診断まで10年かかることも、原因不明の難病「強直性脊椎炎」患者の苦しみ

首や背中、腰などに痛みやこわばりなどがあらわれる強直性脊椎炎(AS)。原因不明の難病です。病気の認知が低いことなどが理由で、診断に10年近くかかる患者も多く、その間、痛みの原因がわからないことなどから苦しい思いをしている患者が少なくありません。

こうした患者の悩みを知ってもらおうという啓発イベントが10月21日、都内で開かれました。イベントに参加した順天堂大学の井上久医師は、「社会に対する啓発だけではなく、医師に対する啓発も重要」と訴えました。

診断まで10年近くかかる人も

強直性脊椎炎は、頸部、背部、腰部、手足の関節などに痛みやこわばりがあらわれ、これらの部位がしだいに動かなくなる慢性の病気です。初期は、痛みの波が激しいという特徴があります。強い痛みがあったかと思えば、全く痛みがなくなることもあるため、「仮病を使っているのではないか」などの誤解を受ける患者もいます。

通常痛みがあると安静にしますが、強直性脊椎炎では動くことが大切です。早くから治療すれば、関節が固まるといった病態の進行を遅らせることができるため、早期発見・早期治療が大切とされています。

病気の原因はわかっていませんが、遺伝的要因や細菌感染などが指摘されています。難病情報センターによると、国内の患者数は、20数年前の調査で4500人とされているものの、実際には3万人前後と推測されています。男性に多い病気で、女性の3~4倍。ほとんどの患者が、30歳以下の若い年齢で発症します。いまのところ、根治療法は見つかっていません。

病気に詳しい医師がまだ少ないため、診断されるまでに10年近く要する患者も少なくありません。製薬大手のノバルティスファーマの調査によると、約7割の患者が診断までに複数の医療機関を受診しているということです。このため、正しい病名や痛みの原因がわからずに、不安を抱えている患者は少なくありません。

患者が抱える孤独

こうした患者の悩みを知ってもらおうと開かれた今回のイベントには、強直性脊椎炎の患者5名と専門医2名が参加。対話の内容をその場でイラストや模式図などで描き記す「グラフィックレコーディング」が用いられ、患者らの体験が共有されました。

この日参加した患者の多くは、診断される前に複数の病院を受診しています。診断まで3年かかったという男性の患者(32)は、6つの医療機関を受診。強直性脊椎炎と診断されるまでに辛い経験をしたといいます。

「12歳のとき、股関節に激しい痛みがあらわれました。いろいろな病院に行きましたが、ヘルニアと診断されたこともあるし、心身症ではないかという医師もいました。学校では、周りは健康体で部活に取り組んでいたのに、自分はできる状態ではありません。病気についてもわからない状態ですから、周りに理解してもらうことも難しい。家族からも理解してもらえないことがありました。そういったことから孤独を感じることがありました」

診断まで13年かかったという女性の患者(58)は、10カ所以上の医療機関を回ったといいます。

「18歳の頃に膝に水がたまったのが始まりでした。腰痛、膠原(こうげん)病、座骨神経痛などと診断されました。インターネットがない時代だったので、情報がありません。『痛いのに何で治らないんだろう』と不安でした。もっと早く診断されていれば、楽しい学生生活を送れていたのかもしれません」

「医師に対する啓発を」

順天堂大学医学部整形外科の井上久医師

この日のイベントには、自身も強直性脊椎炎を患う井上久医師が参加。診断に時間がかかる理由について、次のように話しました。

「血液検査や身体徴候でも、特に初期は特徴的なものがありません。血液検査を行い、この結果なら強直性脊椎炎というのがあればいいのですが、ありません。特徴的なものがないため、診断が遅れるということがあります」。

さらに、病気について詳しい医師が少ないことも、診断が遅れる原因と指摘した上で、医師への啓発の重要性を強調しました。

「(診察のときに)この病気が頭に浮かぶ医者は多くありません。欧米の30分の1程度と日本人の患者数が少ないため、仕方のないことなのですが。中には、生涯でひとりも診たことがない医者もいます。過剰診断や誤診もあるのが現状です。このため、医者への『正しい啓発』が大切です」

TAGS

この記事をシェア