なぜ人は「孤独」を求めながら恐れるのか? 文藝春秋が「孤独のすゝめ」特集

月刊誌『文藝春秋』12月号

「孤独死」や「終活」など「おひとりさま」の老後をテーマにした特集を掲載する雑誌が増えているなか、月刊誌『文藝春秋』の12月号(11月10日発売)が、「孤独のすゝめ」という特集をしています。作家の五木寛之さんなど各界の著名人が「おひとりさま」の生き方や最期について語っています。

文藝春秋編集部の石井一成さんは「今『ひとりで生きること』が世の中で関心を持たれています。この特集が新しい『孤独の時代』の処方箋になれば」と語っています。

「人間は孤独に生きて、孤独に死んでいく」

月刊誌『文藝春秋』12月号の「孤独のすゝめ」特集

特集の冒頭には、五木寛之さんの「『ひとりで死ぬこと』の幸福論」という記事が掲載されています。五木さんは「結局、人間は孤独に生きて、孤独に死んでいく生き物なのです」と持論を展開します。大勢に囲まれて死んでも、ひとりで死んでも、それは幸福にはさほど関係のないことだといいます。

五木さんにとって、充実した人生の終わり方とは「豊かな記憶に包まれながら、一人で静かに死んでいくこと」。大島渚、青島幸男、小田実など、同年代の親しい文化人たちが他界していったとき、五木さんは寂しさを感じなかったそうです。

それは、彼らが「回想の中で色濃く生きているから」。過去の記憶にリアリティがあるため、亡くなった人たちが現在も存在しているような感覚だといいます。

月刊誌『文藝春秋』12月号の「孤独のすゝめ」特集

一方、今年3月出版の『極上の孤独』(幻冬舎新書)がベストセラーになった作家の下重暁子さんは「群れない時間を過ごすための十冊」を紹介しています。

「『孤独の友』といえば、なんといっても読書」という下重さん。孤独を楽しむための本には2種類あると語ります。「ますます孤独のどん底につき落としてくれるような本」と「和やかに孤独を慰めてくれる本」です。前者の例として萩原朔太郎の詩集『青猫』、後者の例として太宰治の『津軽』などを挙げています。

月刊誌『文藝春秋』12月号の「孤独のすゝめ」特集

ほかにも、『孤独のグルメ』原作者の久住昌之さんとエッセイストの酒井順子さんの対談記事「『孤独のグルメ』流『ひとりメシ』入門」や、野球評論家の野村克也さんと医師の垣添忠生さんの対談記事「妻を亡くすとみじめなもので......」なども掲載されています。

新しい「孤独の時代」の処方箋を提示したい

文藝春秋編集部の石井さんは、こうした特集を企画した背景について次のように語っています。

「今、『おひとりさま』が増えているという社会的背景があります。ライフスタイルが変わったことで、親子、夫婦、家族がともに暮らさない暮らしの形が一般的になりました」

多くの人が「おひとりさま」の生活を楽しんでいるように見える一方で、集団から疎外されることに恐怖を感じる人も多いといいます。

「たとえば、空気を読み、多数意見から外れないよう心を配り、SNSが炎上しないよう気を遣っています。なぜ人々は『孤独』を求めながら、同時に『孤独』を恐れるのか。こういう両義性があるからこそ、人は『孤独』に関心をもつのではないかと考えました。新しい『孤独の時代』の処方箋を、各界のベテランたちに聞いています。ぜひ、ひとりでも多くの方に読んでいただけたらと思っています」

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