セネガル戦の街の「メイド喫茶」 親日のロシア女子が「おかえりなさいませ!」

セネガル戦の街の「メイド喫茶」 親日のロシア女子が「おかえりなさいませ!」

ワールドカップでの前評判を覆し、世界を驚かす活躍を見せているサッカー日本代表。第2戦のセネガル戦が行われたのは、モスクワから東に約1400km離れたロシア第4の都市エカテリンブルクです。

事前の情報を持たずに訪れましたが、街並みの意外な美しさや居心地の良さに驚きました。市街を流れるイセチ川の河畔には遊歩道が整備されており、市民の憩いの場となっていました。

初戦が行われたサランスクが日本の対戦国コロンビアのサポーターであふれていたのに対し、エカテリンブルクは日本人でいっぱいでした。スタジアム内もセネガルサポーターの数を圧倒していました。

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エカテリンブルクの美しい街並み

さらに会場の内外で、日本のはちまきや日本代表のユニフォームを身につけたロシア人たちの姿が目立ち、外国なのに「ホームゲーム」を戦うような気持ちで過ごせました。

そうした応援も実り、日本代表は格上セネガル相手に終盤で同点に追いつき、決勝トーナメント進出に向けて重要な勝点1を手に入れました。しばらく興奮が冷めやらぬ、素晴らしい夜でした。

ロシアで唯一(?)のメイド喫茶

試合当日の昼間、宿からスタジアムへ向かう途中、気になる日本語の看板を見つけました。

「ロシアのメイド喫茶。日本のアニメ好きが集まるカフェです」

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日本語で「メイド喫茶」と書かれた看板を見つけた

看板には「ロシアではココだけ」と書かれていました。もしそれが正しければ、ロシアで唯一のメイド喫茶ということになります。

翌日、モスクワへ戻る飛行機まで時間があったので、足を運んでみました。店名は「HOLY」。

店の扉を開くと、メイド服を着たロシア人の若い女性が元気の良い日本語で出迎えてくれました。

「おかえりなさいませ、ご主人さま!」

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メイド喫茶の店員・ムギさん

アニメソングなどのBGMがかかる店内には、日本人の客が10名ほどいました。ラーメンやオムライスなどのメニューもあり、ランチを食べ終えた日本人グループの男性は「何を食べてもおいしかったですよ」と口にしていました。

壁にはワンピースやスラムダンクなど日本のアニメのポスターが飾られています。本棚にはロシア語訳された日本の漫画(進撃の巨人やデスノートなど)もたくさんあり、しばらくすると地元のロシア人がやってきて、それらの漫画を読みふけっていました。

このお店にときどき来るという女性客は「日本の漫画やアニメが大好きなの。アニメはスタジオジブリの作品が好き。ルパン三世もお気に入りよ」と話します。

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日本の漫画に夢中のロシア人たち

店員のムギさんは、普段ロシア人相手に接客しているためか、大勢の日本人を前に少し緊張した面持ち。それでも注文したドリンクを置き、「ごゆっくりお召し上がりください」と言うと、ホッとした様子でカウンターに戻りました。

日本語を学ぶ学生たちの晴れ舞台

「今日はいないのですが、私が教えている学生も、ここでアルバイトしているんですよ」

そう教えてくれたのは、エカテリンブルクのウラル連邦大学に在籍する鵜澤威夫さん。2016年9月に赴任してきた、この大学でたったひとりの日本語教師です。

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エカテリンブルクの大学で日本語を教える鵜澤威夫さん

「このメイド喫茶は昨年8月にできたお店で、日本語メニューを作ったのはうちの学生なんです。『W杯の日本人サポーターのために日本語でできることをする』という課題を出したところ、彼女は街紹介の映像とメイド喫茶のメニューの日本語訳を作りました」

ウラル連邦大学では、学部生と大学院生合わせて約70名が日本語を学んでいるそうです。しかし鵜澤さんによれば、「大学以外にも、エカテリンブルクには日本語学校が4つあり、合計300名程度は日本語学習者がいます。それ以外でも、日本を好きな人たちは多いですよ」とのこと。

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日本のはちまきを身につけたロシアの女性

スタジアムに日本を応援するロシア人が多かったのも、そうした背景からでしょう。私の前に座っていた男性は、日本の応援歌を一緒に歌っていて、同点シーンでは我を忘れて立ち上がって喜んでいました。メイド喫茶がこの街にできたのも、決して偶然ではないはずです。

ウラル連邦大学の学生たちは、ボランティアスタッフとしてスピーカーを持って日本語でスタジアム付近の誘導をしたり、あるいは当日試合前に日本人サポーター向けの観光ツアーを開催して交流したりと、日本戦の前後で大活躍でした。

「エカテリンブルクには日本人の在住者が10名程度しかいないので、生の日本人とふれあう機会はほとんどありません。今回は学生たちにとってまたとない貴重な交流の機会となりました。どこを歩いても自分が教える学生たちがいて、覚えた日本語で一生懸命案内している。教師として、本当に嬉しくなりました」

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メイド喫茶の店内にいた日本人グループ

エカテリンブルクという、ワールドカップ前は多くの日本人にとって馴染みの薄かった街に、日本を愛するロシア人たちがたくさんいて、選手や私たちサポーターを歓迎し、陰で支えてくれたこと。

セネガル戦の舞台裏にあったこのエピソードを、少しでも多くの日本人に伝えたいです。

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