日本人は集団主義か?「必ずしもそうではない」スポーツライター・玉木正之さん

日本人は集団主義か?「必ずしもそうではない」スポーツライター・玉木正之さん

日本大学アメリカンフットボール部の悪質なタックルが大きな問題となり、反則行為を指示したとされる監督とコーチが関東学生連盟から除名処分を受ける事態に発展しました。また、反則行為に及んだ選手が記者会見し、「相手のクウォーターバックをつぶせ」というコーチの指示に逆らえなかった経緯を生々しく語り、反響を呼びました。

このような状況を受け、「スポーツ競技における暴力行為」と題された記者会見が6月14日、東京・有楽町の外国特派員協会で開かれました。スピーカーは、スポーツライターの玉木正之さんとジャパンタイムズ運動部長の生沢浩さん。玉木さんは、スポーツの取材現場で暴力がふるわれるシーンを何度も見てきたとしながら、暴力行為が生まれる背景について語りました。

パチンコは個人主義、相撲の応援も個人主義

なぜ、今回の日大アメフト部の悪質タックル事件は起きたのか。その原因の一つとして「過剰な集団主義」をあげる意見があります。チームのためという意識が貫徹していて、個々の選手の意見や判断が押し殺されているというのです。

スポーツ庁の鈴木大地長官は15日に発表したメッセージの中で、スポーツにおける暴力やパワハラなどの背景に「勝利至上主義、行き過ぎた上意下達や集団主義、科学的合理性の軽視といった、日本のスポーツ界の悪しき体質・旧弊がある」と指摘しました。ここでも「集団主義」という言葉が使われています。

スポーツにおける暴力問題の背景には、個人よりも集団を優先させる、日本の集団主義的な雰囲気があるのではないかーー。そのような問題意識から、記者会見で私は、玉木さんに対して「集団主義的な雰囲気のなかで、個人はどのように対処すべきか」と質問しました。

すると、玉木さんは「日本人=集団主義」という見方に疑問を呈しながら、次のように説明しました。

「今の質問の中に『日本人の集団主義』という言葉がありましたが、私は必ずしも日本人は集団主義だとは思っていないんです。パチンコをやっている姿を見たら、みんな個人主義です。ひじとひじが触れ合っても、会話もしないわけです。スポーツの中でも、日本の相撲は(観客の)一人一人が『誰々、頑張れー!』と声を出しますね。ところが、世界相撲選手権を見に行くと、アメリカの人たちは固まって『USA!USA!』と相撲を応援しています」

このように、玉木さんは「日本社会には個人主義の側面もある」と指摘します。むしろ、集団主義か個人主義かはスポーツによって異なるという見方を示しました。

「スポーツの歴史の違いによって、集団的になるか、個人的になるかが分かれます。近代以前の歴史があるスポーツは個人主義です。アメリカのベースボールはそうです。近代以後のスポーツは、バスケットボールにしろ、アメリカンフットボールにしろ、チアリーダーが出てきます。そういう違いがあります」

つまり、スポーツの歴史が近代以前か近代以後かで、個人主義か集団主義かの違いがあると、玉木さんは指摘します。日本のスポーツも、近代以後に輸入されたものは応援団があるが、相撲のように近代以前から普及していたものは応援団がないといいます。

「個人主義と集団主義を日本と外国で考えるのではなく、スポーツによって考えればいい。指導者がスポーツを指導する場合は、そういうことも教えて、自分で何を考えて、何をするのかを考えさせる。そういう教え方をするように、変わるべきだと思っています」

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「スポーツと暴力」について語るスポーツライターの玉木正之さん

戦前は「体育」と「軍事教育」が結びついていた

日本のスポーツの現場で暴力行為が繰り返されてきた背景として、玉木さんが注目したのは、戦前の「体育」と「軍事教育」の関係です。

「(戦前は)軍人が学校の体育の授業に入ってくるようになりました。体育の授業の中に軍事教練というのが入ってきて、すべて命令で動く人間をスポーツを通じて育てる。世の中がそういう風になっていきました。その後、第二次世界大戦まで突き進んで、日本が戦争に敗れたことは、みなさんがご存知の通りです」

戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)が日本の学校教育を変えようとして、多くのスポーツを輸入したといいます。玉木さんは当時のエピソードを紹介しました。

「あるプロ野球の選手がGHQの関係者に『What is baseball?(ベースボールとは何か?)』と質問したという記録が残っています。そのときのGHQの答えは『Baseball is democracy.(ベースボールとは民主主義だ)』でした」

そのような経緯で戦後のスポーツが始まったのですが、そのスポーツの中に「日本の古い教育が含まれていた」と、玉木さんは指摘します。

「戦前に軍隊が軍事教練としてスポーツを利用した形が残っていた。それが戦後の日本の教育にまで引き継がれた、ということです」

玉木さんは、そうしたスポーツの歴史や背景などの「知識」について、指導者がしっかりと教えることが、現場での暴力行為をなくすために必要だと語りました。

「体育の先生は『サッカー』という言葉の意味を教えるかわりに、『つべこべ言わずに、グラウンド3週走ってこい』と言う。それが日本の体育の教育です。要するに日本人は、知識なく、体を動かすことだけをやっていたわけです。これを直していかない限り、体罰がなくなることにはつながらないと思います」

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