アンドロイドと共演した米国出身女優「日本って孤独な国じゃないですか?」

日本で暮らして8年の女優ブライアリー・ロングさん(撮影・齋藤大輔

アンドロイドと共演したアメリカ出身の女優をご存じですか。ブライアリー・ロングさんは、名門オックスフォード大を卒業後に来日し、「世界初演」とうたわれたアンドロイド演劇に出演しました。その舞台を演出した劇作家の平田オリザさんが率いる劇団「青年団」や、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに所属。舞台や映画に積極的に出演しています。英語・フランス語・ドイツ語・日本語の4カ国語を操り、悲劇から喜劇まで幅広く演じるブライアリーさんとは、どんな人なのでしょうか。日本での苦労や演技への思いを聞かせてもらいました。

最初は四角いロボットと共演かと……

私がアンドロイドと共演したのは、2010年秋に初演された舞台「さようなら」です。出演したきっかけは、平田オリザさんでした。大学の卒業論文を書くときに知り合って、「ロボット演劇に興味ありませんか?」と誘われました。最初のイメージは、昔のSFに出てくるような機械っぽいロボットでした。ネットで検索してみたら、人間の男性の姿をしたアンドロイドを見つけたんです。それはロボット研究者の石黒浩先生のアンドロイドだったんですが、少しだけ怖くなりました。けれど実際に共演したのは、かわいらしい女性の姿で安心しました。

私が演じたのは、死を目前にした女性。そのそばで寄り添うアンドロイドが詩を口ずさむという短い舞台です。観客席からは人間に見えるらしいのですが、私にはロボットにしか見えなかった。ロボットの声を演じている役者さんと打ち合わせをして関係を作っていたので、人間の声の大事さを実感しました。

日本で暮らして8年の女優ブライアリー・ロングさん(撮影・齋藤大輔)

感情は、行動パターンの積み重ねか

日本にきた直後はいろいろと苦労しました。そんなとき、共演したアンドロイドを開発したロボット研究者の石黒浩先生から「日本のやり方に合わせなさい」とアドバイスをもらいました。ロボットに感情はないが、日本風の決まったあいさつの仕方やしぐさを操作してみせれば、人間っぽい感情があるように見える、と。

たとえば、相手の人間が「悲しい」と言ったとき、その人が実際にどう感じているか分かりませんよね。けれど、悲しいと思える顔の動きを知っていれば、そう見えます。感情をそのまま表現しているのか、パターンを覚えてある感情に見えるように表現しているのかと話しました。それがすごく面白かったです。

日本で暮らして8年の女優ブライアリー・ロングさん(撮影・齋藤大輔)

「真逆な方向に」と新喜劇へ

日本に来て最初に所属した劇団「青年団」は、知的で芸術性の高い作品が多いので、一度真逆の方面に走ってみたい、コメディーやもっと大衆性のあるわかりやすいエンターテインメントに挑戦してみたいと思い、新喜劇をやっているよしもとクリエイティブ・エージェンシーに入りました。

初めて新喜劇を見たのは日本に留学した大学1年のとき。まだ日本語がよく分からなくて、漫才は難しかったですが、芝居の動きやストーリーは分かりました。描かれている人間関係は、海外にも共通するものだと感じました。関西弁はとても魅力的。人の心をとても素直に伝えているところがいいなと思います。

川畑泰史さんが座長の新喜劇に出ました。社長役や旅行者役で、ちょっと冷たく、物事をバサッと言ったり、少し空気が読めない人だったり(笑)。新喜劇のお客さんは親切ですから、毎回笑ってくれました。

日本で暮らして8年の女優ブライアリー・ロングさん(撮影・齋藤大輔)

もともと、日本語を勉強したきっかけは、スイスのダンスの専門学校で、日本人の友人に出会ったことです。友人は一生懸命フランス語を勉強していたので、私は日本語を勉強してみようと思いました。

オックスフォード大に入学し、卒論は日本の現代演劇をテーマにしました。野田秀樹さんと平田オリザさんにフォーカスして、2人の演出法や作風を比較しました。そのとき平田オリザさんを紹介してもらった縁で、オリザさんから「うちの劇団に入らないか」と声をかけてもらって、「青年団」に入りました。

日本は「ひとり」を大事にする文化

日本に来てもう8年になりますが、日本って、実は「孤独な国」じゃないかと思います。仕事の仲間と仲良くしていても、日本人は一定の距離感を必ず保つ。

日本人の人間関係はけっこう「ひとり」を大事にしている文化だなと思います。団体行動を大事にしなければいけないからこそ、肩の力を抜けるとき、ひとりになりたがるんじゃないでしょうか。

そういう意味で「孤独の国」。関西は少し違うかもしれないけど(笑)。私はある意味、孤独が好きで、日本に来たかもしれない。

少ない役を待つより自分で作る

日本では、外国人が演じられる役が限られています。少ない役を待つより、自分で作って、新しい形を提起したほうがいいんじゃないかと考え、いまは長編脚本に挑戦しています。

30代の働く女性が主役で、異文化同士の恋愛や摩擦がテーマです。お互いに、どこまで理解し合えるか、その困難さを描きたいです。

人は、自分と違う人とどこまで理解し合えるでしょうか。文化が違うという距離があるからこそ、友情が成立するかもしれません。日本人とは違う感覚で、コミュニケーションの難しさや面白さを伝えたいです。

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