裏山探検で遊びたおす少年おじさん「ランボーに憧れて」

少年たちが宝探しをする冒険活劇『グーニーズ』に憧れて、裏山を駆けめぐる。そんな“遊び”を、40歳を過ぎたいまも楽しんでいる男性がいます。「低山小道具研究家」を名乗る森勝さん(44)です。森さんの冒険とは、近所の名もなき山に登って発見した事柄を書き記し、自分だけの地図を作ること。

このひと味変わった登山を、森さんは「裏山探検」と呼んでいます。仲間に誘われれば、北アルプスなど標高の高い山にも登る森さんですが、ふだんはもっぱら裏山登山だといいます。神奈川県にある相模湖の近くで一人暮らしをする森さんを訪ね、裏山探検に同行してみました。

裏山探検に必要なのは「ひと晩は生き残れる装備」

「山には、“道しるべの木”があるんですよ」

森さんが山のてっぺんを指し示します。その先には、他の木と比べて頭ひとつ飛び出た高い木があります。「山の持ち主が変わる“敷地境界”には、モミの木とか朴(ほお)の木を植えることがあるんです」

森さんによると、山では土地の境界線(敷地境界)が「道」になっていることが多いそうです。それは「この木はウチのもの」と揉めないための、緩衝地帯の役目を果たしているのだとか。森さんは、その目印となる“道しるべの木”をたよりに、山道を見つけます。

他の木に比べて頭ひとつ飛び出た木が「道しるべ」だという

裏山探検に必要なものは「ひと晩は生き残れる装備」だと、森さんは言います。具体的には、ポンチョやレインウェア、防寒着、エマージェンシーシート、座布団、水筒、羊羹などのお菓子、ホイッスル、ライター、そして地図とコンパスです。

エマージェンシーシートとは、防寒・防水のための主に銀色の薄いシートで、安いものだと数百円で買えます。地図とコンパスについては、「使い方がわからなくても持っておくべき」と森さんは言います。「道に迷ったとき、出会った人に地図とコンパスを渡して『ここはどこでしたっけ?』と聞けば、たいてい教えてくれるはずですから」。地図は、国土地理院のサイトから無料でダウンロードできるとのことです。

森さんの地図。「廃墟」「こっちも行ってみる」などの書き込みがある(提供:森勝さん)

自分だけの地図作りは“ドヤ顔”のために

ほどなく、道路脇から山に入るポイントに到着しました。入口に「遊歩道」と書かれた立て札がありますが、特に手入れされているとも思えない、けもの道のような道です。森さんはふだん、こうした山道をひとりで歩き、小さな祠(ほこら)、お気に入りのビュースポット、家屋の痕跡、洞窟などを地図に書き記しています。

「誰に見せるわけでもないんですけど、いいスポットを見つけたら、仲間に会ったとき『行く?』って声をかける。それで、連れていったときにドヤ顔をする」

そんな目的のために「自分だけの地図」を使うそうです。

「子供のころ『グーニーズ』とか『ランボー』(元軍人の主人公がジャングルなどで戦うアクション映画)を観て、自宅近くの山をひとりで冒険したものです。それを大人になってもやっているだけなんですよ」

ちなみに森さんは、洞窟探しを「グーニーズ」、森林を行くことを「ランボー」と呼び、(ないとわかっていながら)死体探しの冒険にでることを「スタンド・バイ・ミー」と呼んでいます。

森さんが裏山探検に持っていく道具。夏でも防寒着は忘れない

どこまでも自由に生きているようにみえる森さん。その本職は、サバイバルグッズや登山用品のメーカーから依頼を受け、商品のレビューをしたり、実際に使用している様子を写真に撮ったりするというものです。

もとは工業デザイナーとしてアクセサリーなどをデザインしていましたが、ナイフを始めとするサバイバルグッズが好きで、それらをブログで紹介するうち、メーカーから声がかかったのだといいます。

「みんな、なんで裏山探検やらないのか不思議」

実際に森さんは、5分ほど山道を登った先にある見晴らしのいい場所に出ると、「こうして毎日山を歩いて、撮影スポットを見つけるのも仕事なんです」と、取材の合間に自身のブログ用の写真を撮影していました。

今回の裏山探検は、ここが目的地。森さんの自宅まで帰る時間を含めても往復30分ほどでしょう。森さんは双眼鏡を取り出すと向かいの山を眺め、「あそこに何か人工物がありますね。ああいうのを見つけると、行きたくなるんです」と、次の計画を立てていました。

とても短い「探検」でしたが、森さんは「樹脂が多くて焚き火に役立つ木」を教えてくれたり、「神社仏閣の裏には山道があることが多い」という豆知識を話してくれたこともあって、予想していたよりもずっと充実したものになりました。ヨーロッパでは、こうした探検を「マイクロアドベンチャー」と呼ぶ動きもあるのだとか。

森さんは言います。「登山っていうと、みんなどうしても山頂を目指すものだと思ってしまうんです。でも、裏山を歩くだけでもいろんな発見がある。みんな、なんでやらないのかなって不思議です。温泉が好きなら温泉の近くの山を、地方の美味しいものが好きならその店の近くの山を、ちょっと登ってみてください」。

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