不倫相手の子を産んで夫と育てた妻 「夫が泣くところを初めて見た」

不倫相手の子を産んで夫と育てた妻 「夫が泣くところを初めて見た」
画像はイメージ

不倫相手の子どもを妊娠してしまい、そのことが夫に知られてしまったら…。多くの場合は離婚や中絶といった結末に至るのではないだろうか。

だが、彼女は不倫相手の子どもを出産して、夫と一緒に育てていくことを選んだーー。

女装する小説家・仙田学が「女性の自由と孤独」をテーマに、さまざまな女性にインタビューするこの連載。今回は、不倫相手の子どもを宿したが、夫と共に育ててきたケイコ(48)に話を聞いてみる。

不倫相手の子を産むという選択

高校を卒業して社会人になったケイコは、21歳のときに結婚し、長男を出産した。恋愛経験もさほどないまま若くして結婚したためか、24歳のときに不倫相手と出会うと、初めての身を焦がすような恋に夢中になった。

「夫との子どもがいて、その頃2歳だったけど、私は若すぎたんだね。母親になるってどういうことなのか、わからなかった。女としての自分のほうが勝っちゃったんだよ。子どもを両親に預けてしょっちゅう不倫相手と遊びにいってたから、夫にも両親にもすぐにばれたけど。それでも夫は何か言ってきたり、出かける私を引き留めたりしたことはないんだよね」

とはいえ、一度だけこんなことがあったという。

不倫相手の家にいるときに、夫がとつぜん現れた。激しく言い争った後に夫は外に飛びだして、ガレージに停めてあった不倫相手の車に、自分の車で突っ込んでいった。夫につかみかかろうとする不倫相手を、ケイコは必死でなだめた。不倫相手の車の修理費はケイコが支払い、夫は車を買い替えた。

別れなければと思いつつ、ケイコは関係を断ち切ることができなかった。そして29歳のときに、不倫相手の子どもを妊娠する。夫が泣くところを初めて見た。中絶しようかと悩んだが、産むことを選んだという。

そこまでケイコがのめり込んだ不倫相手とは、どんな男性なのだろう?

「生まれてすぐに両親が離婚しちゃったんだって。彼はお父さんに引き取られたんだけど、お父さんがすぐに再婚して子どもが生まれた。それで彼は高校生のときに、お父さんの妹の養子になったんだって。私は彼の4つ年上で、結婚して子どももいたから、お母さんの面影を求められてたのかもね」

だが、ケイコが自分の子を宿したとわかると、彼は離れていった

「子どもが赤ちゃんの頃に1度だけ会わせたことがあるけど、それっきり。父親としての自覚なんて全くない人だったよ。今思えば、人の愛し方がわからなかったんじゃないかな。ケンカしたときに、『あんたそのままだと一生ひとりだよ』って言ったことがある。何年か前にたまたま再会したんだけど、彼はまだ独身だった」

不倫を繰り返すも、夫とは別れず

福祉関係の仕事をしているというケイコ。普段から聞き上手で、話していると「それはこういうことなんじゃないの」と、私が自分では気づけなかったことを言葉にしてくれることが多い。自分の経験も、そんなふうに突き放して言葉にする癖があるのかもしれない。過去を語る口ぶりはとても落ち着いている。

「29歳で不倫相手の子どもを産んで、その子どもを夫と一緒に育ててきたけど、それからもいろんな人と不倫はしたんだよね。でもあれは恋愛ではなかったな。割り切った関係。夫とはずっとレスだったし、流されてそうなったんだと思う。相手はみんな既婚者で、ほんとにたまに会うくらいだったけど。夫はそのことを知らなかったと思う。でも私も夫のことは知らないからさ。夫が不倫してもいいと思う。むしろしててほしい」

30代以降も不倫を繰り返してきたというケイコ。それでも夫と別れなかったのはなぜなのか。

ケイコは、世間体を過剰に気にする厳格な両親のもとで育った。長女ということもあり、子どもの頃から「立派なお婿さんを見つけるんだよ」と言われてきたという。だから親を安心させるためにできるだけ早く結婚しなければならない、という意識が強かった。つまりケイコにとって、結婚とは最初から恋愛感情とは無縁なものだったのだ。

「夫はもともと同級生で、なんていうか弱い人だった。支えてあげないとダメになるって感じ。仲がよくて家に遊びにきたり、泊まってったり。そんな人は他にいなかったから、結婚するんだろうって親は思ってたみたい。親の世代にすれば、若く結婚して子どもをたくさん産むことはいいことだっていうのが当たり前の感覚なんだろうけど、私は世間を知らないまま、結婚って何なのかもわからずに結婚したからさ」

夫に愛情を感じたことは一度もない。

ケイコはきっぱりとそう言った。

「同じ空気を吸うのも嫌だと思ったこともあるよ。30代前半くらいまでは、絶対に離婚しようと思ってた。長男を産んでからはずっとレスだし。一緒に外を歩きたくないから、家族で出かけたこともなかった」

離婚をするという選択肢はなかったのだろうか? 私がそう問いかけると、ケイコは初めて言葉を詰まらせた。

「……それは、私からは切りだせないよね。不倫相手の子どもを産むって決めたとき、夫には一生感謝しようって思ったから。夫は泣いてたけど、産むことに賛成してくれた。中絶は絶対よくない、何もかもなかったことになるからって。それ聞いて私、全部を背負って生きていこうと思った。包み隠したりしないで、自分に正直に生きていこうってね」

テーブルの上に垂れた水滴を紙ナプキンで拭き取ると、ケイコは丁寧に四角く畳んでいく。

夫の子である長男と、不倫相手の子である次男は、顔立ちも性格もまるで似ていないという。だが夫は2人を分け隔てすることなく可愛がってきた。尊敬しているし、感謝しなければならないとケイコは思っているが、まだその気持ちにはなれないでいる。

母親であることよりも、女であることを貫いて生きてきたケイコ。2人の息子たちが、それぞれ父親が違うということを知る日はいつか来るのだろうか。

ケイコがそこまで貫き通した、女性としての自由の意味を、彼らが受け止めてくれれば、と私は願う。

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