ライターの「仮想敵」は芸人「泥をすすってもアウトプットする貪欲さがある」

ライターの「仮想敵」は芸人「泥をすすってもアウトプットする貪欲さがある」
左からカネシゲタカシさん、菊地高弘さん、村瀬秀信さん、長谷川晶一さん

「ライターの仮想敵は芸人さん」「病気にならないこともライターの素質のひとつ」。おもにプロ野球を取材し、フリーランスの立場で記事やコラムを書いている「野球ライター」たちが、ライターとしての心構えについて、そんな風に語りました。

これは、東京・阿佐ケ谷で10月11日に開かれたトークイベント「野球ライター、書く語りき!~フリーランスと仕事とお金の話」での発言です。イベントでは、野球ライターの年収や著書の発行部数など、生々しい数字や実例が次々と飛び出しました。

オフレコの話も多かったため、トーク内容のSNSでのシェアは禁止。プロ野球チームのユニフォームを着た野球ファンら、100人近くの聴衆が野球ライターたちの「ここでしか聞けない話」に耳を傾けました。

「お笑い芸人は面白いことに貪欲」

司会を務めたのは、フリーランスの野球漫画家・カネシゲタカシさん(42)。スピーカーとして、長谷川晶一さん(48)、村瀬秀信さん(43)、菊地高弘(菊地選手)さん(36)が登壇し、マニアックな知識と観察眼、取材力が必要とされる野球ライターならではの苦労を、笑いをまじえつつ話しました。

イベントの後半は「野球ライターの未来」に話が及びました。『4522敗の記憶 ホエールズ&ベイスターズ涙の球団史』(双葉社)などの著書がある村瀬さんは現在、文春オンラインで“コミッショナー”として「野球コラム」のコーナーを統括しています。

そこでは、専業ライターのほか、声優やお笑い芸人などさまざまな書き手がコラムを書いていますが、村瀬さんは「ライターが一番面白い原稿を書くってことを証明したかった」と語りました。その背景には、メディアの数が増え、あらゆる人に文章を発表する機会が増えたことを挙げます。

野球ライター_1
文春オンラインの野球コラムコーナーを統括する村瀬秀信さん

村瀬さんは「たとえば、綺麗なお姉さんで書く人もいるし、芸人さんも書くじゃないですか。ライターの仮想敵って、芸人さんだと思っているんですよ」と心情を口にします。お笑い芸人はコントや漫才を書くことから文章の構成力があると指摘。「器用だし、一番の利点は泥をすすれるんですよ。面白いことに貪欲なんです。どんなかたちでもアウトプットをしてやろうって意欲がある」と、お笑い芸人が書く文章の強さを分析していました。

ライターの「終わり」はどのように訪れる?

質疑応答では、会場の参加者から「フリーランスは体調不良やケガがあれば収入がなくなる。その場合の備えはどうしているのか」という質問がありました。カネシゲさんが「『病気になるな』と。病気にならないのもライターの素質のひとつだと思いますよ」と答えると、雑誌『野球太郎』などで執筆する菊地さんは「わりとまじでそうですね」と応じていました。

野球ライター_2
かつては出版社勤務の編集者だったという菊地高広さん

また『最弱球団 高橋ユニオンズ青春記』(白夜書房)などの著書がある長谷川さんは、「僕がいつも考えているのは、しゃべれなくなるとか歩けなくなるとか、そういうリスクについてです」と話しながら、自身の仕事の仕方を説明しました。

「来月2冊本を出すんですけど、1冊は昔の野球チームの人たちを訪ね歩くという体力がいるもの。交通費もいるし、宿泊費もいる。2時間話を聞いても、本では1ページになるかならないかみたいなことを積み重ねているんです。それはいつまでできるかわからない」

そういう手間がかかる本の取材をしながら、もう1冊は新たな取材の必要がない、資料をもとにした本を書いていると語りました。「こういう『両輪』をこれから探さないといけない」と、ライターとして身体が動けなくなってもできる仕事を見つけることの大切さを訴えます。

野球ライター_3
ライターは「両輪」を見つける必要があると説いた長谷川晶一さん

これには村瀬さんも「本当にそうだと思います」と同意。「『ライターの終わり』ってどうなるのかって考えるんです。年老いたライターはどうやって死んでいくのか」と、子供のころに好きだったライターと会ったときのエピソードを明かしました。

「その方はそれまで、60冊以上本を出されていたんですが、10年くらい前からぱったり出なくなった。いま何しているのかなと思ったら、まだご存命で。お話をうかがったんですけど、その方がおっしゃるには『財産は現場に行っていたことだ』と。その方は60歳くらいで病気するんですよ。現場に出られなくなった。でもそこまでの蓄積で、ようするに焼き直し焼き直しで10年くらい前まで本を出し続けていたんです」

村瀬さんはこう話し、取材ができなくなったライターの生き方の例を示していました。

TAGS

この記事をシェア

合わせて読みたい