ゴミから人が見えてくる「ゴミ清掃員の日常」を発信し続ける芸人

ゴミから人が見えてくる「ゴミ清掃員の日常」を発信し続ける芸人
お笑いコンビ・マシンガンズの滝沢秀一さん(41)(撮影・齋藤大輔

「#ゴミ清掃員の日常」。こんなハッシュタグをつけて、ツイッターを更新しているお笑い芸人がいます。舌鋒鋭い漫才で知られるお笑いコンビ・マシンガンズの滝沢秀一さんです。滝沢さんは、芸人として活動しながら、収集車でゴミを回収する清掃員として働いています。

「ゴミには人生を感じる」。滝沢さんは、自著『このゴミは収集できません』(白夜書房・9月10日発売)の中で、そう語っています。趣味は小説の執筆。あるコンペで四次選考まで残ったこともあるというだけあって、滝沢さんの文章にはどこか“物語”があるように感じられます。

滝沢さんは、なぜゴミ清掃員として働くことになったのでしょうか? 清掃員の実態とはどのようなものなのでしょうか。この夏に大活躍したという自前の空調服(扇風機付きの上着)を着た滝沢さんに、話を聞きました。

「ちょっとしたご褒美」を繰り返す人たち

ーー清掃員ということは、ゴミ収集車のうしろにつかまって移動しているんですか?

マシンガンズ滝沢(以下、滝沢):昔の『ヤッターマン』みたいなことですよね? あれはもうできないんですよ。あれは僕らが子供のころはできたんですけど、いまは道路交通法違反になります。いまは、収集車の後ろを走らなきゃならないんです。

ーーだから夏には、扇風機付きの空調服が必要になるんですね。これを「空調服」と呼ぶことすら知りませんでした。

滝沢:ですよね! 僕も「服 扇風機」で検索して買いました。僕のはバッテリー式で1万円。わきと首が冷えるんで、涼しさが全然違うんです。夏はやっぱり死に直結しますんで。これで7、8時間は持つんじゃないかな。

ーーゴミ収集をするなかで、見えてくるものってありますか?

滝沢:いわゆる高級住宅街では、見たことのないものがよく出ますね。健康グッズとか、美容系のグッズとか。水のペットボトルも見たことのない種類で、「初めて見る水だな」っていう。ウォーターサーバーなんかも早かったですね。初めてでかいボトルを見たとき「これなんだろうな」って。乗馬マシンなんかもよく出ましたね。最近は、腹筋補助のマシンが出始めています。こう考えると、本にも書いたんですけど、自己投資をしているんですよ。お金持ちの方って。

ーーゴミを通して、出した人の人となりがわかってくるんですね。

滝沢:対照的に、栄養ドリンクがよく出る地域というのがあります。握手券付きのCDなんかもでます。こっちは他人を応援しているんですね。あとタバコ。ちょっとした依存のもの。ジュースとかもそうなんですけど、ちょっとした依存じゃないですか。1日150円とかね。そういう「ちょっとしたご褒美」の繰り返しをしているであろう人たちの姿も見えてきます。

滝沢秀一さん01

ーーそもそも芸人でありながら、なぜ、清掃員として働いているんですか?

滝沢:36歳のとき、子供ができたんですよ。お笑い芸人としては14、5年目くらいのときですね。お金が必要になったんでバイトを探したんですけど、35歳を越えたらなかなか見つからない。雑誌をみて「年齢不問」のやつ9社に電話したんですけど、どれも落ちて。いよいよ芸人を辞めて就職するしかないなと思ったんですけど、そうする前に、すでに芸人を辞めた友だちに連絡してみたんですよ。そいつの口利きで入れないかなと思って。そのなかにゴミ清掃をやっているのがいて。即決でしたね。それから丸6年続けています。

ーー他のバイトや仕事は、面接で不採用になったのでしょうか。

滝沢:電話で断られました。36歳なんか、カラオケ屋さんとかだと、たぶん店長のほうが年下じゃないですか。それで「お笑いやってるんで時おり休ませてくれ」なんて言ったら、俺でも落としますもん。

アルコールチェックで引っかかったら「その日は働けない」

ーー清掃員として働く日のスケジュールを教えてください。

滝沢:だいたい5時起きです。6時半に出勤して、まずアルコールチェックをします。

ーーアルコールチェックってなんですか?

滝沢:前日に飲んだお酒が残ってないか、フーッと息を吹き込む機械があるんですよ。それで反応が出たら、その日は働けないんです。

滝沢秀一さん02

ーーゴミ収集車を運転するわけでもないのに、なぜダメなのでしょうか。

滝沢:これが「みんなが(清掃員を)公務員だと思うから」らしいんですよね。民間の方としゃべることがあるから、そこで酒臭かったらダメだっていうことらしいんです。実際、何回かひっかかりかけたことがあるんで、ゴミ収集の前日は一滴も飲まなくなりましたね。

ーーそのあとは、どのように動くんですか?

