かれていたけど、(詩には)書いてない。書いちゃったら『俺はゲイだ』ということを証明してしまうと彼は思ったんじゃないか」との見解を示しました。

伊藤さんはさらに「(寺山修司の元妻で女優だった九條)今日子さんと会う機会が多かったんだけど、率直に『寺山くんはゲイだったの?』って聞いたら、今日子さんが『そう』って言ったから、間違いない」と振り返り、「ゲイということを恥じる必要はまったくない。堂々と生きようということを今までずっと言い続けてきた」と、あらためて語りました。

伊藤さんは寺山さんから贈られた詩を「宝物だと思っている」とのことです。

薔薇族本文
雑誌『PLAYBOY』に寄稿した当時を振り返る伊藤さん(右)と主催者の林さん(左)

孤独を感じている人に「知らせる方法がない」

質疑応答の時間、伊藤さんに「今の時代、孤独を感じている人は、どのように生きていけばいいか」という質問をぶつけてみました。伊藤さんは、『薔薇族』の読者だった高齢の男性との連絡が去年、途絶えたことを挙げながら、次のように話しました。

「毎月『文ちゃんと語る会』というのを開いているが、老人はきません。僕のブログを見ていない。そういう人たちに(相談にのると)知らせる方法がない。テレビ番組に出たとき、視聴者からテレビ局に電話がかかってきた。僕は(自宅の電話番号を)『教えてもいいよ』って言っても、教えない。それが一番悩んでいる」

講演会を主催した林由香里さんが「文学さんは著書に『いつでもお電話ください。ご相談にのります』と書かれて、住所と電話番号を載せていますね」と問いかけると、伊藤さんは「僕は個人情報(保護法)なんてクソ喰らえだと思っている」と語り、来場者を笑わせていました。

講演終了後に伊藤さんに確認したところ、自宅の電話番号を掲載してかまわないとのことでした。伊藤さんに相談にのってほしい、話を聞いてもらいたいという方は、「03-3413-9411」まで電話をおかけください。ただし、深夜や早朝の電話は、おひかえください。また、伊藤さんは耳が聞こえづらい状態です。大きめの声でお話しください。

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