「離島ひとり旅」を続ける女性が島で必ず居酒屋に入るワケ

「離島ひとり旅」を続ける女性が島で必ず居酒屋に入るワケ
新潟県の離島・粟島の風景(提供:大畠順子さん)

約6800。これは日本にある「島」の数です。そのうち約400島に人が暮らしているといいます(国境離島WEB参照)。そんな島を中心に旅を続ける女性がいます。東京都内のラジオ局で広報として働く大畠順子さんです。

大畠さんは2011年から18年までのあいだに、日本にある離島のうち約40を、たったひとりで旅してきました。「ひとりでいるのが好きだけど、島の人とは積極的に話したい」という大畠さんは、どんな経緯で島に魅せられたのでしょう。また、ひとり旅にこだわるのは、なぜでしょうか。今年7月、島好きが高じて『離島ひとり旅』(辰巳出版)という本を出版した大畠さんに話を聞きました。

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離島めぐりの旅はまず「端っこ」から

ーー島への「ひとり旅」をもう7年以上続けられているということですが、その間にひとり旅をとりまく環境に変化はありましたか?

大畠:変わりました。めっちゃ変わりました。島へのひとり旅を始めた7年前は「なんでひとりで行くの?」とか、「離島にひとりで行って何やってんの?」って不思議がられることがありました。

冬に山形県の離島「飛島」に行ったときは、帰りをフェリーにするか高速船にするか決めてなかっただけなのに、「泊まるところありますか?」とか「お帰りは大丈夫ですか?」って地元の人を心配させてしまったことがあります。

でもここ2、3年はまったく言われなくなりました。逆に「私も離島に行きたいと思ってたんだよね」という人や、私が行ったことのある島に行ってみたっていう人が出てきています。

ーー女性が離島に旅をすることで、怖い目に遭う心配はないですか?

大畠:実際に怖い思いをしたことはないです。こういう言い方をすると変ですけど、学生時代に怖い思いをしたのは、むしろ都会の、ある程度人のいる地域の夜です。島ではみんな顔が見えていて知っている人ばかりだから、そういう怖さがないのかもしれません。本にも書きましたけど、部屋のカギが閉まらない民宿で泊まったこともあるんです。でも怖い感じはまったくありませんでした。

離島ひとり旅_本01
タイトルにこだわった『離島ひとり旅』を持つ大畠順子さん

ーーそもそも離島への旅を始めたきっかけは?

大畠:最初はほんとネタ作りのつもりで、旅行って感覚じゃなかったんですよ。7年前は、SNSに「ラーメンなう」とか「ランチなう」とか書いてる人がいっぱいいて、そのなかで「お寿司を食べに新潟まで来ました」って書いたら面白いかなと思ったのがきっかけです。どうせだったら時間もあるし(同じ新潟県の)佐渡島まで行っちゃおうと思って、行ってみたという、ほんと思いつきなんです。

ーー実際に佐渡島を見てみて、どうでしたか。

大畠:佐渡島はすごくいいところでマイナスなイメージはないんですけど、私の想像する離島じゃなかったんですよ。便利だし、コンビニもあるし、そもそも1日で島を1周できない(笑)。帰ってきてそんな話をしていたら、佐渡島の北に粟島(あわしま)っていう島があるらしいと聞いて。日本地図を描くとき、佐渡島を描く人はいると思うんですけど、粟島を描く人はいないだろうってくらい小さい島なんです。

ーーそれで粟島に行くことになったんですね。

大畠:調べてみると、たとえば佐渡島は車がないと移動できないから、フェリーで簡単に車を運ぶことができるんですけど、粟島は許可車両以外は運んじゃいけないんですよ。道が4本くらいしかなくて狭くて、観光客が車で行くと島内が混乱するということがわかる。その時点で「あれっ、なんか違うな」みたいな感覚になって。結局、佐渡島に行った2か月後くらいに、粟島を訪れています。

実際に行ってみると、コンビニはなくて「みやげ屋」って書いてあるすっごくレトロな店だけがあって。せんべいとかお土産が売ってるんですけど、箱を裏返して見ると、どれも新潟市内で作ってるんですよ。そういうところも「さすがだな」みたいな面白さがありました。

ーー島に行く前はちゃんと調べるんですね。

大畠:4島以上まわるときは、A3の紙に全部書き出しますね。自分で接続を考えないといけないんですよ。たとえば、羽田空港から奄美の空港に何時に着いて、そこからバスに乗って乗り換えて。バスの停留所から最南の港まで行って、港に着いたら何時の船に乗って、どこに泊まってというのを紙に書き出すんです。そうやって自分の信頼したものを書いて、その紙通りに移動します。ただ、島にいるあいだの行程は決めません。フレームの、「この便に乗らないと絶対ダメだ」っていうのだけは紙に書いておくんです。

ーー粟島に魅せられて以降は、どんな風に旅をしていったんですか?

