「婚活疲弊」に陥る男たち 「出会いが多すぎて結婚できない」

「婚活疲弊」に陥る男たち 「出会いが多すぎて結婚できない」
婚活の実態に詳しい奥田祥子・近大教授にインタビューした(撮影・笠谷和也)

「婚活」という言葉が浸透して久しいですが、一度も結婚しないまま独身生活を送る「未婚者」の数は増え続けています。

国勢調査によれば、生涯未婚率(50歳の時点で一度も結婚したことのない人の割合)は年を追うごとに増加。2005年の調査では男性16.0%、女性7.3%でしたが、2015年には男性23.4%、女性14.1%といずれも大きく上昇しています。その数字はさらに増える見込みで、2040年の生涯未婚率は男性29.5%、女性18.7%になると推計されています(少子化社会対策白書 2018年版)。

この数字から明らかなように、未婚率は特に男性のほうが高いのです。約20年後には、男性の3人に1人が独身のまま人生を送ることになります。なぜ、結婚しない男性は増え続けているのでしょうか。元新聞記者で、男性の隠された悩みに深く迫った『男はつらいらしい』『男性漂流』といった著書がある近畿大学教授の奥田祥子さんに、男性の「非婚化」の理由を聞きました。

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奥田祥子さんの著書。男女の生きづらさを長年取材し、今年3月には「『女性活躍』に翻弄される人びと」(光文社新書)を出版した

男性は女性よりも「婚活」に消極的

――奥田さんのルポをまとめた『男はつらいらしい』(新潮新書/講談社+α文庫)と『男性漂流』(講談社+α新書)では、「結婚できない男たち」の実態が詳しく書かれています。それによると、男性は女性に比べて、婚活に消極的なようですね。

奥田:結婚情報サービスの運営会社の話では、会員の男女比は事業者によって違いがありますが、平均するとだいたい3対7か、4対6といった感じで、女性のほうが多いんですね。サービスの利用状況も、女性のほうが積極的です。例えば、自分から「見合い」を申し込んで男性と交際してみて結婚を決め、サービスを退会していく。女性は効率的なシステムだと割り切って利用している印象です。一方、男性はなかなかそこまでいけていない。むしろ「婚活疲弊」してしまっているようです。

――「婚活疲弊」ですか。強烈な言葉ですね。なぜ、男女の違いが生じるのでしょう?

奥田:基本的には「男らしさ」の規範意識がぬぐえないんですね。妻子を養えるだけの経済力がなければいけないとか、職場で出世しないといけないという意識にとらわれている。婚活をしようと合理的に考えて、結婚情報サービスに入会したものの、あまりガツガツいくのは格好が悪い、でもやっぱり行動するなら「男らしく」自分から、と堂々巡りしているような感じですね。入会して、自分に合った女性を探すときも、「選択」ではなくて「排除」になっています。

――「選択ではなく排除」とは、どういうことでしょうか?

奥田:その人の良いところを見つけて選択するのではなく、悪いところを見つけて排除するということです。相手のことを深く知る前に、自分があらかじめ設定した条件に合わないところを見つけて、「この女性は違う」と排除してしまうんですね。

――そうして「排除」した中で残った女性が、自分のことを「選択」してくれるかといえば、そう甘くはないということですね。

奥田:そうですね。女性がかつてよりも婚活に積極的になったと言っても、男性に求める条件が緩くなったわけではありません。お金はあったほうがいいですし、学歴も高いほうがいい。身長はそれほどこだわらないとしても、その代わりに家事・育児協力という条件が加わっていたりします。女性から選ばれず、結婚まで至らない人は多いということですね。さらに、結婚できない理由として、私は「出会いが多すぎる」という社会の環境もあるのではないかと考えています。

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近畿大学の教授として社会学を教えながら、ジャーナリストとしての活動も続けている

――どういうことでしょうか?

奥田:いまはたくさんの結婚情報サービスがありますし、多くの自治体が「街コン」を企画して婚活支援に乗り出しています。男女の出会いの場は多くなっている。でも、かえって出会いがありすぎるから結婚できなくなっているのではないか、と。

女性に断られて「傷つくのが怖い」

――出会いが多すぎて結婚できない、とは逆説的ですね。

奥田:国立社会保障・人口問題研究所が実施している「出生動向基本調査」によると、25歳〜34歳の未婚の男女が「独身にとどまっている理由」として一番多いのが、「適当な相手にめぐり会わない」という回答です。この傾向はずっと変わらないんですが、出会いの場がないかというとそんなことはない。むしろ、毎週のようにどこかで街コンや業者が主催する婚活パーティーなどがあって、今回いい人がいなかったら、また来週行ってみようという感じになっています。

――出会いの場はたくさんあるのに、結婚できない人が多いというのは不思議ですね。

奥田:やはり相手の良いところを探すよりも、悪いところに目がいってしまって、自分から「排除」してしまうからではないでしょうか。昔は逆に出会いの場が少なかったので、学校や職場など「半径5メートル以内」の範囲で出会った人を「運命の人」だと思ったんですよね。年配の人に話を聞くと「この人を逃すと、もう後はないと思っていた」と言いますからね。

――「次がある」と思っているから、なかなか決めきれないということでしょうか。

奥田:心理的な要因が大きくて、結婚に対して「ためらう心」が強いということです。一番深刻なのは、自分から女性にアプローチしたときに「断られて傷つくのが怖い」という心理です。

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――「傷つくのが怖い」という心理は理解できます。でも、怖がってばかりでは前に進めません。どうすればいいのでしょうか?

奥田:大事なのは、「自分を知る」ということではないでしょうか。自分は何のために結婚するのか、なぜパートナーが欲しいのか、結婚したら相手に何をしてあげられるのか、など。そういうことを一つひとつ見つめ直していけば、もう少し前向きな行動に出られるのではないか、と思います。

――「自分を知る」ためのコツは?

奥田:自分自身を素直に見つめることではないでしょうか。自分と真正面からとことん向き合い、現実から逃げないこと。「男性はこうあるべき」という規範と自身を比べ、他人の目を気にする人が多いですが、そうした他者評価に惑わされないで、自分のものさしで自己評価できるかどうか。取材を通して「結婚したいのにできない人」をたくさん見てきましたが、他人ではなく自分の価値基準に基づく幸せを見つけられた人ほど、結婚につながるケースが多かったですから。

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