滝沢:他の清掃員と一緒に収集車に乗って、8時には最初の集積所に着くようにします。そこから回収が始まって、生ゴミなら、お昼までに3台から4台です。収集車がいっぱいになったら1回清掃工場までゴミを捨てに行くんですけど、これを「1台」と呼んでいます。昼飯を食べて、午後にまた2台ですね。

ーー午後もゴミの収集があるんですか?

滝沢:ありますあります。昔は午前中だけっていうイメージでしたけど、いまは午後もやりますね。ペットボトルなんてひどいですもん。夏は量がすごいから、夕方まで回収します。暗くてゴミが見えなくなってきますよね。

ーー決まったコースをまわるまで終われないんですね。

滝沢:そういうことです。ゴミの量が多かろうが少なかろうが、まわる場所はひととおり行かなきゃいけないんで、少ないほうが早く終わるんです。早いときだと14時くらいには終わりますが、雪の日なんかだと19時半くらいまでやりますね。

ーーそれだけあると、ゴミの分別がまちがっているものも多そうです。

滝沢:悪意があるのとないのとは、見てわかります。「これ何にも考えずに適当に入れてんだな」とか。「1個くらいいいやって気持ちで入れてるんだろうな」とか、わかるようになるんです。ちゃんとした生ゴミのなかに缶が1つ入ってると、これもまたわかるんですよ。持った瞬間に。ゴミ袋のなかで動くんで。そういうのは、その場で袋を破って取り出します。で、そこに置いていくんです。持っていっちゃいけないんで。

ーー収集車に放り込めばいいというわけでもないんですね。

滝沢:長年やっていると、やっぱりゴミ界のことを考えるようになりますからね。焼却炉に不燃ゴミが溜まると、それをかき出す係の人もいるんです。ただ、そのために焼却炉を止めるってなると、作業できるようになるまで1カ月くらいかかるんですね。作業が終わったらまた火をつけるんですが、これが1回250万円から350万円かかると聞いています。これは税金でやるんです。

ーーそういうことにも詳しくなっていく。

滝沢:ゴミに関しては、気になったらすぐ調べるようになりました。あと、会社にゴミ関連の本が置いてあるんです。誰も手にとらないですけど、僕は読んでいます。ゴミの歴史とかね。東京都が漁師を大量に受け入れたんで、昔は漁師あがりの清掃員が多かったこととか。杉並区と江東区がゴミ処理でモメた「東京ゴミ戦争」のこととかね。

「40歳になってもダウンタウンさんになろうなんて、頭がおかしかった」

滝沢秀一さん03

ーー実際に清掃員として働くなかで、学んだことはありますか?

滝沢:結局、「つらくても楽でも1日は終わる」っていうことですね。ゴミ清掃員をやっていると、楽な日と楽じゃない日があるんですよ。今日が楽だったから明日も楽ってことはないし、その日によって違う。だからつらくても今日1日我慢すれば、明日は楽な日かもしれないっていうね。

ーー肉体的にハードというだけでなく、住民とのやりとりでもつらいことがありそうです。

滝沢:クレーマーがひとりいると、周りの人もクレーマーになっていくというのはありますね。「文句を言ったら、時間を過ぎてても取りに来てくれたよ」って近所の人たちに言うんで、広がっていくんです。こっちも立場が弱い感じになっていて、連絡があれば取りに行くんですけど、そこで「ちゃんと8時までに出されました?」って言い返してもいいと思うんですよね。

ーー引きずられるように、クレーマーになっていくんですね。

滝沢:そういう地域には、見張る人がいないんでしょうね。だから守られてないのはゴミのルールだけじゃないと思うんです。騒音だったり路上駐車だったり。結局、集積所の汚さって、その地域を表しているというか、地域の人が連携できていないことの象徴というか。アパートに引っ越しするときは、ゴミボックスをのぞいてみると、いろいろわかると思いますよ。

ーー滝沢さんがツイッターで清掃員の日常を発信し続けるのは、なぜですか。

滝沢:ゴミのことを考えるって、なかなかないじゃないですか。たとえば、ビデオテープとかCDが「可燃ゴミ」だってことを知らないですよね。自治体にもよるんですけど。だから僕はお笑いをやりながらですけど、そういうことを他の人も発信していったらいいと思うんです。清掃員にはいろんな人がいますからね。元自衛隊とかミュージシャンやってる人だとか、役者をやっている人だとか。意外とイケメンが多いんですよ。ゴミ清掃員をよくよく見てみたらイケメンが多いって、いいですよね。

ーーでは、お笑い芸人としての滝沢さんがこだわっていることは?

滝沢:それがゴミ清掃員をやるようになってから、こだわりがなくなったってのがけっこうでかいんです。芸人一本でやってたときは、「面白いことをやってやろう」みたいな。そうするとね、緊張するんですよ。「ひとことで決めてやろう」ってなるんです。でもゴミ清掃員をやり始めてから、芸人なんかどうでもいいやっていうか、力が抜けてけっこうしゃべれるようになったんですよね。意外とこだわりを持ってたときのほうがキツかったですよ。精神的にはね。だって、40歳近くになっても、まだダウンタウンさんみたいになろうって思ってたなんて、頭がおかしいですよ(笑)

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