将軍家光のヘタウマ絵「これはウサギなのか?」 不完全だから面白い「へそまがり日本美術展」来春開催

3代将軍・徳川家光『兎図』(江戸時代前期)。「蛾に見える」という声もあるという。

「この絵、笑いをとりにいってるの?」。奇抜な構図や表現で、観る者を困惑させそうな「へそまがり」な絵画ばかり約140点を集めた展覧会が来年3月、東京・府中市美術館で開催されます。主催者による記者発表会が12月19日、講談社(東京都文京区)で開かれ、上手なのかヘタなのか判断のつきにくい「へそまがり」な日本画が5点、公開されました。なかには3代将軍・徳川家光が描いた微妙なウサギの絵や、目からビーム光線を放っているかのような羅漢(仏教の修行者)の絵がありました。

展覧会は「へそまがり日本美術 禅画からヘタウマまで」と題したもので、2019年3月16日から5月12日まで、府中市美術館で開催されます。ここでは、江戸時代の絵画を中心に「へそまがりな感性」によって描かれた絵画約140点が、前期・後期に分けて展示される予定です。

子孫繁栄を意味するという長沢蘆雪『郭子儀図』の一部(江戸時代中期)

府中市美術館の学芸員・金子信久さんは、記者発表会で今回の展覧会における「へそまがり」の定義を次のように説明しました。

「きれいと言えないもの、完璧ではないもの、不格好なもの、不完全なもの。そういったものになぜか心が惹かれる人間の気持ち、感性。それをあるとき『へそまがりの感性』と言ってみようと考えました」

出展作品を借りるため、所有者と交渉をしたときは、展覧会のタイトルがタイトルだけに「どやされないかと心配した」そうですが、「幸い、どこからも怒られませんでした」とのことです。

府中市美術館の学芸員・金子信久さん

独自のスタイルを貫いた将軍・家光が描いた「ミミズク」も

記者発表会では、美術館に展示される絵画のうち、「新発見」といえる5点が公開されました。金子さんによると、ここでいう「新発見」とは、「少なくとも近代以降、初めて大勢の前に『登場』するであろう作品」を指します。

報道陣に公開されたのは、次の絵画です。

(1)絵師・丸山応挙の弟子で「奇想の絵師」とも呼ばれる長沢蘆雪(ろせつ)の『郭子儀図』
(2)3代将軍・徳川家光の『兎(うさぎ)図』
(3)近年ブームになった伊藤若冲が描いた、やたら頭が長い『福禄寿図』
(4)禅僧でもあった仙厓義梵(せんがいぎぼん)の『十六羅漢図』
(5)「今朝、お寺から借りてきたばかり」という家光の『木兎(みみずく)図』

仙厓義梵の『十六羅漢図』について、金子さんは「目から『光線』が出ている羅漢の図というのを、古いところから探して見たことがない」と指摘します。この光線については「神通力みたいなものを独自に表現したのではないか」と話していました。

仙厓義梵(せんがいぎぼん)『十六羅漢図』の一部。目から神通力(?)を放つ「羅漢」

また、全身が描かれることの多い「羅漢」が、この作品では頭部しか見えないことに触れ、「ある方がアニメの『ミニオン』だって言ってましたけど、そう言われると、そうとしか見えなくなる」と、その面白さを語りました。

また家光の『ウサギ』や『ミミズク』については、「家光は将軍中の将軍。同じ時代には(有名な絵師である)狩野探幽がいて、上手に描こうとすれば、探幽に手本を描かせて習うこともできたはず」としたうえで、それでも家光が「へそまがり」なスタイルを貫いたことについて、「何か意図するものがあったのだろう」と話していました。

徳川家光が描いたとされる『木兎図』(江戸時代前期)。耳がないバージョンもあるという

実はこれらの絵には、家光の署名や落款(ハンコ)がありません。しかし、金子さんによれば、「これはほぼ間違いないだろうという伝来を持った作品が何点かあるんです。それらの画風と比べてみて、(今回展示された作品も家光の作とみて)間違いない」とのことです。

家光の「新発見」作品に見入る報道陣

こうした「へそまがり」の絵に美術的な価値はあるのでしょうか? 金子さんに尋ねると、次のような答えが返ってきました。

「あると思います。たとえば文人画というものは、(作者が)素人であることに価値がある美術です。そうしたものにいま価値があるんだから、殿様や将軍の美術というものの研究が進んで、なぜこういうものが描かれたかということがわかっていけば、もっともっと価値がでてくるでしょう。第一、現代人から見て、面白いですよね」

やたらと頭が長い伊藤若冲『福禄寿図』(江戸時代中期)

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