元リクルートの「データサイエンティスト」がアマゾン川でピラニアを食べる理由

元リクルートの「データサイエンティスト」がアマゾン川でピラニアを食べる理由
アマゾン川にまで釣りに出かける吉永恵一さん(吉永さん提供)

リクルートのデータサイエンティストとして、35歳で部長職(リクルート住まいカンパニー)に就いたにも関わらず、退職して別の会社で有期契約の道を選んだ吉永恵一さん(38)。趣味は釣りと料理。南米のアマゾン川まで遠征し、現地調達したカメやピラニアを調理して食したこともあるとか。「自我の強さは才能」と言い切る吉永さんに、その理由や釣りへの思いを聞いてみました。

釣りは「空っぽになれる」

<吉永さんは日本国内での海釣りのほか、マグロなどの大物釣りのために遠方まで出かけていきます。印象深いのは、アマゾン川まで遠征し、川べりのカメを捕らえたり、ピラニアを釣って食べたりといったエピソードです>

――アマゾン川まで釣りに行ったんですよね? アマゾンを泳いでいる魚は食べられるのでしょうか。

吉永:食べられますよ。例えば、ピラニアは小骨が多いですが、淡白な白身で美味しいです。なまずの仲間はフリットにしてレモンをかけて食べると、最高のビールのつまみになります。基本的に寄生虫の心配があるので生では食べませんが、唯一、淡水のイシモチは寄生虫がいないので、刺身やカルパッチョで食べました。ワニも釣って食べようとしましたが、力負けしてボートまで上がらず断念。川辺にいたカメは蒸し焼きにして食べました。

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カメを焼いて食べることもあった(吉永さん提供)

――カメ(涙)。なぜ、そこまでスリルを求めるのですか?

吉永:スリルを求めているというよりも、人があまり行かないところで、人がやらないことをやる。そうすると、価値観が豊かになると思うんですよね。ただ、先進国の大都市はだいたいどこも似たようなものですから、結果的に辺境の地みたいなところに足が向くんだと思います。

過酷な環境の生活を部分的にでも体感すると、いかに自分が小さい存在かを否が応にも突きつけられるし、どんな環境でも最後まで生き延びることができる強さとか素晴らしさを体感できる気がする。また、必要なエネルギーとか食べ物を自分で得るのは純粋に楽しい。

――釣りはどんなところがおもしろいですか。

吉永:集中すると雑念がなくなるところでしょうか。私はいつでも、ネガポジ問わずいろいろな雑念が頭の中でモヤモヤしている人間です。悪くいうと、スイッチの切り替えができないんですよ。なので、強制的に邪念・雑念をオフにできる瞬間はプライベートですごく重要です。釣りは朝が早いので、帰るとすごく疲れてぐっすり寝られるのもいいですね(笑)

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データサイエンティストとして活躍する吉永恵一さん(撮影・齋藤大輔

――カメやピラニアはともかく、通常の釣りで釣った魚を活用すべく、料理教室まで開いてしまったとか。

吉永:はじめはせっかく釣った、鮮度がいい魚をちゃんと料理できなかったので、料理できるようになりたかったんですね。それから、仕出し料理の老舗、柿傳(かきでん)の料理人だった山口正憲さんを講師に、リクルート時代の同僚にも協力してもらって料理教室を始めました。釣った魚を料理して、釣り仲間や友人と食べたりもしています。たまに外国の方もいらっしゃいますよ。

まだ実現できていないけれど、海外の方を対象に朝、築地に集合して、解説を受けながら市場の場内をまわって、買ってきた素材を料理教室で料理して食べるツアーもやってみたいですね。山口さんにはいま、英会話を猛特訓してもらっています(笑)

――いろいろな人の交流の場でもあるのですね。

吉永:みんな目的は違うんです。山口さんは料理教室、元同僚は飲食店運営に興味があるので、コンセプト設計や内装などをお願いしました。私はいろんなビジネスの人たちをつなぐ場だと思っています。ここでいろんな人と私もつながれるし、人と人をつなげたりできますから。

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料理教室の運営で協力しあう山口正憲さん(左)と元同僚の中林由恵さん(右)

――ところで、趣味の釣りや料理と、仕事のデータサイエンスには、何か共通項はありますか?

