リスナーの心をつかむラジオ番組「アトロク」 その魅力はどこにある?

アフター6ジャンクションのパーソナリティー・宇多丸さん (C)TBSラジオ/アフター6ジャンクション

放送開始から半年。ラジオ好きの間で注目を集めている番組が、TBSラジオのカルチャーキュレーション番組「アフター6ジャンクション」(月~金曜、午後6~9時、通称アトロク)です。リスナーたちの心を着実につかみ、コアなコミュニティができています。そんなアトロクの熱心なリスナーであるライター・コウジさん(仮名)に、この番組の魅力を語ってもらいました。

ラッパーの宇多丸さんが様々な文化をキュレーション

メインパーソナリティーは、ヒップホップグループ「ライムスター」のラッパー、宇多丸さん。今年3月まで11年間、土曜夜の2時間番組「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」に出演していましたが、TBSラジオが平日のプロ野球中継から撤退したのに伴って、新たな看板となる帯番組に抜擢されました。

ライムスターと言えば、1989年結成で、日本のヒップホップシーンを黎明期から牽引したことで知られます。宇多丸さんはヒップホップだけではなく、アイドルや映画など様々な文化に造詣が深く、その引き出しの多さが月曜から金曜の毎回3時間、様々な文化をキュレーションする番組の最大の武器になっています。

売りとなっているコーナーは、国内外の一線級の音楽家たちがスタジオ内でライブやDJをする「LIVE & DIRECT」や、様々な文化の専門家がみっちりとその分野の魅力を語る「ビヨンド・ザ・カルチャー」です。

アフター6ジャンクションのイメージビデオ

後者のヒットで最も印象深いものの一つは、時代劇研究家の春日太一さんが「時代劇の決闘シーンはラブシーンである」という趣旨の説明をした8月21日放送回。一例として取り上げられた黒澤明監督の「椿三十郎」は数々の名セリフも交えて紹介され、思わず見たくなって後日レンタル店に借りに行ってしまいました。

10月17日は、今年のピューリッツァー賞音楽部門を受賞したラッパーのケンドリック・ラマーについて、本人へのインタビューの音声も交えて紹介。ラマーがとても落ち着いた口調で、論旨明快に話す人であることを知ることができました。

ラマー自身、銃撃事件が絶えず、「全米で最も危険」とも呼ばれる米カリフォルニア州・コンプトン地区の出身です。理不尽な差別などと戦ってきたラッパーの先人たちの魂を受け継ぎながら、宗教や肌の色、人種の差異を超えて人々が繋がり合うことを求めて楽曲を作っていることなどを、分かりやすく説明してくれました。

アフター6ジャンクションの特製グッズ

個性豊かなTBSアナの語りも魅力

各曜日のパートナーを務めるTBSアナウンサーたちの魅力も、番組に花を添えています。

月曜日は、真面目なキャラクターながら、グラビア評論家の一面も持つ熊崎風斗アナ。火曜日は、読書家でアニメ好き、ゲストの専門家たちに鋭い質問を投げかける宇垣美里アナ。水曜日は、努力で身につけた英語力で番組内でトム・クルーズへのインタビューを成功させた日比麻音子アナ。

それから木曜日は、宇多丸さんに「小学5年生」と評される天真爛漫さを持つ宇内梨沙アナ。金曜日は、安定感のある番組進行能力を持つ一方、宇多丸さんを思う気持ちから時折「サイコパス」的な匂いを感じさせる山本匠晃アナです。

それぞれのアナウンサーとの間で盛り上がった話題が、翌日以降のアナウンサーとの掛け合いの中でさらに膨らむこともしばしばで、あたかも一編の長編小説のように、毎日全ての時間を聞かざるを得なくなる番組となっています。

ラジオを後から聞き直せるスマートフォンアプリ「radiko」などのありがたみを痛感する日々です。

公開放送に集まったリスナーたち

そんな宇多丸さんやパートナーたちが、リスナーたちと直接触れ合う機会となったのが、8月17日、東京・下北沢で公開放送という形で開催されたイベント「アフター6ジャンクション特別編 徹夜で夏期講習 in 下北沢」です。

8月に実施された公開放送イベントの案内板

午後5時の打ち合わせの模様から公開され、9時に番組が終わった後も、翌朝7時までニコニコ生放送で現場の模様が中継されました。その中では、番組の公開反省会をしたり、朝刊チェックをしたりする様子が流されました。

会場では、Tシャツやタオルなどこの番組で初となるグッズの販売もありました。コーナーの転換時には、ニコ生で「この番組を存続させるため、当事者意識を持ってグッズを買ってほしい」というジョークを交えたCMが放送されました。集まった多数のリスナーたちが買ったばかりのTシャツに続々と着替え、宇多丸さんやアナウンサーたちの言葉の一つ一つに笑顔を見せる姿は、そこに一つのコミュニティが育っていることを実感させました。

公開放送イベントには、多くのファンがつめかけた

新聞、テレビをはじめ、以前からある「オールドメディア」は経営的に厳しい状況が続いています。それはラジオも同じですが、愛されるコンテンツを作ることこそがメディアの本旨ではないか、ということを改めて突きつけているのが、この「アトロク」という番組なのかもしれません。

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