面白いと思うこと以外はやるな!「ナイトスクープ」を作った男の仕事術

面白いと思うこと以外はやるな!「ナイトスクープ」を作った男の仕事術
『探偵!ナイトスクープ』の面白さの原点を語る松本修さん(撮影・萩原美寛)

関西を中心に人気を誇る情報バラエティ番組『探偵!ナイトスクープ』(朝日放送系)を「作った男」として知られるテレビプロデューサー・松本修さん(69)。この秋、男性の「チン」や女性の「マン」を日本各地でどう呼ぶかを調査・研究した書籍『全国マン・チン分布考』(集英社インターナショナル)を出版しました。

松本さんは30年続く『探偵!ナイトスクープ』を制作しただけでなく、視聴者からの依頼をきっかけに「アホ」と「バカ」の地域分布を探った『全国アホ・バカ分布考』(新潮文庫)を執筆するなど、ユニークなコンテンツを世に送り出し続けています。その原動力はどこからくるのでしょうか。また、松本さんはどのような「こだわり」をもって仕事に向き合っているのでしょうか。話を聞きました。

インタビュー前編:「ナイトスクープ」を作った男が「マン・チン分布」にこだわった理由

「僕の言うことを聞く人間はクズ!」「イエスマンはダメ!」

ーー『全国アホ・バカ分布考』によると、松本さんは『ナイトスクープ』のディレクター陣に「面白いと思うこと以外はするなと命じた」と書かれていました。単純に「いい上司だな」と。

松本:それは、僕がそういう風に鍛えられたからです。僕がテレビ業界に入ったときは、テレビの民間放送が始まってまだ20年。つまり、朝日放送(ABC)もTBSも、生まれてから20年。会社を作った人がまだ40過ぎ。つまり、あなた(=聞き手・土井)の年齢でした。

彼ら上司はみんな、成功体験を持っていました。ゼロから好きなようにテレビの世界を作って成功していた。だから僕らにも「おい。好きなようにやって成功しろよ!」って命令したわけです。

ーーいまでいうベンチャー企業のような雰囲気があったのかもしれませんね。

松本:ABCもTBSも、トップに立っているのは成功した者ばかり。だから「好きなようにやって成功しろ」って言われた僕は、『ラブアタック!』(男たちがひとりの女性をめぐってゲームで対決する視聴者参加型の番組)を好きなように作った。そんななかで、(参加者の一人で、のちに放送作家として「ナイトスクープ」の制作に加わる)百田尚樹とかが出てきたわけです。

その後、38、39歳でプロデューサーになったとき、20代のディレクターたちに自分が言われたとおりのことを言ったわけです。「好きなようにしろ! その代わり責任は全部自分で取れ!」。自分が言われたことを、そのまま。

ーーたとえ松本さんが命じたことでも、自分が面白いと思わなければやるな、と言ったそうですね。

松本:僕の言うことなんか、誰も聞きません。最初からそういうルールだったんです。「僕の言うことを聞く人間はクズ!」「イエスマンはダメ!」と。

ナイトスクープ作った男_1

ーー結果としてそれが面白い番組づくりにつながったということですね。

松本:その代わり、責任はとってもらう、と。うまくいったら「天才ーっ!」って褒めて、失敗したやつには「カスーっ!」と怒鳴りつける。「天才!」「カス!」この2つだけです。いまのテレビ業界は違います。テレビ番組づくりのノウハウがいっぱいあって、誰もがマンネリのなかで、「じわじわ」仕事をしています。僕らは荒っぽくやってきた。その精神はいまも『探偵!ナイトスクープ』に残してあります。

秀才たちよ! テレビ作りのじゃまをするな

ーー言うことを聞かない若い人たちを見て、ムカっとなったことはないんですか?

松本:我慢していました(笑)。30代後半でプロデューサーになったので、それからは若手を生かさないといけないわけです。ディレクターに好きなことをしてもらって、僕は一歩下がったところで、彼らを見守る係。そうなると面白くないんです。そこで、自分で動くために『全国アホ・バカ分布考』を書いた。これはディレクターの仕事と一緒。自分が最前線に立つためのものでした。

ナイトスクープ作った男_2

ーーこの『全国マン・チン分布考』も松本さんが最前線に立っていることの証明ですね。

松本:そうです!

ーー一方で、「部下を管理するのが仕事だ」という上司もいますよね。

松本:無能な人間ほど威張りたがるんです。できない人間は偉そうにして、格好をつけようとするんです。タレント、俳優でもそうです。(『ナイトスクープ』で局長として司会を務める)西田敏行さんなんか、絶対に偉そうな顔はしません。とても謙虚。しかし、本当は一番偉い人なんです。

ーー私が見てきた会社では、偉そうにしている人がたくさんいました。

松本:それは、無能な人が多いということでしょう(笑)

ーーその言葉で勇気をもらった気がします。

松本:私が朝日放送に入ったころは、テレビというものが20年前までどんなメディアになるかわからなかったので、就職も簡単で給料も安かった。上司のうち大卒の人は、文学部出身が中心でした。当時は文学部出身を採用する企業がなかったからです。あとは大学を中退したり高校を抜けたりして入ってきた人ばかり。いわば、少人数の天才とカスばかり。でもこれがよかったんです。実に面白いものを作る集団ができた。これは東京でも同じことです。

20代のころ、僕は「京大の法学部を出たのに、放送局で働くなんてもったいない」とよく言われました。それが40代になると言われなくなってきた。その結果、秀才たちがどっとテレビ局を受けるようになって、テレビ局は秀才の集まり、集団となったんです。やがてバブルがはじけて大手企業や銀行、航空会社なんかが破綻して、会社の給料がさがった。相対的にテレビ局のステイタスがあがった。でも僕はずっと言い続けているんです。「秀才たちよ! テレビ作りのじゃまをするな!」「テレビは『天才』と『カス』が作るものだ」と。

ーーコンテンツづくりに関わる「カス」の側の人間として、前向きになれますね。

松本:同じ大卒でも、今のテレビ局には法学部や経済学部を出た人ばかり。そんな人たちだけでは普通のものしか作れない。爆発できないと思います。(聞き手・土井に向かって)ぜひ、爆発してください!

ナイトスクープ作った男_3
松本さんがしたためた「マン・チン分布」研究にこめる真摯な思い

インタビュー前編:「ナイトスクープ」を作った男が「マン・チン分布」にこだわった理由

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