大畠:最初は「端っこ」だったんですよ。

ーー端っこ?

大畠:最南端、最北端、最西端の島です。そこをまわるうち、他の島の情報が入ってくるんですよ。たとえば、波照間島(沖縄県)っていう有人島で最南端の島に行ったときは、民宿が事前の説明もなく相部屋で(笑)、同じ部屋に泊まっていた女性から「もし礼文島(北海道)に行くことがあったら、絶対に泊まってほしい宿があるんだけど」って言われて、翌年はそこに行くっていう感じで。

ーー女性のひとり旅だと、もっとおしゃれな場所に行くイメージがありますが。

大畠:それも離島の数だけ楽しみ方があって、鹿児島県の与論島に行ったときなんかは、ひとり旅の女子にしか会わないんですよ。そんな人たちがかき氷を食べる優雅なレストランに行って、自分もなんかいい気持ちになっちゃう。そういうおしゃれな思いも、しようと思えばできます。

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『離島ひとり旅』より与論島のビーチ(提供:大畠順子さん)

誰かと一緒に旅をすると「仕事の延長みたいになってしまう」

ーーなぜ、ひとり旅なのでしょうか?

大畠:ひとりが大好きで。そもそも他人と行動できない。めんどくさいじゃないですか。「ご飯どうする?」って聞くのとか。あっちが面白そうってなったらあっちに行きたいというのがあって。映画を観に行くにしても、人に押し付けたくないというのがあって。相手に合わせること自体、嫌いではないのですが、接待みたいになっちゃうんですよ。「予約をしておかないと」と思ったりとか、「和食がいい? 洋食がいい?」って調べて送ったりだとか、仕事の延長みたいになっちゃうんです。

ーー離島へのひとり旅をするなかで、決めごとというか、自分ルールはありますか?

大畠:なるべくやるようにしているのは、もしも島に居酒屋があれば、夕飯を食べたあとでも居酒屋に行ってみることです。人口が300を切ってくるような島でも、だいたい一軒くらいは居酒屋があるんですよ。そこには島の人たちが集っていて、しかも旅行者が珍しいからなのか、輪に入れてもらえるんですね。そうすると、思いもよらない情報が入ってくることがあるんです。島の生活は不便だよって聞いていたのに、若い人たちと話してみると、みんなAmazonで買い物をしていることがわかるとか。

ーー旅先以外でも、ひとりで飲みにいくことは多いのでしょうか。

大畠:実はお酒が飲めなくて。いろんな人に「めっちゃ飲んでそう」って言われるんですけど、居酒屋では烏龍茶を飲んでいます。何年もお酒の席で一緒になっている職場の同僚に「なんで今日飲まないの?」っていまだに言われるんですよね。

ーーひとりが好きでお酒も飲めないのに、積極的にコミュニケーションするのがすごいですね。

大畠:これも難しいんですけど、島の人とそういう時間を持つのは大好きで、話しかけられるのも大好きなんですけど、そこで知り合った人が「明日、1日案内しようか」って言ってくれたとしたら、それは断りたくて。

たとえば、2人で旅をしていて2人で居酒屋に行ってたら、島の人は話しかけてこないと思うんですよ。でもひとりで行ってるんだから、居酒屋に入ったら絶対仲間に入りたいんです。積極的に話したいです。でも、その島の人が気をつかってくれて、「ひとりはかわいそうだから明日は1日島を案内してあげる。何時にここに集合ね」って風に言われたら、気持ちはうれしいけど断りたい。

ーーその距離感が大事なんですね。

大畠:すごく嬉しかったのが、島に住んでいる知人が『離島ひとり旅』の感想をくれて、「とても的を射てる本だ」とか「島に対する敬意がある」とか書いてあったんです。実際にそういう声を聞くとちょっと安心するというか。みんな、こんなに丁寧に感想を送ってくれるのかって感動しちゃいますね。

離島ひとり旅
『離島ひとり旅』より波照間島の宿(提供:大畠順子さん)

ーー『離島ひとり旅』のなかで、大畠さんが特にこだわったのはどこですか?

大畠:実際に訪れて知ったことを、できる限りそのままに伝えたいと思って、エピソードを多く盛り込みました。あとは、ふだんラジオ局という音のメディアにいるので、読んでみた音を気にしちゃうというのはありました。たとえば、本のタイトルは最初『ひとり離島旅』だったんです。出版社の方がつけると、漢字とひらがなが分かれていたほうが見栄えがいいってことなんでしょうけど、「ヒトリリトウ」だと「り」が続いて音として気持ち悪いから、自分のなかでは『離島ひとり旅』じゃないとダメなんですよ。口にして気持ち悪いものはタイトルにもつけたくない。そういう変なこだわりが、ラジオ局に10年くらい勤務しているあいだに身についちゃいましたね。

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