大企業の「残業」は何時まで? オフィスの消灯時間をひとりで撮影する会社員

大企業の「残業」は何時まで? オフィスの消灯時間をひとりで撮影する会社員
オフィスビルの明かりを長時間撮影して、公開している(TokyoWorkersさんのYouTubeチャンネルより)

会社のビルを夕方から深夜まで動画で撮影すれば、オフィスの電灯が何時までついているか判明して、ブラック企業かどうかの指標になる。そんな考えのもと、さまざまな大企業のビルの様子をひとりで撮影しているのが、東京に住むTokyoWorkersさん(仮名)です。

撮影者に直撃インタビュー

TokyoWorkersさんが用いる撮影技法は「タイムラプス」。5秒〜10秒ごとにカメラのシャッターを切った画像をつなげて動画にすることで、長い時間で起きる変化をわかりやすく見せるものです。テレビなどで、雲や星が流れるように動く映像を作るときに使われています

TokyoWorkersさんは、いろいろな企業のビルの外観をタイムラプス撮影しています。それによって、フロアの電気がいつ消えるのか、どれくらい遅くまでついているのかを簡単に見ることができます。夜遅くまで電気がついているということは、遅くまで残業している可能性があるということです。

これまでに撮影した企業の数は約60社。トヨタ自動車やSONY、ANAといった日本を代表する会社ばかりで、NHKや朝日新聞といったマスコミ企業も対象となっています。

そのタイムラプス映像をYouTubeのチャンネルにアップし、自分のサイトで紹介しているTokyoWorkersさんに取材を申し込み、直接会って話を聞きました。TokyoWorkersさんは都内で働く20代後半の会社員。なぜ、企業の明かりを記録するのか。どうやって、撮影しているのか。その真意や手法をたずねてみました。

きっかけは電通の過労自殺事件

ーー企業のビルを撮影することになったきっかけを教えてください。

TokyoWorkers(以下、TW):いま勤めている会社は、大きな会社で給料もよいのですが、ブラック企業ではないかと思ったのがきっかけのひとつです。

ーーどういう点が「ブラック」なのですか?

TW:「ブラック企業」の定義はあいまいで、他の人から見たらブラックではないかもしれませんが、朝8時30分に始業で、遅くまで残業があります。月平均で40~50時間。100時間から120時間になることもあります。仕事の内容についても、入社するときには外から見えなかったというのがあります。専門的な仕事ができると思って入ったのですが、実際は外注さんに振るだけということが多いので、自分のなかで「これが本当にやりたかったことだっけ?」と疑問が大きくなっていきました。

ーーそれがなぜ「企業を撮影する」という行動になったのでしょうか?

TW:2016年にニュースになった電通での過労自殺を見て、「実際はどうなんだろう? 残業は夜10時までにしたって言ってるけど、本当かな?」と思って。それで実際に行ってみて、タイムラプスで撮影をしたのが最初でした。ちょっとした正義感みたいなものですね。

ーー撮影してみて、どうでしたか?

TW:意外とちゃんとしてるんだなって。ちゃんと時間通りに電気が消えたんです。それで他の会社も見てみようとなって。そこから、IT企業、建設会社、不動産会社など60社ほど撮ってきました。やっぱりベンチャー企業は残業しているところが多いですね。これはしょうがないところがあるとは思うのですが。すごかったのは新日鐵住金。延々と電気がついていました。

企業を撮るTokyoWorkersさん
タイムラプス撮影を始めるまで、映像を撮ったことはなかったという

「もともと高層ビルを眺めるのが好きだったが、今は……」

ーー実際の撮影は、どのように行っているのですか?

TW:中国製の安いウェアラブルカメラを6台と、防水のビデオカメラ1台で撮影しています。仕事が早く終わったときはいったん家に帰って、自転車で企業を周ります。一度の撮影で7つのビルを撮るわけです。撮影時間は19時から23時まで。本当はもっと遅くまで撮りたいんですけど、自転車で移動するので、これくらいが限界なんです。

企業を撮るTokyoWorkersさん
TokyoWorkersさんが撮影に使用している機材(提供:TokyoWorkersさん)

ーーずっと張り付いているわけではないんですね。

TW:できるだけ目立たない場所に置いて、定期的にチェックするようにしているんですが、夕食をとっているあいだはどうしても離れなければならない。なので、これまでにカメラ3台が誰かに持ち去られてしまいました。

ーーそれはつらい。

TW:安物とは言っても1つ3000円くらいするので、痛いですね。あと、設置したカメラを落とし物と勘違いされて、交番に届けられたこともありました。受け取りに行ったとき、警官に「ビルを撮影している」と説明したのですが、なかなか理解してもらえませんでした。それからは、ちょっと後ろめたさがあります。

ーーそれでも続けるのは、なぜですか?

TW:これから就職や転職しようとする人の助けになればと思っているからです。私自身がそうであったように、会社に入るまで、忙しい部署と忙しくない部署があること、激務かどうか、年収はどう増えていくのかといったことがわからない。そのあたりはもっとオープンであるべきだと思っています。「新卒が3年で辞める」と言いますが、入る前と後でギャップがあるからでしょう。それは、企業にとっても本人にとってもよくないこと。企業は社員に投資した分が無駄になるし、本人は3年間の経験を別のところで活かせるかというと難しいですよね。

ーータイムラプス撮影を続けるなかで、変わったことはありますか?

TW:もともと街歩きが好きで、東京・丸の内の高層ビルを眺めるのが好きだったんです。そこにどんなテナントが入っているのか調べるのも好きで。ですが、いまはちょっと複雑です。夜9時とか10時に社内の電気を自動的に消す「一斉消灯」をしている会社でも、いったん消えたあと、ポツポツと電気が灯っていく。その光景は綺麗でもあるんですけど、「まだ頑張るんだ……」という気持ちになりますね。

TAGS

合わせて読みたい