吉永:事前に頭の中で戦略を描き、それを実証するというサイクルは似ていると思いますよ。釣りでは、釣る魚種を想定して、その日の温度や波風、潮の速さや方向性、濁り具合などの環境を見ながら、仕掛けや餌、誘い方、待つ棚にどのような工夫をするのかなどを、事前に考えておくんです。そして、実際にどのパターンで釣れたかをみていきます。

料理も似ていますね。私はまだまだ素人ですが、その日の最も鮮度のよい食材は日々違うので、組み合せパターンの中から素材の味を最も良く引き出す料理を決めていって、美味しく仕上がったかどうかを検証する、という感じでしょうか。

こうすれば検証できるよ、釣れるよ、美味しいよ、という型があるものに頼るのではなく、自分でパターンを見つけ出したときはとても嬉しいですね。これは仕事でも共通していると思います。

「自我の強さは才能だ」

――今後はどんな生き方をしたいと思っていますか?

吉永:世間の常識にとらわれず、仕事でも趣味でもやりたいと思ったことは、とりあえずやってみて、面白いと思ったものは、さらに深いところまでやってみる、ということでしょうか。その結果、釣りを始めてから1カ月後には、アマゾン川にいました(笑)。そのほか、料理教室のオープンや今の有機契約での仕事も、やったことがないことをやって、その先の自分の価値観の変化を見てみたい、という好奇心が根底にあります。あとは自我も強いし、自尊心も高いので、世間の言うことを素直に聞くタイプではないかもしれませんね。

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――自我が強いという自覚があるんですね。

吉永:幼少期から20代くらいまでは、自我の強さにずっと苦しんできました。たとえば、新入社員で初めて仕事を任せてもらった際、自分の理想とする仕事の質と、現実にできることとのギャップが大きく、「こんな仕事をしているようでは、給料もボーナスもいらない!」と言って、上司を困らせたことがありました。

「いらない」と言っても「はいそうですか」とはならないので、結局、最初にいただいたボーナスは全額、宝くじの購入にあて、当たっているかどうかも確認せず、ゴミ箱に捨ててしまいました。

――なんともったいない。

吉永:そうですね(笑)。今思えば、子どもっぽい八つ当たりのようなものでしたが。ただ、
そういう気質は変えようにもなかなか変えられないので、自我の強さに実力が追いつくようにしていくしかないですね。今のデータサイエンスの仕事も、そのおかげで、社会人になってから独学で勉強して今に至ります。

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――そのデータサイエンティストとしての仕事ですが、現在の雇用契約は来年までとのことですね。それ以降は大企業の正社員に戻りますか。

吉永:実は、リクルートに在籍していたときから現在に至るまで、副業としてデータサイエンスの会社も経営しているんですよ。世の中の働き方も今後は多様になってくると思いますが、大企業かどうかや雇用の形態には固執しないですね。それよりも、生きている以上、どうせストレスを抱えるなら、調整、忖度、愛想笑いをしながら自分自身を磨り減らすよりも、「こうありたい」という自分の理想と現実とのギャップから生まれるストレスと向き合って仕事をしていきたいですね。

経営者にしろ、芸術家にしろ、自我を最大限に発揮して仕事をしている人間は、すごいエネルギーを持っていますよね。私も自我を開放して、世の中に貢献するという方向にいきたいですね。みんながみんな、こんなややこしい気質を持っているわけではないので、現在は、自我の強さは一種の才能だととらえています。

将来、自分のやることと世の中が求めていることとのマッチングが一つでも多く生まれるといいなと思っています。世の中のニーズに合えばビジネスに、合わなかったら趣味に。3年後、増えているのは仕事か趣味か、私自身、とても楽しみにしています。

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